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女性初の5組昇級なるか? 西山朋佳女流三冠(24)竜王戦6組準決勝で星野良生四段(31)と対戦

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 6月11日。大阪・関西将棋会館において第33期竜王戦6組ランキング戦準決勝・星野良生四段(31歳)-西山朋佳女流三冠(24歳)戦がおこなわれます。

 勝者は決勝進出、および5組昇級が決まります。

 西山朋佳女流三冠の正式な立場は女流棋士ではなく、奨励会三段です。ただし今期竜王戦6組には女流タイトルホルダーの立場として出場しています。最近ではマイナビ女子オープンで防衛を果たし、女王の座を堅持しています。

 西山女流三冠は今期竜王戦6組では小林宏七段、田中寅彦九段、青野照市九段、長谷部浩平四段と連破して、ベスト4まで勝ち上がってきました。

 6組では決勝に進出すれば2位以内が確定し、昇級が決まります。

 これまで6組に参加した女性が、5組に昇級した例はありません。

 また竜王戦6組はアマチュア、女流棋士、奨励会員を含め、男性の棋士以外では誰も5組に昇級したことがありません。もし西山女流三冠の昇級を達成すれば、将棋史に残る大変な快挙と言えるでしょう。

 公式戦における棋士と女流棋士の対局は1981年に新人王戦で始まりました。女流棋士の実力も向上していたものの、なかなか男性の棋士に勝つことはできませんでした。

 竜王戦では1993年(第7期)から6組に女流棋士が参加しています。

 そして1993年12月9日。池田修一六段戦(48歳)-中井広恵女流名人(24歳)戦(肩書、年齢はいずれも当時)では中井女流名人が勝利しています。これは社会的なニュースとして大きく伝えられました。

 以来、女流棋士側は少しずつ白星を積み重ねていきます。そして現在では女流棋士、および女性奨励会員も含め、女性が公式戦で棋士に勝つのは、そう珍しいことではなくなりました。

 西山女流三冠は奨励会三段の立場としては、前期三段リーグで次点となっています。

 三段リーグは次点2回でフリークラス入りの資格を得て、四段に昇段できます。

 新人王戦で優勝した際には次点1回が付与されます。2013年、都成竜馬三段(現六段)が優勝した後でその規定が設けられ、都成三段には遡及的に適用されました。

 竜王戦6組ではそうした特典が与えられる規定は現在のところありません。また西山女流三冠の今期竜王戦参加資格が奨励会員ではなく女流タイトルホルダーであることも微妙なところですが、もし西山女流三冠がこのまま竜王戦で勝ち進めば、どこかの段階で、何らかの新規定が設けられる可能性はありそうです。

 一方、棋士以外の6組参加者(アマチュア、女流棋士、奨励会員)はランキング戦で1度敗れると、昇級者決定戦に回ることはできず、その期は終了となります。西山女流三冠も準決勝で敗れると、今期昇級の可能性はそこで絶たれます。

 一方、星野四段にとっても初の5組昇級がかかった一番となります。

 星野四段は最近、企業に就職したことでも話題になりました。

 また星野四段のこれまでの通算成績は97勝105敗(勝率0.480)。あと3勝で通算100勝となり、規定により五段に昇段できます。

 星野四段、西山女流三冠、いずれにとっても、大きな大きな一番です。勝者は6組決勝で高野智史五段(前期新人王戦優勝者)と対戦します。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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