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里見香奈さん(27)女流王位に復位し女流五冠に復帰

松本博文将棋ライター
(画像撮影・表作成:筆者)

 2019年6月13日。徳島市において、渡部愛女流王位(25歳)に里見香奈女流四冠が挑戦する女流王位戦五番勝負第4局がおこなわれました。

 後手番の里見挑戦者が得意の中飛車の作戦を取ったのに対して、渡部女流王位は中央に銀を2枚繰り出す作戦。中盤で駒がぶつかってからは、里見挑戦者が少しずつリードを奪います。終盤では大きな駒得を果たし、最後は盤石の態勢となりました。

 16時47分、結果は96手で里見挑戦者の勝ち。渡部愛さんに昨年の借りを返して、わずか1年で女流王位に復位しました。また通算5期目の女流王位獲得となり、「クイーン王位」の資格も得ています。

女流棋界第一人者の今後

 2019年2月。女流棋界では新たに7番目のタイトル戦として「ヒューリック杯清麗戦」が開始されました。女流タイトル戦の中での序列は1位で、優勝賞金は最も高額な700万円です。

 里見さんは2018年度はじめ、マイナビ女子オープンの挑戦に失敗し、女流王位戦ではタイトルを失いました。しかし、他の四冠はほぼ危なげなく防衛を果たしています。

 マイナビ、女流王位戦、そして清麗戦と順調に勝ち進み、2019年度に入ってからは史上初の女流六冠、さらには女流七冠の可能性も現実味を帯びていました。

 里見さんはマイナビ女子オープン五番勝負では西山朋佳女王(23歳)への挑戦権を得ました。しかし1勝3敗で敗れ、「女流全七冠同時制覇」の夢は、当分持ち越しとなりました。

 しかし今回は女流王位へ復位し、女流五冠に復帰。

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 タイトル通算獲得数は36期となり、清水市代女流六段(50歳)の持つ通算43期の最多記録にまた一つ近づきました。

 清麗戦では、渡部女流王位(当時)を破るなど6勝1敗で予選を通過。本戦(ベスト4)にまで残っています。里見さんによる史上初の女流六冠は達成されるでしょうか。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)、『など。

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