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序盤から時間を使う藤井聡太二冠(18)消費わずか9分の豊島将之竜王(30)相掛かりで午後の戦いに

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 10月5日。大阪・関西将棋会館において▲豊島将之竜王(30歳)-△藤井聡太二冠(18歳)戦がおこなわれています。

 豊島名人先手で、戦型は互いに飛車先の歩を伸ばし合う相掛かりに進みました。

 かつてであれば飛車先の歩はとりあえず交換したものですが、現代最先端ではいちばんいい時にそれをおこない、飛車をいい位置に移動させるという駆け引きがあります。

 本局、先に飛車先の歩を交換したのは藤井二冠。そして16手目。飛車を横に動かすモーションで歩を取ります。そう指すと藤井陣には桂取りに歩を打たれるスキが生じるので、歩2枚と桂1枚を交換する順が生じます。そう進むと損得は微妙なところで、バランスは取れています。

 もちろんそうした前提は両者ともに織り込み済み。豊島竜王はその順をあえて見送りました。その決断の早さからも、事前準備の周到さがうかがえます。

 藤井二冠は7筋の横歩を取って1歩得の実利を得ました。ただし飛車を元の8筋に戻すのに手数がかかるため、その間に豊島竜王は「手得」で駒を多く動かすことができます。

 将棋プレミアム解説は豊川孝弘七段。その言葉を借りると「ナウい将棋」で、定跡最前線の戦いとなりました。

 豊島竜王がほとんど時間を使いません。一方で藤井二冠は対照的に、序中盤から積極的に時間を使って考えます。

 33手目。豊島竜王が銀を上がった局面で藤井二冠は「舘ひろし」(豊川七段)。席を立って12時、休憩に入りました。

 12時40分、対局再開。34手目、藤井二冠は8筋に歩を垂らしました。

「タラちゃん! 踏み込み聡太君ですよ、これ! 大変なことになりますよ!」(豊川七段)

 盤上の形勢はほぼ互角。

 持ち時間4時間のうち、消費時間は豊島わずかに9分、藤井1時間29分と、時間は差がついています。

 ここからは豊島竜王も時間を使って考えます。そして1時間が過ぎました。午後からは相当なスローペースとなるかもしれません。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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