Yahoo!ニュース

1回戦で▲藤井聡太七段(17)-△羽生善治九段(49)戦! 第61期王位戦リーグの組分け、対戦順決定

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 将棋の八大タイトル戦の1つである王位戦は、挑戦者を決める過程でリーグ戦がおこなわれます。前期七番勝負敗者1人、前期挑戦者決定戦敗者1人、その他リーグ残留2人、予選を勝ち上がってきた8人、合わせて12人が紅白6人ずつの組に分かれます。そして両組でまず優勝者を決め、最後に両組優勝者同士が挑戦者決定戦をおこないます。

 1月17日、抽選によって決められた新しいリーグ表が発表されました。

画像

 紅組の筆頭は、前王位の豊島将之竜王・名人です。前期七番勝負では木村一基挑戦者との歴史に残る名勝負の末、3勝4敗で王位を明け渡しました。

 今期も当然挑戦権争いの本命でしょう。

 そして叡王、王座を併せ持つ永瀬二冠。前期は白組に属し、4勝1敗で羽生善治九段と並びプレーオフを戦いました。そこで羽生九段に敗れています。羽生九段にとっては、通算勝数が史上1位となる記念の対局でもありました。

 王位戦はこれまで、若手棋士の飛躍の場となってきました。

 佐々木大地五段は3年連続で予選を勝ち上がっての王位戦リーグ入り。決勝では棋界制覇を目指す勢いの渡辺明三冠に勝っています。

 佐々木五段は棋王戦では、挑戦者決定戦にまで進出しています。

 そして棋王戦挑決で戦った本田奎五段も同じ組に入ることになりました。本田五段は2月に開幕する棋王戦五番勝負で渡辺明棋王に挑戦します。

 以上4人は二十代の棋士でした。

 リーグ12人のうち最年長は佐藤秀司七段(52歳)。今期予選では決勝で、丸山忠久九段に終盤で競り勝って勝利を収めました。今期叡王戦では七段予選を勝ち抜いて本戦に進出し、ベテラン健在ぶりを示しています。

 新年のニコニコ生放送の番組で、鈴木大介九段(45歳)は次のように発言していました。

鈴木「何かの記事でナメちゃん(行方尚史九段)がね、『木村の次は俺だ』って書いてあったから(笑)。他にいるだろうと思って(笑)」

 行方九段は木村王位と同年齢の1973年生まれ。鈴木九段は1歳下で、1974年生まれです。46歳の木村現王位は前年、史上最年長での初タイトル獲得という偉業を達成しました。木村王位は6月、鈴木九段は7月の生まれ。もし今期、鈴木九段が挑戦者となり木村王位の最年長記録更新に挑めば、それはまた大変な盛り上がりを見せるでしょう。

 次は白組です。

画像

 筆頭は、前期の挑戦者決定戦で木村一基九段(後に王位)に敗れた羽生善治九段です。王位獲得期数は史上最多の18期と、桁外れの実績を残しています。

 現代棋界のレジェンド羽生九段も、2019年度はタイトル戦の番勝負に出ることがありませんでした。

 2020年はタイトル挑戦、タイトル通算100期獲得、無冠返上の期待がかかります。

 その羽生九段と初戦で対戦するのが藤井聡太七段(17歳)とは、なんとも劇的です。

 藤井七段は王位戦史上最年少でのリーグ入り。もし挑戦権を獲得すれば当然ながら、それも王位戦史上最年少記録となります。木村一基王位-藤井聡太七段の七番勝負が実現すれば、記録的にも、また歴史的にも意義深い対戦となるでしょう。

 藤井七段は今年度の王将戦リーグでは、惜しくも挑戦権を逃しました。

 王将戦リーグの羽生九段-藤井七段戦は、藤井七段の勝ちでした。今期王位戦リーグでは、どうなるでしょうか。王位戦リーグは5局と奇数のため、先手、後手の回数は同じにはなりません。藤井七段は先手番2局と少ないですが、羽生戦では先手を握っています。

 2017年、羽生王位(当時)に挑戦し、4勝1敗で王位を獲得したのが、菅井竜也七段です。菅井七段は平成生まれとして初のタイトル保持者となりました。今期B級1組順位戦では現在トップの成績で、初のA級昇級まであと一歩と迫っています。

 紅組には三十代の棋士は1人もいない代わりに、白組は稲葉陽八段、阿部健治郎七段、上村亘五段の3人が三十代です。

 稲葉八段は関西所属の強豪。前期は紅組に所属し、木村九段に敗れるなど1勝4敗で陥落となりましたが、今期もリーグ入り。今期予選では準決勝で師匠の井上慶太九段、決勝で山崎隆之八段を降しています。順位戦は現在A級。過去には名人挑戦権を獲得し、七番勝負で佐藤天彦名人(当時)に挑戦したこともあります。

 阿部七段は西村一義九段門下。予選準決勝では兄弟子の三浦弘行九段に勝っています。また決勝では前竜王の広瀬章人八段に勝ってのリーグ入りとなりました。過去には新人王戦優勝などの実績があり、また竜王戦では最上位の1組に所属しています。

 上村亘五段は、昨年は予選決勝で敗れ、今年はその雪辱を果たしました。

 上村五段は2017年、銀河戦で藤井聡太四段(当時)と対戦し、88手で会心の勝利を収めています。

 多士済々の王位戦リーグメンバー。熱い戦いが繰り広げられることは間違いないでしょう。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

松本博文の最近の記事