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最注目局は残留を争う木村一基王位(46)ー羽生善治九段(49)戦 1月29日A級順位戦8回戦一斉対局

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 1月29日。東京、大阪の将棋会館でA級順位戦8回戦一斉対局がおこなわれます。

 対戦カードは以下の通りです。

▲渡辺 明三冠(7勝0敗)-△糸谷哲郎八段(3勝4敗)

▲広瀬章人八段(4勝3敗)-△佐藤天彦九段(3勝4敗)

▲羽生善治九段(3勝4敗)-△木村一基王位(3勝4敗)

△佐藤康光九段(4勝3敗)-▲稲葉 陽八段(3勝4敗)

△三浦弘行九段(4勝3敗)-▲久保利明九段(1勝6敗)

 順位戦の制度では、A級でトップ成績をあげた棋士が七番勝負で名人に挑戦します。豊島将之名人への挑戦権は、今期A級でここまで7連勝し、成績1位が確定した渡辺明三冠が獲得しました。

 渡辺三冠は史上4人目のA級全勝の記録もかかっています。

 前期B級1組から継続中の順位戦連勝記録は19。これをどこまで伸ばせるのかも注目です。

 一方で、A級の地位を確保する残留争いは熾烈です。名人挑戦の渡辺三冠をのぞいて、現在までに残留が確定しているのは、暫定2位の広瀬章人八段しかいません。あとは暫定3位の佐藤康光九段以下、全員に降級の可能性があります。

 佐藤九段が降級する可能性は、数字上の確率ではごくわずかしかありません。その例を作ってみましょう。

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 なるほど、こうなれば確かに佐藤九段は降級となります。もちろん、全体としてこうなる確率はとても低い。しかしその星一つ一つを見てみれば、どうでしょうか。別にそうなってもおかしくはない、とも感じられます。

 最後の佐藤康光九段と羽生九段の星を入れ替えてみましょう。

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 これは羽生九段の降級パターンです。羽生九段が降級するなんて考えられない気もしますが、連敗してしまうと、確率的にはそうなる可能性もあるということです。

 8回戦の5局とも、当然ながらどれも好カードです。

 その中で最注目局を選ぶとしたら3勝4敗決戦の▲羽生九段-△木村王位戦でしょうか。両者ともに棋界屈指の人気棋士です。この一戦に関しては、どちらを応援していいのか、迷っている人が多いのではないかと思われます。

 数々の名勝負を繰り広げてきた両者のこれまでの対戦成績は、羽生九段32勝、木村王位17勝。羽生九段が大きく勝ち越していますが、最近は木村王位が3連勝しています。直近の一局は王位戦挑戦者決定戦で、ここでの勝利が木村王位誕生へとつながりました。

 現在1勝6敗で星2つ離され、暫定10位の久保九段は大変に苦しい状況です。しかし連勝すれば助かる可能性は残されています。

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 この星取りもまた、もしかしたらあるかもしれません。

 なおB級1組からA級へと昇級する2人のうち、1人は菅井竜也新八段で決まっています。

 来期のA級は、果たしてどのようなメンバーで構成されることになるのでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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