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将棋名人戦は異例の夏の七番勝負に? 緊急事態宣言延長にともなう再延期で6月開幕検討中

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 豊島将之名人(30歳)に渡辺明三冠(36歳)が挑む第78期名人戦七番勝負は、コロナ禍の影響により開幕が延期されています。

 5月7日。緊急事態宣言の延長にともない、名人戦七番勝負の再延期が発表されました。

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 名人戦実行委員会は6月から8月にかけて七番勝負を開催する方向で、今後検討するようです。

 主催の毎日新聞、朝日新聞の記事には豊島名人、渡辺三冠のコメントが掲載されています。

 また渡辺三冠は自身のブログで「緊急事態宣言が延長になったので、再延期は考えられることでした」と心境をつづっています。

 先日は叡王戦七番勝負の再延期も発表されたところでした。

 近年の将棋界の歳時記では、名人戦七番勝負は毎年4月に開幕します。

 その中で、もっとも遅く閉幕したのは中原誠名人に加藤一二三十段が挑戦した1982年(昭和57年)の第40期でした。

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 1持将棋、2千日手(当時の規定では後日指し直し)を含めての伝説の「十番勝負」は最終局が7月30日・31日に指されました。

 もっとも遅く7月11日に開幕した七番勝負は黎明期の第3期でした。

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 これは1942年(昭和17年)の戦時中で、やはり異例のことでした。

 夏のさかりの対局が続いて、当時の観戦記には、暑さに関連する記述がいくつも見られます。この時の暑さは病身で年長の神田辰之助八段にはよりこたえたようで、それがストレートという結果につながったのかもしれません。

 現在はほとんどの対局場で空調設備がもうけられ、かつてほどに暑さを感じることはないと思われます。しかしそれでも外は暑い中、対局が集中して過密スケジュールともなれば、対局者にとっては身体面、精神面で厳しい状況が生じてくる可能性はありそうです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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