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充実著しい永瀬拓矢二冠(27)か? 神童・藤井聡太七段(17)か? 6月23日、王位戦挑戦者決定戦

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 6月23日。東京・将棋会館において第61期王位戦挑戦者決定戦・永瀬拓矢二冠(27歳)-藤井聡太七段(17歳)戦がおこなわれます。

 対局開始は10時。持ち時間は各4時間です。

 永瀬二冠は紅組、藤井七段は白組で優勝。そして両者ともに5戦全勝と、圧倒的な勢いで勝ち上がってきました。

 永瀬二冠と藤井七段は6月4日、棋聖戦挑戦者決定戦で公式戦初対局を戦っています。そこで歴史的名勝負を演じたことは記憶に新しいところです。

 2棋戦続けて挑決を戦うということは、両者がいかに多く勝っているかを示すものでしょう。

 将棋界の多くの記録を塗り替えつつある藤井七段。もし棋聖戦に続いて王位戦も挑戦となれば、史上最速での2回目のタイトル戦登場となります。棋聖、王位と立て続けに獲得となればもちろん、史上最年少での二冠達成です。

 ハードスケジュールが続く両者。永瀬二冠は21日(日)、静岡県河津町でおこなわれた叡王戦七番勝負第1局で豊島将之竜王・名人(30歳)と千日手指し直しの激闘を演じています。

 藤井七段は20日(土)、大阪・関西将棋会館で竜王戦3組決勝、杉本昌隆八段戦をたたかっています。

 永瀬二冠は中1日、藤井七段は中2日での対局となります。

 まずは対局開始前に先手と後手を決める「振り駒」が注目されます。挑決の一番勝負では、わずかに勝率のよい先手番を握った側が、わずかに優位に立ちます。

 勝者は木村一基王位(46歳)への挑戦権を獲得します。

「みんな負けてほしい。その思いは変わらないですね」

 白組1回戦、羽生善治九段-藤井七段戦で解説を担当した木村王位は、キリッとそう語っていました。しかしいまこうして永瀬二冠か、藤井七段か、挑戦者が決まる段階を迎えたわけです。

 1973年6月23日生まれの木村王位は、ちょうど挑決の日に誕生日を迎え、47歳となります。

 史上最年長の46歳で初タイトルを獲得し、多くの将棋ファンの涙を誘った苦労人の木村王位。そこにもし、史上最年少タイトル挑戦記録を更新した神童・藤井七段が挑むとなれば、ストーリーとしてはあまりに出来すぎています。そんなリアリティのなさそうな創作ドラマのようなことが、毎度毎度起こるのか。どうなのか。

 毎度毎度、同じようなことを書いています。それでもあえて書けば、この一局もまた、新時代の将棋界のゆくえを占うであろう大一番です。絶対に見逃すことはできません。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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