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勢い止まらぬ藤井聡太七段(17)C級1組8連勝で昇級まであと1勝! 小林裕士七段(43)を降す

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 1月16日。大阪・関西将棋会館においてC級1組8回戦▲藤井聡太七段(17歳)-△小林裕士七段(43歳)戦がおこなわれました。10時に始まった対局は19時4分に終局。結果は77手で藤井七段の勝ちとなりました。

 藤井七段はこれで8連勝。残り2戦(対局相手は高野秀行六段、真田圭一八段)のうち1勝すれば無条件で昇級決定となります。また7勝1敗の佐々木勇気七段、及川拓馬六段、石井健太郎五段の3人のうち2人が、残り2戦で2敗目を喫した場合でも昇級となります。

 小林七段は2勝6敗となりました。

藤井七段、華麗な桂跳ねで決める

 後手番の小林七段が一手損角換わりが採用したのは、「昔からけっこう好きな戦法」であることに加え、藤井七段が桂馬が使うのが得意なので、それを封じる意図があったようです。

 藤井七段が早繰り銀で先攻したのに対して、小林七段はカウンターを仕掛けます。藤井七段も堂々と応じ、三十数手の段階で、早くも勝負どころとなりました。その手順中に小林七段に誤算があったようで、形勢は大きく藤井七段に傾きます。

 藤井七段が優勢な局面で、藤井七段側には人間には指しづらい桂打ちの好手がありました。藤井七段は1時間近く考えた末に、筋のいい自然な手を指しました。

 そこから小林七段が地力を発揮し、じりっと追い上げていきます。「難しくしてまったか」と感じていたと、藤井七段は局後に語っています。

 いやな流れの中で、藤井七段は踏みとどまりました。67手目、取れる駒を取らずに、自陣にじっと▲5七角と打つ手が受けの好手でした。

藤井「▲5七角を発見して指しやすいのかなと」

小林「▲5七角とか全く見えてなかった。本当はそこで投げないとダメなんですけど。僕にはなかなか見えない手」

 この角が攻防にはたらきました。自陣に打った桂が華麗に跳躍し、王手飛車取りがかかります。桂使いの名手である藤井七段らしい決め手となりました。ただし藤井七段はストレートに飛車を取らず、手順に後手の要所の駒を取っていって、勝ちをはっきりさせました。

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 これで今期C級1組順位戦で8連勝をマークした藤井七段。前期も同様に8連勝と走りましたが、9回戦で敗れ、昇級を逸することになりました。

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 今期はここまで盤石の雰囲気があります。とはいえ、藤井七段に浮かれた様子はまったく見られません。

「残り2局も気を引き締めて指したいと思います」

「これまでと変わらない気持ちで指せればなと」

 といつもどおりの冷静な局後のコメントでした。今年の抱負については、次のように語っていました。

「今年はさらに実力をつけてタイトルに挑戦できるようにがんばっていきたいなと思っています」

 ファンからも八大タイトル戦への登場が強く望まれている藤井七段。それとともに、まずはこの後ほどなく、1月19日(日)に3連覇がかかる朝日杯の対局を控えています。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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