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B級1組13期目「西の王子」山崎隆之八段、A級への昇級争いでトップに立つ 永瀬拓矢王座は2敗目

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 11月12日。東京、大阪の将棋会館においてB級1組8回戦、全6局がおこなわれました。

 ▲山崎隆之八段(39歳)-△屋敷伸之九段(48歳)戦は大阪・関西将棋会館でおこなわれました。

 戦型は相掛かり。屋敷九段は飛車先から銀を繰り出して速攻を仕掛けていきます。

 対して山崎八段は飛車先を逆襲。角金交換の駒得をはたし、さらには龍まで作ってポイントをあげました。

 しかし屋敷九段もうまくバランスを保って、ほぼ互角の形勢が続きます。

 夜戦に入った直後。山崎八段は決断よく龍を捨てて強く屋敷玉に迫ります。そこから山崎八段がリードを奪い、やがて勝勢を確立しました。

 終局時刻は、順位戦にしては早めの19時56分。山崎八段は6勝1敗、屋敷九段は2勝6敗となりました。

 A級昇級争いでトップに立った山崎八段。B級1組在籍は今期で13期目となります。

「西の山崎、東の渡辺」

 若手の頃の山崎八段は、渡辺明現名人とそう並び称されていました。

 多くのファンにとっては、山崎八段のA級昇級は時間の問題と思われていたところでしょう。しかし、なんとも意外なことに、B級1組に長くとどまることになってしまいました。前期はギリギリで残留というピンチも経験しました。今期こそは悲願のA級昇級を、というのが山崎ファンの願いでしょう。

 ▲丸山忠久九段(50歳)-△永瀬拓矢王座(28歳)戦は東京・将棋会館でおこなわれました。

 戦型は角換わり。スペシャリストの丸山九段は、早繰り銀から腰掛銀にスイッチするという趣向を見せました。そして2時間29分の長考の末に桂を跳ね出し、不退転の決戦に出ます。

 永瀬王座はカウンターで丸山陣に角を打ち込んで飛角交換を果たします。

 対して丸山九段は角角銀のコンビネーションで、斜めのラインから永瀬陣への一点突破をはかります。この構想がシンプルながら受けづらい。

 63手目。丸山九段は手にした飛車を盤上中央、5五の地点に打ちつけます。永瀬玉の詰めろであるとともに、永瀬王座の攻めの主力である龍の素抜きをも狙えるという「次の一手」の問題に出てきそうな妙手。丸山九段が鮮やかに勝勢を築きました。

 棋界屈指の粘り強さを誇る永瀬王座。しかし本局では、その粘りも実を結びませんでした。

 終局時刻は23時8分。勝った丸山九段は3勝5敗となりました。

 一方、負けた永瀬王座は6勝2敗に。依然昇級圏内の2位をキープしていますが、6連勝からの2連敗はいやな流れでしょう。

 次節9回戦。山崎八段は行方尚史八段、永瀬王座は久保利明九段と対戦します。永瀬-久保戦といえば今期王座戦五番勝負のカードでした。そして今期棋王戦の敗者復活戦でも当たることが決まっています。

 そして10回戦では、山崎八段と永瀬王座の直接対決が組まれています。今期B級1組の大きな山場となることでしょう。

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将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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