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豊島将之名人(30)封じ手は桂跳ね、対応誤れば相手は「まいってるジャクソン」名人戦第2局2日目始まる

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 6月19日。山形県天童市・天童ホテルにおいて第78期名人戦七番勝負第2局▲渡辺明三冠(36歳)-△豊島将之名人(30歳)戦、2日目の対局が始まりました。棋譜は「名人戦棋譜速報」などをご覧ください。

 渡辺三冠が先手で戦型は相掛かり。駒組の後、渡辺三冠は3筋、豊島名人は7筋から歩を突っかけて、戦いが始まりました。

 渡辺三冠は攻めの桂をポーンと跳ねていきます。以下の変化は副立会人の千田翔太七段が詳しく解説しています。

 桂交換の後、豊島名人は飛車取りに桂を打ち据えました。

 51手目。渡辺三冠が8筋に金を上がったところで豊島名人が次の手を封じ、1日目の対局が終了しました。

 明けて2日目。対局室には渡辺三冠、豊島名人の順に姿を見せます。

 記録係は鈴木麗音(れのん)初段(19歳)。

「髪が羽生善治になってますよ」

 とABEMA解説の豊川孝弘七段。「髪が羽生善治」とは寝癖がついているということです。

 両対局者が初期位置に駒を並べ終わった後、鈴木初段が1日目の棋譜を読み上げます。

「先手渡辺三冠▲2六歩、後手豊島名人△3四歩・・・」

 51手目▲8七金まで並べ終わった後、立会人の田中寅彦九段が封じ手開封。

 豊島名人の52手目は△7三桂でした。

 攻めの桂を活用する積極的な手です。ここはABEMA聞き手の室谷由紀女流三段の予想が当たりました。

豊川「室谷行(ゆ)きましたよ。室谷行きとね」

豊川「行きましたよ。内藤國雄『おゆき』と」

 渡辺三冠はその手を読んでいたか、すぐに▲6六角と上がります。次に桂を跳ねられた際に当たりになることをあらかじめ避けています。

豊川「いやいやいや、かわしまさんですか」

 しゃべり合いながらの気楽な対局の地口で、駒をかわすときに登場する「かわしまさん」。「川嶋紀子さん」など具体的な名前が出る場合もあります。古い世代では「川島正次郎」、最近の世代では「川嶋あい」などのバージョンがあります。

 手順に桂が跳ねてきて角を狙われる進行になると、先手はすぐに「アウトデラックス」「まいってるジャクソン」(豊川)となりかねません。

 54手目。豊島名人は玉のそばに金を一つ上がります。渡辺三冠が次の手を考えているところで9時半を過ぎました。形勢はほぼ互角。長い戦いになりそうです。

 持ち時間は各9時間。本日2日目は昼の休憩(1時間)、夕方の休憩(30分)をはさんで、通例では夜に決着がつきます。

 豊島名人もハードスケジュールが組まれている棋士の一人。明日20日は移動日で、山形県天童市から静岡県河津町に。明後日21日には挑戦者として叡王戦七番勝負第1局を戦います。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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