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W杯開幕まで2週間。なでしこジャパンが最終調整へ、快進撃の森保ジャパンに続け

松原渓スポーツジャーナリスト
6日の夕方にW杯壮行会が行われた(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

10日間の直前合宿を終了

 女子ワールドカップ開幕まで2週間。なでしこジャパンは、6月27日から7月6日までの10日間、千葉で合宿に臨んだ。

「キャンプの目的でもあったコンディションを整えて上げていくことができたし、チームとしての細部の積み上げも含めて10日間、予定通りの積み上げができました。選手の表情を見ても、W杯に向かう一体感や、集中の度合いも少しずつ上がっています」

 最終日のトレーニングを終え、池田太監督は充実した表情で語っている。

10日間のキャンプを終えた
10日間のキャンプを終えた

 大会に出場する23人のメンバーが発表されてから2週間。

 国内組は現在オフシーズンだが、海外組はもっと早い段階でオフに入っている選手もいれば、まだシーズン中の選手もいる。今回の合宿ではそうしたコンディションの調整メインに、30度を超える酷暑の中で連日、トレーニングを重ねた。今大会はテレビ中継が決まっていないが、一方で合宿を取材する報道陣は多く、期待の高さも感じられた。

 合宿初日に背番号がチーム内で発表され(公式には未発表)、キャプテンには前回大会に続き、W杯4度目となる熊谷紗希が任命された。

 また、最終日の7月6日には、同じ施設でトレーニングをしていた森保ジャパンのキャプテン、DF吉田麻也から激励の言葉が向けられた。

「国を背負って戦う喜び、覚悟、その大事さも含めて頑張ってくださいと声をかけてもらいました」(池田監督)

池田監督と吉田麻也選手
池田監督と吉田麻也選手

 代表は活動期間が限られるため、海外遠征や短期間の合宿は、親善試合のための調整が多かった。だが、ここから大会までは戦術面も含めてチームの完成度を一気に上げていく。メンバー選考のサバイバルも終わり、チームの一体感は日に日に高まっている。

 1対1の練習では、海外組が強さを見せ、国内組の選手たちも「世界基準」を体感しながら慣れてきたようだ。

「WEリーグでやっているところでは足が出てこないところも(杉田)妃和さんは粘り強くついてきたり、そこに足が届くんだ!という場面があって、違いを感じました」(千葉玲海菜)

「(熊谷)紗希さんや(南)萌華など、世界で戦っているディフェンダーは普段出てこないところで足が出てきたり、予測がすごくいいので。そういう選手を上回るためにもっと頭を使わないといけないし、技術の細かいところを上げていきたいです」(清家貴子)

強度の高い練習も
強度の高い練習も

 池田監督は練習前のミーティングで、その日の練習の流れや狙いを、映像などを使って説明してからピッチに向かう。練習では最終ラインのつなぎからフィニッシュまで、ボールの具体的な動かし方をイメージさせるようなメニューも多く、ゴール前でのコンビネーションも多様なパターンを落とし込んできた。

 もちろん、サッカーは相手あってのものだが、苦しい時に立ち返れる場所を作り、攻守の再現性を地道に高めてきた成果は見られる。練習のルーティンについて、右ウイングバックの主力であるDF清水梨紗も前向きに捉える。

「アレンジは必要ですが、基礎となるものがある方が意思統一しやすいですし、練習前のミーティングでそういうシーンを見て練習に臨む流れができているのはすごくいいと思います」

 7月5日にはなでしこリーグ1部のオルカ鴨川FCとの練習試合を実施。40分×3本のゲームを行い、なでしこジャパンが7-0で快勝した。ただ、セットプレーを与えるシーンや、ボールを保持する時間の長さに反して、中央を固めた相手に対して効果的な縦パスが入らない場面などもあり、課題も挙がった。

「コンビネーションのタイミングと距離感、選手のアタッキングサードでスイッチを共有することや、クロスの時にどこに入っていくかという細かい調整が必要です。大会に入ったらワンチャンスで決め切る力が大事になるので、一つひとつプレーの、最後の質を上げていこうという話をしました」(池田監督)

練習前後でこまめなコミュニケーションをとっていた
練習前後でこまめなコミュニケーションをとっていた

 4日目の練習と、練習試合の後にはノックアウトステージを想定したPK戦を行い、本番さらながらの緊張感を演出するような工夫も見られた。昨年1月のW杯アジア予選では中国にPKで敗れた苦い経験もあり、男子の日本代表もカタールW杯では快進撃の末にクロアチアにPKで敗れている。ヨーロッパではプレースキックに関して、決まりやすいルーティンを作るために最新の科学を取り入れているクラブも見られ、PKも単なる「心理戦」ではなくなりつつある。

パナマ戦を戦い、16日にチャーター機で現地入り

 日本がグループステージを戦うニュージーランドは、現在は冬。気温は10度以下になることも多く、試合が行われる夕方から夜にかけてはかなりの寒さが予想される。暑いところに行く際の暑熱対策よりは、寒いところに行く方が慣れるための順化は早いそうだが、ケガやコンディション不良者が出ないかは心配だ。

 4年前のフランス大会では、複数のケガ人が出たことで現地で紅白戦ができなかったり、主力がピッチに立てない苦しい状況にも陥った。

 今大会はその教訓も生かされており、選手ごとの状態や負荷をスタッフ間で毎日共有しながら、ケガの予防にも努めてきたという。また、帯同可能なスタッフの数が前回大会の35人から50人まで拡大されたことも追い風になるだろう。

 FIFAのジャンニ・インファンティーノ会長が今大会で大幅な賞金アップや待遇改善を公言して話題になっているが、実際、その変化も楽しみだ。日本はJFAの計らいにより、チャーター機で現地入りすることが決まっている。

 GK田中桃子は、「これまで海外遠征は経由(地で乗り継ぎを)することが多かったので、そのストレスはだいぶ減ると思います」と喜んだ。

 なでしこジャパンは、今月14日にユアテックスタジアム仙台で行われるMS&ADカップのパナマ戦で最終調整を行う。

 FIFAランク11位の日本に対し、パナマは52位。W杯本大会で対戦する国のスカウティングについては、16日にニュージーランド入りしてからチームに共有されるそうだから、パナマ戦は日本の強みを確認する一戦となりそうだ。

 束の間のオフを挟んでチームは10日に再集合し、パナマ戦を戦った後、そのままニュージーランドのベースキャンプ地へと向かう。

 W杯優勝から12年。昨年のカタールW杯での森保ジャパンに続く快進撃を目指し、再び世界の「女子サッカー強豪国」の仲間入りを果たすべく、なでしこジャパンの挑戦が始まる。

総力戦で世界に挑む
総力戦で世界に挑む

*表記のない写真は筆者撮影

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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