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「アゲアゲ将棋」折田翔吾さん(30)2月25日に棋士編入試験第4局 相手は鬼強の本田奎五段(22)

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 2月25日。東京・将棋会館において棋士編入試験五番勝負▲折田翔吾アマ(30歳)-△本田奎五段(22歳)戦がおこなわれます。

 折田さんはプロ棋士の養成機関である奨励会は年齢制限のために退会となりました。その後、将棋YouTuber界のスターとなり「アゲアゲさん」の名で親しまれています。アマ強豪としても活躍し、公式戦では棋士に対して圧倒的な成績を収めました。そして棋士編入試験の資格を得ています。

 昨年11月に始まった棋士編入五番勝負は現在まで2勝1敗です。

 残る2戦のうちで、あと1勝を挙げれば棋士となれるアゲアゲさん。対戦相手の2人は、言うまでもなく強敵です。

 第4戦の対局相手は本田奎五段です。編入試験五番勝負の対戦相手は、受験を申請した時点で、直近に四段となった若手棋士5人が務めます。

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 対戦相手に四段ではなく、五段が名を連ねているとはどういうわけか。

 編入試験の対戦表が作られた際の表記では、本田五段はまだ四段でした。2018年10月に棋士となった本田四段は、棋王戦では予選から勝ち上がり、2019年12月、一気に挑戦権まで獲得しました。参加1期目でのタイトル挑戦権獲得は史上初めてのことです。そして規定により、五段に昇段しています。

 先日おこなわれた棋王戦五番勝負第2局では、現将棋界のトップクラスである渡辺明棋王(35歳、三冠)に勝利を挙げました。

 あと2勝して棋王位を獲得となれば、四段昇段後、史上最短期間でのタイトル奪取記録となります。

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 これだけ強い若手棋士と当たるのもまた、めぐり合わせということになるでしょう。

「アゲアゲさんがいくら強くとも、タイトルに挑戦するような若手が相手では、さすがに分が悪いのではないか」

 おそらくは、そう思っている人が多い状況です。筆者が個人的におこなったアンケートでも、本田五段乗りの人が多く見られました。

 しかし、将棋は一局ごとが勝負です。どれだけ相手が強くとも、一番一番の結果は、どうなるかわかりません。また逆に考えれば、これだけの強敵を相手に勝利を収めれば、折田さんの棋士としての前途は大いに開けることになるかもしれません。

 本田五段と折田アマは三段リーグで2回(2015年前期、後期)対戦し、両者1勝1敗です。

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 折田さんが三段リーグ在籍時に昇級していった棋士は次の通りです。

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 2014年、今泉健司アマ(現四段)が編入試験五番勝負で対戦したのは、ここに記されている若手棋士の中からの5人でした。いま振り返ってみても、強敵ばかりです。2勝1敗の後、4局目で対戦したのは石井健太郎四段(現五段)でした。

相手の石井健太郎四段は今回の試験官5人の中でいちばん強いと評判だった。勝率も高い。

出典:今泉健司『介護士からプロ棋士へ 大器じゃないけど、晩成しました』

 今泉さんはそう振り返っています。石井健太郎五段は現在、C級1組で昇級争いに加わっているところです。その強敵を相手に、今泉さんは勝利を収めました。

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 その時と今回、4局目を迎える時点での状況は似ているかもしれません。

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 折田さんがもし第4局に敗れた場合には、第5局で池永天志四段(26歳)と対戦します。日程は先日決まって、3月9日となりました。

 話題の尽きない将棋界。3月7日は第66回三段リーグ最終日です。そこでは西山朋佳三段(24歳)が初の女性棋士となれるかどうか。そちらもまた、社会的な注目が集まることでしょう。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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