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「叡王奪取をきっかけにして、これから巻き返していけたら」豊島将之新叡王(30)インタビュー全文

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 叡王戦七番勝負第9局感想戦終了後、豊島将之新叡王(30歳)に改めてインタビューがおこなわれました。(以下、質問文の表記は簡略化しています)

――まずは叡王位獲得、おめでとうございます。

豊島将之新叡王「ありがとうございます」

――いまの率直なお気持ちをお聞かせください。

豊島「そうですね、ひとつ大きな結果を出すことができてうれしいです」

――この長期戦、改めて振り返っていかがだったでしょうか?

豊島「予想してないこととか、これまで経験してこなかったようなことが多くあって。非常に長かったですし。最後の方はうまく指せたんですけど、うまくいかない将棋も多くて、苦しいシリーズだったかなと思います」

――特に印象的だったことは?

豊島「2局連続持将棋とか。あとはそうですね、持ち時間1時間で1日2局指して、200手超えの将棋だったりとか・・・あたりはそうですね、印象には残っています」

――コロナ禍の中での対局だったが。

豊島「本当に大変な中で、2か月延期にはなりましたけど、対局できる環境を整えていただいて。対局できたことに感謝しています」

――特に大変だったとか、つらかったことは?

豊島「持ち時間1時間の対局で、けっこう優勢な時間が長かった中で逆転されてしまったりとか。あとは1勝2敗とか2勝3敗になって先行される展開だったので、そのあたりは厳しかったというか、大変でした」

――改めて、永瀬前叡王の印象は?

豊島「やっぱり粘り強さであったり、手厚く負けにくい将棋を指されるっていうのがありますけど。それ以外のところでもやっぱり、全体的にすごくレベルが高くて、序盤の準備とかもすごく幅広くされてますし。そうですね、その序盤戦からまた中盤、終盤に連動してくるようなあたりとか。準備というか、研究というか、そういうところで戦いにくさみたいなのは感じましたし。自分ももっとやっていかないといけないんだなあ、というふうに感じました。戦型の幅の広さみたいなところで、毎局違う展開になったりとか。そういうところは見習っていきたいと思いました」

――両者の対局が長くなるのは波長が合うから? それとも棋風が真逆だから?

豊島「読みが合うところもありましたし、予想してない手を指されるところもあって。そうですね、まあ・・・。どうなんでしょうか。うーん、どちらなんでしょうね(苦笑)。まあでも、意表をつく好手みたいなのを多く指されたような気がします」

――体調は?

豊島「わりと9月に入ってからはよいと思います」

――竜王戦は?

豊島「非常に注目される番勝負になると思うので、熱戦になるようにしっかり準備していきたいと思ってます」

――ニコ生でやってみたい企画は?

豊島「ちょっとすぐには思いつかないんですけど(苦笑)。なんでしょうね。うーん。とりあえずカラオケはやりたくないですので、それ以外(笑)」

――NBAは?

豊島「前回、NBAの予想をしたんですけど、すぐにはずれてしまったので。でもまあ、最近も見て楽しんでます」

――視聴中のファンの皆さまに向けて一言。

豊島「叡王戦、非常に長い戦いでしたけれども、最後までご覧いただきまして、ありがとうございます。内容的には押されている将棋が多かったので、これからまたしっかり実力をつけていけるようにしたいと思っています。竜王戦(七番勝負)も始まりますし、(A級)順位戦とか、王将リーグとたくさん強い相手と指すことになるので、その中でちょっとずつ修正していって。今期(2020年度)はあまりうまく指せない将棋が多いので、なんとかきっかけを、そうですね、叡王奪取をきっかけにして、これから巻き返していけたらと思いますので。このあとも戦いが続いていくので、応援していただいて、将棋を見ていただけたらと思います。ありがとうございました。(一礼)」

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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