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羽生善治九段、2019年度は33年ぶりに棋戦優勝、タイトル獲得ともになし 朝日杯で屋敷伸之九段に敗退

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

12月19日。東京・シャトーアメーバにて朝日杯二次予選2回戦(決勝)▲屋敷伸之九段(47歳)-△羽生善治九段(49歳)戦がおこなわれました。棋譜はこちらの公式サイトをご覧ください。

 19時に始まった対局は20時51分に終局。結果は107手で屋敷九段の勝ちとなりました。

 二次予選Eブロックを勝ち抜いた屋敷九段は、これで本戦トーナメント進出を果たしました。

 一方で羽生九段は今年度の一般棋戦(銀河戦、NHK杯、JTプロ公式戦、朝日杯)はいずれも敗退となりました。羽生九段に棋戦優勝がなく、またタイトル獲得もなかったのは、実質的なデビュー年度となった1986年度以来、33年ぶりとなります。

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早熟の天才同士の対戦

 羽生九段は1985年12月18日、15歳で四段に昇段しました。

 年度を通じて戦った、実質的なデビュー年度は1986年度。そしていきなり、40勝14敗で勝率1位となるなど、大型新人らしい、圧倒的な勝ち方を見せました。ただし、棋戦優勝はありませんでした。

 翌1987年度は若手棋士参加の若獅子戦、全棋士参加の天王戦で優勝。以来、2018年度まで、棋戦優勝、あるいはタイトル獲得がなかった年度はないという、信じられないような記録を更新し続けてきました。

 一方の屋敷九段は1988年10月1日、16歳で四段に昇段。17歳でタイトル挑戦、18歳でタイトル獲得(いずれも棋聖戦)という最年少記録は、いまだに破られていません。

 羽生九段、屋敷九段ともに、将棋史を代表する早熟の天才と言えるでしょう。

 両者は過去に30局対戦して、羽生九段25勝、屋敷九段5勝。1998年から2014年までの間には、羽生九段が16連勝と圧倒していました。ただしそれ以後の直近7局を見ると、羽生九段4勝、屋敷九段3勝と、屋敷九段が巻き返している感じもあります。

 今年9月におこなわれた叡王戦九段予選では、羽生九段が勝ちました。

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羽生善治九段(48)叡王戦九段予選で屋敷伸之九段(47)に勝利

 一方でNHK杯では屋敷九段が勝っています。

 振り駒の結果、本局の先手は屋敷九段となりました。

 後手番の羽生九段は四間飛車の作戦を採用しました。対して居飛車の屋敷九段は、自玉の囲いを左美濃→銀冠→穴熊とスイッチしています。互いの駒組が終わった時点で、玉の堅さを重視すれば、屋敷九段が実戦的に勝ちやすい形となったようです。

 羽生九段は玉頭から動いて、戦いが始まりました。形勢ほぼ互角のまま推移していきますが、羽生九段は玉の上部での戦いが続いて、苦労が多い展開となったようです。

 屋敷九段は自陣の堅さ、遠さをいかして、ハードパンチを浴びせていきます。居飛車穴熊の理想的なパターンを実現させ、攻めがつながったところで勝勢となりました。

 最後、羽生九段は自玉の受けが難しくなったところで、駒を投じました。

 屋敷九段は本戦トーナメントに進出。1回戦で千田翔太七段と対戦します。

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 一方の羽生九段にとって2019年度は、1986年度以来、33年ぶりに棋戦優勝、タイトル獲得のいずれもないという年度になりました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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