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藤井聡太七段(17)が金井恒太六段(33)に勝利 将棋順位戦C級1組3回戦

松本博文将棋ライター
(記事中の写真撮影・画像作成:筆者)

 8月6日。C級1組3回戦▲金井恒太六段(33歳)-△藤井聡太七段(17歳)戦がおこなわれました。結果は23時48分、92手で藤井七段の勝ちとなりました。

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 勝った藤井七段はこれで3連勝。敗れた金井六段は3連敗となりました。

藤井七段、熱戦を制す

 金井恒太六段は趣味がピアノ。その端正な顔立ちから「貴公子」とも呼ばれます。2016年から17年にかけておこなわれた第3期叡王戦では、最後で高見泰地現七段に敗れたものの、決勝七番勝負まで勝ち上がる活躍を見せました。

 また今年2019年2月、金井六段は出身地の埼玉県上尾市で「キラリ☆あげおPR大使」にも任命されています。

 両者は2017年、竜王戦6組ランキング戦準決勝で対戦。その時は藤井七段が勝っています。振り返れば、デビュー以来無敗で29連勝というとてつもない記録の中間地点となる、15連勝目のことでした。

 今期C級1組、2回戦までを終えた時点で、藤井七段は村田顕弘六段と堀口一史座七段に勝って2連勝。一方の金井六段は、高橋道雄九段と佐藤和俊六段に敗れて2連敗となっています。

 順位戦は全員が先手5局、後手5局となるように、あらかじめ全10局の先後が決まっています。本局では先手は金井六段。金井六段が事前に用意した作戦で、互いに飛車先の歩を伸ばし合う、相掛かり(あいがかり)の立ち上がりとなりました。

 後手番の藤井七段は、そこからあえて四段目の歩(横歩)を取らせる作戦に出ます。金井六段も気合よく応じました。

「序盤から一手一手、非常に難しい将棋」と局後に藤井七段が語った通り、一手のミスが勝敗に直結するような展開となりました。

 藤井七段は持ち時間6時間のうち1時間32分を使って、相手陣三段目に歩を打ち込みます。対して金井六段は一段目、自陣の底にじっと歩を受けました。

 夕食休憩を迎えた時点で、進んだ手数はわずかに28手。順位戦らしい力の入った、スローペースの展開となりました。

 夕食休憩後、局面は大きく動きます。互いの駒台に、大駒の飛角が乗った後、藤井七段がうまく指し回し、一時は大差がついたかのように思われました。

 しかし、金井六段も実力者。最善を尽くしているうちに、藤井七段がどこかで誤ったのか、混戦模様となりました。

「本譜(ほんぷ、実戦の進行)ははっきり間違えてしまって、その後は少し自信がない戦い」と局後に藤井七段。形勢がもつれた後、藤井七段は銀、金井六段は金を自陣に打ちつけ、互いに容易に負けない態勢を作ろうとします。

 一手60秒未満で指さなければならない一分将棋が続く終盤戦。

「チャンスが出た局面があったかもしれませんね」と局後に金井六段。難解な進行の中、いつしか再び、藤井七段が優位に立っていました。

 最後は金井六段の玉に受けがなくなり、最後は藤井七段の玉に詰むかどうか。

 藤井七段の側は、受け方を間違えれば、逆転で負けとなります。香打ちの王手に対して、素直に歩を三段目に受けると、藤井玉は詰んでしまいます。しかし、藤井七段は読み切っていました。五段目、四段目に歩を打ち捨てる「中合」(ちゅうあい)の手筋があり、これできわどく逃れていました。

 藤井七段の玉が詰まないことがはっきりしたところで、金井六段は「負けました」とはっきりと告げ、投了の意思を示しました。

 終了時刻は23時48分。総手数は92手でした。

 勝った藤井七段はこれで3連勝。敗れた金井六段は3連敗となりました。

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 「順位戦は10局指してそれが一つの結果になるので、一局一局を大事に戦っていかないといけないな、という気持ちは持っています」

 局後にそう述べた藤井七段。次回4回戦では、タイトル5期、A級13期などの実績を誇るベテランの高橋道雄九段(59歳)と対戦します。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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