竜王戦挑決三番勝負第2局 木村一基九段(46)が豊島将之名人(29)に逆転勝ち

(記事中の写真撮影・画像作成:筆者)

 8月23日。東京・将棋会館において第32期竜王戦挑戦者決定戦三番勝負第2局▲豊島将之名人(29歳)-△木村一基九段(46歳)戦がおこなわれました。終局時刻は21時50分。結果は88手で、木村九段が逆転勝ちを収めました。

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 豊島名人1勝の後、木村九段が1勝を返して、竜王挑戦権の行方は第3局へと持ち越されました。

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木村九段、大逆転勝利で望みをつなぐ

【前記事】竜王戦挑決第2局▲豊島将之名人(29)-△木村一基九段(46)戦はじまる

https://news.yahoo.co.jp/byline/matsumotohirofumi/20190823-00139517/

 大激戦となった王位戦七番勝負第4局の記憶もまだ新しいところですが、移動日の中一日を置いて、豊島名人・王位、木村九段のデッドヒートは続いていきます。

 本局、豊島名人先手で相掛かりの立ち上がり。豊島名人は時間をほとんど使わずに指し進めていきます。そしてわずかに3分を使っただけ使った時点で、局面はすでに大きく動いていました。

 その先、難しい変化が待ち受けるのはわかっています。そうした中ですぐに踏み込んだということは、過密日程の中であっても、事前の研究が十二分であることをうかがわせるものでした。

 形勢に差がついているわけではありませんが、木村九段は午前中から、時おり苦悶の表情を浮かべているように見えました。そして意を決して、豊島名人の受けを力強く迎え撃つ方針を立てます。

 木村九段の玉は王手をかわしながら、歩越しの四段目に泳ぎ出ました。いかにも危ない格好。受けの達人である木村九段が持っているのでどうか、というところです。

「玉が不安定で勝ちにくくしたと思った。ちょっと、よくわからないです」

 木村九段は局後にそう語っていました。

 対して、大事な飛車を切り捨てる手もノータイムで進める豊島名人。持ち時間5時間のうち、消費時間は豊島4分、木村2時間50分と大差がつきました。

 おそらくは研究をはずれたところで、時間を使って考え始める豊島名人。実に合理的で、これがいつものスタイルともいえます。

 木村九段は露出した中段玉をそのまま動かさず、豊島玉への攻めを始めます。判断の難しいところではありましたが、どうもそこから次第に、形勢は豊島名人へと傾いていったようです。

「形勢は8対2、あるいは9対1で豊島名人よし」

 解説の棋士からはそんな声も聞かれていました。

 ほどなく、豊島名人の勝ちで終わるのか。そう思われたところから、ドラマが起こります。木村九段が飛車を王手したのに対して、豊島名人は角を打って合駒としました。豊島名人には珍しいほどの高い駒音でした。しかし、それが最善だったかどうか。

 先日の王位戦第4局は285手で木村九段の勝ちとなりました。内容的には木村九段の完勝のようにも見えますが、一方で、豊島王位・名人に勝つことはいかに大変なことかを示されたような一局でもありました。

 そしてまた、木村九段を相手に勝ち切ることもまた大変だということでしょう。2001年の竜王戦挑戦者決定戦第1局。苦しい戦いをあきらめずに指し進め、古今無双の羽生善治四冠(当時)に1手詰の頓死をくらわせたのは、木村一基五段(当時)でした。

 本局は次第にまぎれていきます。

 木村九段の四段目の玉は、追われるままに二段目にまで落ちました。そして形勢は完全に不明となったようです。

「難しかったと思うんですけれど、ちょっと手順を間違えてしまったのかな、と」

 豊島名人は局後にそう語っていました。苦しい中で最善を尽くした木村九段の指し回しが功を奏したということでしょう。

 流れは木村九段に傾いていきます。勢いよく2枚目の飛車が最前線に飛び出す頃には、木村九段自身も形勢好転を感じていたようです。

 中盤であれだけ大差がついた時間が逆転する頃には、形勢もついに大逆転となりました。

 最後は木村九段が豊島名人の玉を即詰みに打ち取り、88手で終局。王位戦第4局の285手とは対照的に、比較的短手数で終わりましたが、その分、濃密な内容となったようです。

 豊島名人1勝の後、木村九段が1勝を返して、竜王挑戦権を争う三番勝負は最終第3局へともつれこみました。悲願の初タイトル獲得を目指す木村九段。王位、竜王と、二冠の夢をもつなぎました。

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 過去の対戦成績は7勝7敗。王位戦は2勝2敗。竜王戦挑決は1勝1敗。成績は完全に互角のまま、両者のデッドヒートは続いていきます。

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