６月17日。大阪・関西将棋会館において第31期女流王位戦五番勝負第３局がおこなわれました。棋譜は公式ページをご覧ください。９時に始まった対局は18時59分に終局。結果は143手で里見香奈女流王位の勝ちとなりました。

　里見女流王位は五番勝負を３連勝で防衛。女流王位獲得は通算６期目となりました。また清麗、女流名人、倉敷藤花とあわせ、女流四冠を堅持しました。

　女流七大タイトルの通算獲得数は合計40期となりました。

　加藤桃子女流三段はハードスケジュールの中、マイナビ女子オープン五番勝負に続いての挑戦敗退となりました。

中飛車VS居飛車穴熊の３連戦

　今期女流王位戦五番勝負はコロナ禍の影響で、約２か月ほど開幕が遅くなりました。

　第１局は６月５日、東京・将棋会館においておこなわれました。加藤挑戦者は３日にマイナビ女子オープン五番勝負で最終第５局を戦ったばかり。タイトな日程の中で「２強」と呼ばれる西山女流三冠、里見女流四冠を相手にタイトル戦を戦い続けることになりました。

　里見女流王位が先手で戦型は中飛車。加藤挑戦者は西山朋佳女王戦に引き続いて、一目散に穴熊に組む作戦を取ります。結果は111手で里見女流王位の勝ちとなりました。

　第２局は６月９日、大阪・関西将棋会館にて。先後は変わりましたが、やはり里見女流王位の中飛車に加藤挑戦者の居飛車穴熊という戦型。結果は110手で里見女流王位の連勝となりました。

　そして本日６月17日の第３局。先手は再び里見女流王位で、三たび戦型は中飛車VS居飛車穴熊となりました。

　里見女流王位は５筋の位を取り、その下から銀を四段目に進め、高美濃囲いに組み上げます。一方で加藤挑戦者は金銀４枚を集結させての穴熊です。

　左辺で駒がぶつかって、戦いは始まります。加藤挑戦者が軽く飛角桂で手を作ろうとするのに対して、里見女流王位は銀を盤上中央に手厚く進め、穴熊にプレッシャーをかけます。

　里見女流王位はさらに穴熊の急所である端に手をつけます。横からの攻めには無類に強い穴熊も、縦からの攻めにはもろいところもあります。

　里見女流王位は角をただで取らせる間に、端から攻め入ります。その時点においては、形勢はほぼ五分。そこから里見女流王位が力を見せ、やがてリードを奪いました

　やや苦しくなった加藤挑戦者。角取りを逃げず、駒台に乗っているもう１枚の角を王手で里見陣に打ち込みます。里見女流王位は落ち着いて銀の合駒。ここで形勢は里見優勢がはっきりしたようです。

　里見女流王位は加藤挑戦者の攻めをしのぎ、攻守所を変えます。

　２枚の角は里見女流王位の駒台に乗り、１枚は加藤玉のすぐ近くに打ち込まれ、もう１枚は里見陣中段の攻防に利く位置に据えられます。

　最後は互いの玉が中段で近づき合い、互いに多くの駒が入り組み密集する中での玉頭戦となりました。

　加藤挑戦者は手段を尽くしたものの及ばず。手番の回った里見女流王位は即詰みの生じている加藤玉に銀を打って王手をかけます。

　加藤挑戦者が投了し、里見女流王位の防衛が決まりました。

　５日に開幕した五番勝負は17日に閉幕という、異例のスピード決着となりました。

　里見女流王位は2019年に渡部愛現女流三段からタイトルを奪い返し、今期2020年は防衛で２連覇。通算では６期目の女流王位獲得となりました。

　一方で加藤女流三段はマイナビ女子オープン、女流王位戦と２つの五番勝負での敗退。西山三冠、里見四冠の「２強」がそれだけ手厚いということなのでしょう。

　そしてコロナ禍の状況でやむを得ないとはいえ、タイトな日程が加藤挑戦者にとってはきついところもあったのかもしれません。

　タイトル獲得合計40期となった里見女流王位。清水市代女流六段（51歳）が持つ歴代１位の43期という記録更新も、いよいよ視野に入ってきました。

　７月４日に開幕する第２期ヒューリック杯清麗戦五番勝負では、上田初美女流四段（31歳）の挑戦を受けて立ちます。