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勝てば本日プロ入り決定 最強YouTuber「アゲアゲ将棋」折田翔吾さん、人生の大一番開始

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 2月25日。東京・将棋会館において棋士編入試験五番勝負第4局▲折田翔吾アマ(30歳)-△本田奎五段(22歳)戦が始まりました。

 朝、いち早く対局室に入ってきたのは、立会人の中村修九段(57歳)でした。中村九段は穏やかでにこやかな棋士です。笑顔でなごやかなムードの中、対局室に詰めかけた報道陣に向かって

中村「対局者が入ってきたら厳粛なムードになります。みなさん、よろしくお願いします」

 と語りかけていました。記録係が駒をみがき、盤を拭く。いつも通りの、対局開始前の穏やかな空気の中、両対局者が現れます。

 本田五段が上座、折田アマが下座に着きます。

 折田アマは記録係に脇息(きょうそく)を片付けてくれるようにお願いしました。将棋会館には対局者のために、対局中にもたれかかる脇息が備品として用意されています。折田アマは今回の棋士編入試験のため、自身に合う「マイ脇息」を事前に用意して、対局に臨んでいます。

「中村です」

 中村九段が折田アマにそうあいさつをしました。元タイトルホルダーでもある中村九段のことを折田アマが知らないわけがありません。

「なんかわかんないことがあったら言ってください」

 空気が張り詰めていく中、中村九段は折田アマにやさしく語りかけました。

 10時。

「それでは定刻となりましたので、棋士編入試験第4局、折田翔吾さんの先手番でお願いします」

 中村九段がそう言って、両者は一礼。対局が開始されました。

 折田アマは初手に飛車先の歩を突きます。続いて本田五段も同様に、飛車先の歩を伸ばしました。

 両者が一手ずつ指したのを見て、報道陣は退出。その間、本田五段は眼鏡をはずして拭いていました。対局者用にごみ箱が用意されていなかったようで、本田五段は記録係に頼んで、それを取りに行ってもらいました。そしてティッシュを出して、鼻をかみます。

 戦型は両者ともに得意な「相掛かり」に進みました。

 折田さんは第2局の出口若武四段戦で、やはり先手番でこの戦型を持っています。そしてその際には敗れています。

 一方、後手番の本田五段。棋王戦第2局ではこの戦型の先手番で渡辺明棋王(三冠)に勝利。さらに王位戦リーグでは逆転負けを喫したものの、やはり先手番で豊島将之竜王・名人を相手に途中まで優位に進めていました。この戦型の勘所は十二分に把握しているのは間違いのないところでしょう。

 両者ともに飛車先の歩を交換して持ち駒とし、歩を1枚、駒台に乗せています。

 開始から20分で23手ほど進みました。飛車の位置は、本田五段はオーソドックスな四段目。折田アマは積極的な五段目です。

 持ち時間は3時間。終局は夕方頃の見通しです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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