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秘策「耀龍四間飛車」で挑む佐藤和俊七段(41)に羽生善治九段(49)はどう戦う? 竜王戦1組決勝開始

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 5月7日。東京・将棋会館において竜王ランキング戦1組決勝▲佐藤和俊七段(41歳)-羽生善治九段(49歳)戦が始まりました。

 コロナウイルス感染拡大防止のため、将棋界の伝統的なスタイルもいろいろ変更を余儀なくされています。

 現在放映されているAbemaTVの大盤解説も、解説役の棋士と聞き手の女流棋士が距離を取るスタイルとなっています。

 対局者の羽生九段、佐藤七段、盤側の記録係、観戦記者は全員、マスクをしています。

 本局の記録係を務めるのは本田奎五段(22歳)。普段であれば記録係は修行中の奨励会員が務めるのが一般的ですが、4月下旬からは代わりに棋士や女流棋士が担当しています。

 本田五段は前期棋王戦で挑戦者にもなった実力者です。竜王戦では6組。その2回戦で棋王戦挑戦者決定戦を戦った佐々木大地五段(24歳)と対戦し、敗れています。

 竜王戦の対局はすべてトーナメントで、七番勝負途中(第2局から第6局まで)と挑決三番勝負途中(第2局)以外の先後はすべて、対局直前の振り駒によって決められます。

 本田五段が上位者の羽生九段側の歩を5枚取って振り駒をした結果、裏側の「と」が5枚出ました。「振り歩先」で先手は下位者の佐藤七段と決まりました。

 佐藤七段は角道を止め、端を突き越します。その後で、四間飛車の作戦を選択しました。対して居飛車の羽生九段は、持久戦の構えです。

 振り飛車側は美濃囲いに組むのがオーソドックスです。他には少数派ですが、穴熊囲いが見られることもあります。

 本局で佐藤七段は、相振り飛車でよく用いられる金無双風の駒組みを見せました。実はこの戦法、「耀龍(ようりゅう)四間飛車」と言われています。

「美濃囲いから王様を一路ずらしてみたらビックリするほど勝てる陣形ができた」

 ロマンを感じる(ラノベっぽい?)フレーズですね。2018年、大橋貴洸六段(当時四段)はNHK杯1回戦で三浦弘行九段とこの戦法で対戦し、勝利を収めています。棋譜はこちらの公式ページをご覧ください。

 ▲佐藤和俊七段-△羽生九段戦は昼食休憩の後、羽生九段は穴熊に組む態度を明らかにしました。

 持ち時間は各5時間。この後は夕食休憩もはさんで、通例では夜に終局となります。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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