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前年度新人王・高野智史五段(26)初の竜王戦本戦進出決定 6組決勝で星野良生四段(31)を破る

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 6月16日。東京・将棋会館において第33期竜王戦・6組ランキング戦決勝▲高野智史五段(26歳)-△星野良生四段(31歳)戦がおこなわれました。10時に開始された対局は22時33分に終局。結果は117手で高野五段の勝ちとなりました。

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 高野五段はこれで6組優勝。賞金94万円を獲得するとともに、初の決勝トーナメント(本戦)進出を決めました。

 準優勝の星野四段は賞金21万円を獲得。来期は5組に昇級します。

高野五段、相手の趣向を打ち破る

 星野四段は準決勝で西山朋佳女流三冠(24歳)を降して決勝に進出しました。

 高野五段は前年度の新人王戦で優勝。史上最年長での初タイトル獲得となった師匠の木村一基王位(46歳)に続いて、師弟でそれぞれ栄冠を勝ち取りました。

 高野五段はAbemaTVトーナメントで三浦弘行九段のチームにドラフトで指名され、そちらでも活躍を見せています。

 本局は高野五段が先手で角換わり模様の出だし。そこで星野四段が3三に銀ではなく金を配置する趣向を見せました。

 先行したのは星野四段。早繰り銀の形から積極的に前に出ます。銀交換のモーションで飛車が最前線に飛び出した後。なおも積極的に横歩を取るか。それともじっと元の位置に引くか。

 星野四段は決断して横歩を取ります。高野五段は飛桂両取りに角を打ち返して応戦しました。飛角交換となって、進んでみると形勢は難解のようです。

 高野五段は飛を打って星野陣に進めて成り、龍を作ります。対して星野四段は盤上中段に2枚の角を並べ、そのうち1枚を高野陣に成り込んで、馬を作ります。

 中盤の折衝で星野四段は香を得しました。一方で高野玉は守備駒が多い右辺に逃げ越して安定した形に。形勢はこのあたりから少しずつ高野五段に傾いていったようです。

 高野五段は中段の龍の威力を背景に星野陣に2枚のと金を作ります。最後はその2枚のと金が星野玉の死命を制する形となり、高野五段が押し切りました。

 高野五段はこれで初の竜王戦本戦進出です。5組優勝者、4組優勝者を連破すると、そこで1組5位と対戦します。

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 1組5位が師匠の木村王位となるか、それともAbemaTVトーナメントでチームリーダーの三浦九段となるかは、22日の対戦で決まります。

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 木村王位と高野五段は、公式戦ではまだ対局がありません。新人王戦記念対局(非公式戦)では弟子の高野五段が勝利を挙げています。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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