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木村一基王位、藤井聡太挑戦者ともに積極的に動き、王位戦第4局は1日目午前から波乱含みの展開

松本博文将棋ライター
福岡市・大濠公園(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

 8月19日。福岡県福岡市・大濠公園能楽堂において第61期王位戦▲木村一基王位(47歳)-△藤井聡太棋聖(18歳)戦、1日目の対局がおこなわれています。

 木村王位先手で戦型は第2局と同じく相掛かりとなりました。

 23手目。木村王位は五段目に飛車を構えます。そこから1筋の歩を突っかけて、端攻めに出ました。塚田泰明六段(現九段)が1986年に出した新手法「塚田スペシャル」でしばしば見られた攻め筋です。

 藤井棋聖の手番で木村王位、藤井棋聖の順に席を立ち、盤の前からは両対局者の姿は消えました。

 やがて木村王位が戻ってきて、記録係の池永天志四段に何か話しかけます。そのあとで黒いスポーツ用のマスクと眼鏡をはずし、おしぼりで顔を拭きました。

 ABEMAの中継では橋本崇載八段と三枚堂達也七段が解説を担当しています。

橋本「藤井君つってるけど、気がついたらもう二冠・・・。これ勝ったら二冠ですか」

三枚堂「はい、最年少二冠王で最年少八段昇段を決めます。いろいろと懸かった一番になっております」

橋本「うーん、なるほどねえ。早いですねえ、時の流れは。あっちゅう間でしたね」

三枚堂「まだデビューして4年ほどだと思うんですけどね」

橋本「4年っていうのは、彼にしちゃあ長いようにも思えるんですけど、ここ数か月の早さがなんかこうね、いきなりなんかタイトル取ったかと思ったら、もう2つ目かよ、みたいな感じで。まあ、木村さんとしてはストレート負けは避けたい。しかしちょっと、今年は相手がわるかったね」

三枚堂「うーん、そうですか。勢いもあって、強くもある」

 強い上に勢いのある藤井挑戦者。31分考え、28手目、1筋の歩を軽く一つ突き出します。

 対してこちらも多くのファンの声援を背に逆境を戦う木村王位。藤井挑戦者の歩の後ろに回る形で、飛車を1筋に寄せました。

 30手目。藤井挑戦者は27分を使って横歩を取ります。

 両者互いに積極的に動いて、局面は一気に緊張が高まってきました。

 木村王位の手番で12時30分、昼食休憩に入りました。

 藤井挑戦者が選んだ「能古うどん」は地元福岡のうどんです。

 対局場の大濠公園から海に向かって行くと、椎名林檎さんの歌などに出てくる百道浜(ももちはま)があります。博多湾の沖には能古島(のこのしま)。こちらは井上陽水さんの歌でも有名です。

 多くのタレント、アーティストを輩出している福岡。藤井四段(当時)と対談したことのあるタモリさんも福岡出身です。

 対局再開前。両対局者は盤の前に戻っています。藤井挑戦者は閉じたままの扇子を手にしてくるくる回しながら考えるいつものスタイルです。

「時間になりました」

 13時30分。記録係の池永四段が声をかけて、対局が再開されました。

木村「この手、何分使いましたか?」

池永「32分です」

 そのやり取りのあと、木村王位は一呼吸をおいて31手目、角を元の位置から四段目に上がりました。

 持ち時間8時間のうち、消費時間は木村王位1時間50分、藤井挑戦者1時間22分。形勢はほぼ互角で、時間はわずかに木村王位の方が使っています。

 王位戦1日目は18時の時点で手番の側が次の手を封じて、指し掛けとなります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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