タイトル100期挑戦に近づいた? 羽生善治九段(49)竜王戦挑決第3局で優位に立つ

(記事中の画像作成:筆者)

 9月19日。東京・将棋会館において第33期竜王戦挑戦者決定戦三番勝負第3局▲羽生善治九段-△丸山忠久九段戦がおこなわれています。

 後手番の丸山九段は一手損角換わり。対して羽生九段は玉を金銀3枚で固めます。

 午後の戦いに入り、羽生九段は一度引いた銀を再度四段目、棒銀の位置に進めました。

 48手目。丸山九段は自陣の端二段目に遠見(とおみ)の角を打ちます。古来、この位置に据えられた角は「名角」となることが多い。本局ではどうでしょうか。

 羽生九段はさらに五段目に銀を押し出していき、銀交換に成功します。一般的には攻めの銀と守りの銀の交換は攻めの側が有利。ここで丸山九段から有効なカウンターがあるかどうかです。

 丸山九段は羽生陣に歩を打ちます。遠見の角とのコンビネーションで、厳しそうな反撃のようにも見えます。

 対して羽生九段は軽く5筋の歩を突き出します。

「大駒は近づけて受けよ」

 そう格言が教える通り、羽生九段は1歩を犠牲にして丸山九段の遠見の角を呼び寄せ、先ほど交換した銀を再び自陣に投入します。

 そして手番は再び羽生九段に。羽生九段は今度、桂取りに歩を突き出します。

「金は斜めに誘え」

 やはりこれもよく知られた格言通りの一手で、またもや1歩を犠牲にするものの、相手の金を上ずらせ、守備力を無力化させています。

 上級者はやはり歩の使い方が上手い。特にそれが史上最強の棋士である羽生九段ともなれば、抜群に上手いに決まっています。

 羽生九段は歩を2枚渡しながらも、効率よく歩で攻めます。そして角を成り込んで馬を作りつつ、桂得という大きな実利も得ました。現状ははっきり、羽生九段が優位に立っています。

 現状は羽生九段が次第に竜王位挑戦に向け、着実に歩みを進めつつある。そんなと状況のようです。

 1989年竜王戦七番勝負。19歳の羽生六段は島朗竜王に挑戦しました(肩書はいずれも当時)。そして4勝3敗1持将棋でシリーズを制し、初タイトル竜王位を獲得しました。

 以来獲得したタイトル数は史上空前の99期を数えます。「空前絶後」という言葉は安易に使うべきではありません。しかしこの記録ばかりは「絶後」の可能性も高いと言えそうです。

 2018年竜王戦七番勝負。羽生竜王は広瀬章人八段の挑戦を受けました(肩書はいずれも当時)。タイトル通算100期まであと1期、そしてあと1勝と迫りながらも、挑戦者の広瀬章人八段に3勝4敗で竜王位を明け渡すことになりました。

 以来、羽生九段はタイトル戦番勝負の舞台からは遠ざかってきました。その間には豊島将之現竜王、永瀬拓矢現二冠、藤井聡太現二冠など、新世代の棋士たちの目覚ましい台頭もありました。

 そうした中で、羽生九段は再び竜王戦の舞台に立つことはできるのか。あるいは、羽生九段と長年に渡って戦ってきた丸山九段がここから追い込みを見せるのか。

 竜王戦挑決は18時0分から40分まで夕食休憩をはさみ、夜には終盤戦を迎えることとなります。