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藤井聡太七段、C級1組順位戦1回戦で勝利

松本博文将棋ライター
6月、千駄ヶ谷・鳩森神社に咲く紫陽花(記事中の写真撮影・画像作成:筆者)

 2019年6月18日、関西将棋会館でおこなわれた藤井聡太七段(16歳)-村田顕弘六段(32歳)戦は22時24分、118手で藤井七段の勝ちとなりました。

 戦形は村田六段が先手で、互いに飛車先の歩を伸ばし合う相掛かりに。これは村田六段用意の作戦でした。藤井七段は5月に都成竜馬五段、6月に佐々木大地五段を相手に、この戦形で敗れています。

 中盤では藤井七段が巧みに揺さぶりをかけ、村田陣の形を乱します。そして角を切って桂を入手し、その桂を歩の頭に打ち込むという、大技を見せました。驚くべきことに、それで藤井七段優勢です。

 このまま藤井快勝か。そう思われるような展開です。ただし藤井七段からは局後、「自玉の堅さを過大評価していた」という反省の言葉がありました。大きな技をかけた後には当然反動があるものです。村田六段がうまく指し進め、途中はきわどい終盤戦になったかのように見えました。

 しかし、そこは図抜けた終盤力を持つ藤井七段。解説陣も含め、多くの観戦者がその最終的な意図がよくわからないうちに、藤井七段の指し手はとどこおりなく進んでいきます。

 村田六段の玉に詰みはありません。しかし、村田玉が追われるうちに、藤井七段の玉を包囲している馬(成り角)が消えてしまう。その後で角も消えてしまう。藤井玉を重く包囲していた大駒2枚が、煙のように消え去りました。途中はきわどいながらも、手順を並べられてみれば、確かに最後は明解に、藤井七段の勝ちです。改めて、その終盤力を見せつけられたかのようなエンディングでした。

「一局一局を大切に」

「あまり気負わずに」

 1回戦が終わった後の藤井七段からは、そんな言葉が聞かれました。

 前期、9勝1敗の好成績を挙げながら順位差でB級2組昇級を逃した藤井七段。今期の昇級は成るでしょうか。

 全10回戦の長丁場はまだ、始まったばかりです。次節2回戦は7月2日。元B級1組の堀口一史座七段(44歳)との対戦となります。

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将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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