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鬼軍曹・永瀬拓矢王座(28歳)王将戦リーグ2勝目 木村一基九段(47歳)の粘りを振り切る

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 10月20日。東京・将棋会館において王将戦リーグ2回戦▲永瀬拓矢王座(28歳)-△木村一基九段(47歳)戦がおこなわれました。10時に始まった対局は19時39分に終局。結果は115手で永瀬王座の勝ちとなりました。

 リーグ成績は永瀬王座2連勝、木村九段2連敗となりました。

 永瀬王座は10月26日、3回戦で藤井聡太二冠(18歳)と対戦します。

ここでも勝ち進む永瀬王座

 永瀬王座は今年度成績25勝9敗。対局数、勝数ともにランキングトップに立っています。14日には王座防衛を果たしました。

 木村九段は今年度9勝10敗です。

 両者は過去に4回戦って、永瀬2勝、木村2勝の五分。今年7月のB級1組順位戦では、千日手指し直しの末に永瀬勝ちでした。

 意外なことに、永瀬王座、木村九段ともに王将戦リーグ入りは今期が初めて。両者の王将戦リーグでの対戦もまた、初めてとなります。

 本局は永瀬王座先手。戦型は相掛かりとなりました。

 後手の木村九段が3筋の歩を突かず角筋を開けないのを見て、永瀬王座は3筋の歩を突き越して位(くらい)を撮ります。

 木村九段は銀と端角のコンビネーションで位に向かって反発。1歩をかすめとることに成功しました。しかしそれで必ずしもリードしているわけではない、というのが将棋の難しいところ。

 木村九段は飛車を中央5筋に回して、永瀬玉に照準を合わせます。端1筋、3筋、そして中央5筋と3か所で歩がぶつかって、局面は大きく動き始めます。

 木村九段の飛車が中段に進んできたのに対して、永瀬王座が飛車取りに打った端角がねらいすましたカウンター。永瀬王座は飛車を成り込んで龍を作ることにも成功。右からは龍、左からは飛車が木村玉をはさみうちする形となり、永瀬優勢終盤となりました。

 対して、木村九段は簡単には崩れません。土俵際まで追い込まれながらも、その真骨頂とでもいうべき不屈の粘り腰を見せ、少しずつ押し返していきます。

 対して永瀬王座も踏みとどまります。そしてまた冷静に押し戻していきました。

 99手目、中段に桂を跳ね出す手がぴったり。これが決め手となりました。

「軍曹強い!」

 将棋プレミアムで聞き手を務める飯野愛女流初段は、そうつぶやいていました。

 最後は2枚の龍が木村玉を左右はさみうちにする形で終局。永瀬王座の勝ちとなりました。

 リーグ成績は以下のようになりました。

【3勝0敗】豊島将之竜王

【2勝0敗】羽生善治九段、永瀬拓矢王座

【1勝1敗】広瀬章人八段

【0勝2敗】藤井聡太二冠、木村一基九段

【0勝3敗】佐藤天彦九段

 成績は上から下まで、対称形できれいにわかれました。

 次戦10月26日は▲藤井聡太二冠(0勝2敗)-△永瀬拓矢王座(2勝0敗)。こちらもまた注目の一番です。藤井二冠はあと1敗でもした時点で、挑戦権獲得の可能性がなくなります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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