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元名人・佐藤天彦九段(32)王将リーグ入り決定 二次予選決勝で元竜王・糸谷哲郎八段(31)を降す

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 8月25日。東京・将棋会館において第70期王将戦二次予選決勝▲佐藤天彦九段(32歳)-△糸谷哲郎八段(31歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は16時46分に終局。結果は123手で佐藤九段の勝ちとなりました。

 佐藤九段はこれで2期ぶりの王将リーグ入りを決めました。

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 二次予選からは永瀬拓矢二冠、佐藤九段、木村一基九段が勝ち進みました。

 シードの広瀬章人八段、豊島将之竜王、羽生善治九段、藤井聡太二冠と合わせ、今期王将リーグ7人のメンバーが確定しました。

 これから渡辺明王将(36歳)への挑戦権を争う、熾烈な戦いが始まります。

棋界トップクラスの7人集う

 佐藤九段は前々期、糸谷八段は前期にリーグから陥落。両者ともに復帰のかかった一局でした。

 両者はともに関西奨励会出身で入会同期。奨励会の例会での両者の対戦。糸谷少年が取った銀を自分の駒台ではなく対戦相手の佐藤少年の駒台に置くという類例のない反則負けがあったことでも知られています。

 棋士となってからの対戦成績は、佐藤4勝、糸谷7勝。直近では前年度A級で対戦し、佐藤九段が勝っています。

 佐藤九段は名人3期、糸谷八段は竜王1期の実績があります。どちらがリーグに入っても、今期は全員タイトル経験者ということになります。

 本局、後手番となった糸谷八段は一手損角換わりの作戦。佐藤九段が手早く銀を進めて速攻を見せたのに対して、糸谷八段は4筋に飛車を転回したり、銀を2枚並べたりと、迎撃態勢を作りました。

 佐藤九段が銀を五段目に進めて攻める一方、糸谷八段は佐藤陣に生じたスキに角を打ち込んでカウンターを狙います。

 進んで佐藤九段の攻めがつながる形となり、次第に佐藤よしの形勢となっていきました。

 佐藤九段が着々と攻めをつなげていくのに対して、糸谷八段は上部に玉を逃げ出し、入玉含みでがんばります。

 一手ゆるめばたちまち逆転しそうな終盤戦。佐藤九段はリードを保ってゴールを目指します。

 最後は糸谷八段が佐藤陣にまで入り込み、佐藤玉も危ない形となりましたが、佐藤九段が逃げ切って勝利を収めました。

 佐藤九段はこれで2期ぶりの王将リーグ入り決定。選ばれし7人の精鋭の一人として、渡辺王将への挑戦権を争うことになりました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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