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竜王位通算7期のレジェンド羽生善治九段(49)1組決勝に進出し本戦出場決定

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 4月3日。東京・将棋会館において竜王ランキング戦1組準決勝▲羽生善治九段(49歳)-△稲葉陽八段(31歳)戦がおこなわれました。10時に始まった対局は22時13分に終局。結果は127手で羽生九段の勝ちとなりました。

 羽生九段はこれで1組決勝に進出。2位以上が確定して、本戦進出が決まりました。決勝では佐藤和俊七段と対戦します。

 敗れた稲葉八段は3位決定戦で本戦進出をかけ、久保利明九段と対戦します。

羽生九段、おとろえ見せぬ勝ちっぷり

 稲葉八段といえば、王位戦リーグ白組における藤井聡太七段との激闘が記憶に新しいところです。

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 羽生九段と稲葉八段は8日、王位戦でも対戦します。よく勝っている棋士同士は、様々な棋戦でぶつかり合うことになります。

 羽生九段と稲葉八段の過去の対戦成績は、ここまで羽生九段6勝、稲葉八段2勝。A級順位戦では5年連続で対戦しています。

 羽生九段の先手番で、戦型は角換わり。ここから腰掛銀に進むのが将棋界の最前線です。本局では、羽生九段は早繰り銀を採用しました。これはずいぶんと珍しい・・・と思いきや、長いキャリアで初めての採用のようです。

 稲葉八段は自陣に角を打って羽生九段の攻めを受け止め、反撃の機会をうかがいます。そして中盤では、両者の力がぶつかり合う、長い長い押し引きが続きました。

 終盤に入ってもなお、均衡は保たれたまま局面は推移します。稲葉玉は先に王手がかかる形となりましたが、そう簡単には崩れそうもありません。

 両者の残り時間が次第に切迫しつつある中、形勢はようやく傾きはじめました。優位に立ったのは、羽生九段でした。稲葉陣に垂らした歩が絶妙で、受ける側はどう応じても味がわるい形となります。

 ひとたび優勢となってからの羽生九段の勝ち方は実に鮮やかでした。最後は飛車に飛車をぶつける豪快な決め手を放ち、稲葉玉を受けなしに追い込みました。

 羽生九段はこれで本戦進出を決めました。竜王位7期、タイトル通算99期というずば抜けた実績を誇る羽生九段。無冠返上に向けて、大きく歩みを進めました。

 さて本日は藤井聡太七段も3組で決勝進出を決めています。

 藤井七段は3組優勝、つまりあと1勝で本戦出場が決まります。

 もし竜王戦本戦で羽生九段-藤井七段戦が実現すれば、それはまた大変な盛り上がりとなるでしょう。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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