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岡山の昇竜・菅井竜也七段(27)順位戦A級昇級、八段昇段決定

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 1月23日。大阪・関西将棋会館においてB級1組11回戦▲斎藤慎太郎七段(26歳)-△菅井竜也七段(27歳)戦がおこなわれました。10時に始まった対局は23時26分に終局。結果は144手で菅井七段の勝ちとなりました。

 菅井七段はこれで10勝1敗。文句なしの好成績で初のA級昇級を決めました。そして規定により、八段へと昇段します。

 斎藤七段は7勝3敗。敗れはしましたが、依然2位の位置にあり、自力昇級の権利を残しています。

若手実力者菅井七段、満を持してA級昇級

 菅井七段が三間飛車に構え、あとは両者ともに穴熊に組む「相穴熊」。早見え早指しで鳴らす菅井七段も慎重に時間を使って、比較的スローペースの進行となりました。中盤で歩がぶつかって戦いが始まる頃には、両者ともにちょうど、持ち時間6時間のほぼ半分を消費していました。

 斎藤七段がと金を作って菅井玉の逆サイドの香を取ったのに対して、菅井七段は飛角銀で斎藤七段の本陣をねらいます。斎藤七段は取った香を攻防に利く位置に打ち、菅井七段の攻めを迎え撃とうとします。このあたりまで斎藤七段が多く時間を使い、残り時間は大差となりました。

 菅井七段はあまり時間を使わず決断よく、飛車を切り捨てて先に迫る形を作ります。斎藤七段の穴熊は見る間にはがされていきました。ただし形勢は微妙に均衡が保たれたまま、終盤戦へと入ります。

 玉周辺の守りが薄くなった斎藤七段は、少しでも受け間違えるとそのまま致命傷となります。そして残り時間も切迫。一方で菅井陣の穴熊は健在で、時間もたくさん残されています。形勢は不明でも、実戦的には菅井七段が勝ちやすい流れになったのかもしれません。

 斎藤七段は、辛抱強く指し続けました。しかし菅井七段の攻めは終始的確でした。そして残り時間に余裕がありながら、終盤で決断よく指し進めるのも、いつもの菅井流です。菅井七段の穴熊は最後まで残る一方、斎藤七段の玉は受けなしに。斎藤七段が「負けました」と告げ、熱戦に幕が降りました。

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 菅井七段は岡山県出身で、1992年(平成4年)生まれ。平成生まれとしては豊島将之現名人(29歳)に続いて、2人目のA級棋士となります。振り飛車党の菅井新八段の活躍によって、振り飛車ファンの気勢も上がることでしょう。

 他の上位陣は軒並み勝利を収めました。残る昇級枠1つをめぐっての2位争いは熾烈をきわめそうです。

 残留争いでは、降級となる2人のうち、1人は谷川浩司九段(57歳)と決まりました。

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将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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