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竜王位挑戦も目指す藤井聡太棋聖(18)本戦初戦で大豪・丸山忠久九段(49)の角換わり棒銀を迎え撃つ

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 7月24日。東京・将棋会館において第33期竜王戦決勝トーナメント▲丸山忠久九段(49歳)-△藤井聡太棋聖(18歳)戦がおこなわれます。棋譜は公式ページをご覧ください。

 現在進行中の竜王戦本戦。左側の山では梶浦宏孝六段(5組優勝)が3連勝で快進撃中です。右側は昨日、久保利明九段(1組3位)が佐々木勇気七段(2組優勝)を降しました。

 本局の勝者は次戦、佐藤和俊七段(1組2位)と対戦することになります。

 本局がおこなわれるのは将棋会館4階、特別対局室です。

 9時34分頃、藤井棋聖入室。床の間を背にして、上座にすわりました。席次5位となった藤井棋聖は、他の4人のタイトルホルダー以外は、基本的に床の間を背にして、上座に着くことになります。

 藤井棋聖は3組優勝。デビュー以来4年連続で本戦に進んでいます。

 藤井棋聖は16日、史上最年少の17歳11か月で初タイトルの棋聖位を獲得しました。また王位戦では現在木村一基王位に挑戦中。そして竜王戦でも挑戦の期待がかかります。

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 藤井棋聖は王位、竜王、王将と獲得すれば、今年度中には最大四冠となる可能性があります。

 藤井棋聖がもしも豊島将之竜王(名人)にも挑戦し、さらには竜王位を獲得すれば。肩書は「藤井竜王」(棋聖)、「豊島名人」となり、複数冠の竜王である「藤井竜王」が史上最年少での席次1位となります。

 藤井棋聖は大変なハードスケジュールの中で棋聖位を獲得しました。

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 五番勝負第5局の予定がなくなってほっと一息・・・となったのかどうか。

 空いたスケジュールでマスコミ各社による藤井棋聖の「単独インタビュー」が数多くおこなわれました。

 また将棋連盟からは「藤井棋聖追加署名免状発行」のアナウンスがありました。

 藤井棋聖はいずれ、その免状の署名もすることになります。

 藤井棋聖は白いマスク姿。タイトル戦で藤井挑戦者が着けているマスクが福井県の小杉織物株式会社で製造されているものであることがわかり、それが飛ぶように売れたということもありました。

 大変な「藤井ブーム」の中、藤井棋聖の対局は変わらず続いていきます。

 

 9時52分頃、半袖シャツ姿の丸山九段入室。盤側に冷たいお茶3本、水3本を鞄から取り出し、お盆の上に置きます。

 丸山九段は今期2組2位。本戦進出は12回目で、挑戦は3回と大変な実績があります。

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 丸山九段のタイトル獲得は名人2期、棋王1期。同学年の羽生善治九段、1歳上の佐藤康光九段らとともに「黄金世代」を形勢してきました。今期本戦準決勝の組み合わせが羽生-佐藤康光、丸山-久保となれば、長年観戦してきたファンにとっては、実になじみ深い顔ぶれと言えるでしょう。

 両対局者が席に着いたあと、藤井棋聖は駒箱に手にし、盤上に駒をあけます。藤井棋聖が「王将」、丸山九段が「玉将」を持って、大橋流で駒を並べました。

 記録係が藤井棋聖の側の歩を5枚取り、振り駒をします。

「藤井先生の振り歩先です」

 畳の上には「と」が4枚出て、丸山九段の先手と決まりました。

「それでは時間になりましたので、丸山先生の先手番でお願いします」

 定刻10時。両対局者は「お願いします」の声とともに一礼。対局が始まりました。

 丸山九段は初手、飛車の上の歩を一つ前に進めます。

 藤井棋聖はマスクをずらし、冷たいお茶を一服。そしていつも通り、飛車先の歩を突きました。

 戦型は角換わりに進みました。そのあと、現代将棋界では腰掛銀に進むのが主流で、最前線です。

 本局では、丸山九段は棒銀に出ました。これは秘策か。最近ではあまり見ない作戦であり、また丸山九段が採用するのも相当に珍しいものと思われます。

 丸山九段がするすると棒銀を繰り出すのに対して、藤井棋聖はその棒銀を迎え撃つべく、中段に角を放ちました。開始早々、観戦者にとっては早くも面白そうな戦いが始まっています。丸山九段が23手目を考慮中に11時半を過ぎました。

 竜王戦本戦の持ち時間は各5時間。昼食休憩、夕食休憩をはさんで、通例では夜に終局となります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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