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藤井聡太棋聖、勝勢を築いて夕食休憩に入る B級2組3回戦・鈴木大介九段戦

松本博文将棋ライター
写真撮影:悟訓

 7月29日。東京・将棋会館において第79期順位戦B級2組3回戦▲藤井聡太棋聖(18歳)-△鈴木大介九段(46歳)戦がおこなわれています。

 午後の戦いで優位に立った藤井棋聖。鈴木陣の美濃囲いの弱点である桂頭を攻めていきます。

 67手目。藤井棋聖は歩の拠点に支えられながら、桂頭に香を打ちました。シンプルながら重く響くストレートなパンチです。

 この時点で残りは藤井1時間19分、鈴木4時間2分。戦前の予想通りというべきか、時間は大差がついています。

 一方で盤上の形勢は藤井棋聖優勢となりました。穴熊玉は遠くて堅く、ほぼ一方的に攻め続けられる形となり、実戦的にも勝ちやすそうです。

 しばらく考えていた鈴木九段。

「うーん」

 とうなり、なにかをぼやきながら、正座を崩して座り直します。

 71手目。藤井棋聖は鈴木陣の守りについた馬取りに当てて、穴熊の金を上がります。じっと圧力をかけて、これも着実で手厚い指し方です。

 鈴木九段、これはやはり苦しい終盤戦か。鈴木九段は弟子の梶浦宏孝六段が「百雑碎」と揮毫した扇子をあおいで考えます。

 ABEMA解説の松尾歩八段と黒沢怜生五段の検討でも、なかなか鈴木九段がよくなる順が出てきません。

黒沢「どれも藤井棋聖が・・・」

松尾「けっこうそうですね、はっきりよしと」

黒沢「勝勢と言っていい・・・」

松尾「よさそうですかね」

 18時。記録係の広森三段が時間になったことを告げます。

「休憩に入りました」

 藤井棋聖はすぐに立ち、対局室を去ります。一方で鈴木九段は盤の前に残って考え続けていました。

 本日は野原未蘭さんが女流棋士2級の資格を得るというニュースがありました。

 藤井棋聖と野原さんはかつて角落で対局をし、2019年新春、しんぶん赤旗紙上に棋譜が掲載されたことがありました。両者はともに現在まだ高校生。これからの将棋界をになっていく存在となるのでしょう。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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