南アフリカとの第2戦は2-0で快勝。2連戦から見えたなでしこジャパンの現在地とは

新ユニフォームで南アフリカに2連勝を飾ったなでしこジャパン(筆者撮影)

【ラスト15分を10人で戦った日本】

 11月10日(日)に北九州スタジアムで行われた南アフリカ女子代表との国際親善試合に2-0で勝利したなでしこジャパンは、翌11日(月)、南アフリカとのトレーニングマッチを非公開で行った。会場は前日と同じ北九州スタジアムで、前日の試合で出場機会がなかった選手を中心に起用され、試合は通常よりも短めの前後半30分×2本で行われた。

 高倉麻子監督は前日の試合から先発メンバー11名全員を変更。

 GK池田咲紀子、4バックは右からDF清家貴子、DF松原有沙、DF南萌華、DF三宅史織。MF猶本光とMF杉田妃和がダブルボランチを組み、右にMF籾木結花、左に増矢理花。2トップをFW小林里歌子とFW植木理子が組む4-4-2のフォーメーションでスタートした。一方、南アフリカも前日の控え組を中心に起用し、先発10名を変更した。

 主導権を握ったのは日本だ。両サイドの籾木と増矢が中央に入って組み立てに関わり、それによって空いたサイドのスペースを、清家と三宅の両サイドバックが使って攻撃に参加。小林と植木の2トップが相手の背後のスペースを狙う動きを繰り返してスペースを生み出し、日本は縦横無尽に攻めた。

 そして、前半10分には早くも先制点が生まれる。籾木のパスを受けた植木のシュートが右ポストの内側を叩いてゴール中央に流れた。ここに詰めていた増矢が、GKと交錯しながらも粘り強く押し込んで先制する。

 さらにその3分後には追加点が生まれる。「ダイナミックな動き出しや、積極的にシュートを狙うことを意識していた」という小林が、猶本とのワンツーから鋭いグラウンダーのシュートをゴール左隅に突き刺した。

 後半は左サイドバックにDF宮川麻都が入り、三宅が右サイドバックにポジションを移して変化を加える。日本が圧倒的にボール支配する中で、ダブルボランチの猶本と杉田も積極的に攻撃に参加。籾木のシュートが枠をかすめ、小林のミドルシュートが左ポストに弾かれるなど、ゴールに迫る場面は多かった。

 しかし、後半14分に植木が出血のためピッチを退くアクシデント。ここで高倉監督は交代を投入せず、日本は残り15分間あまりを10人で戦った。

 これによって小林がワントップの4-4-1となり、守備時はダブルボランチのどちらかが前に出て相手にプレッシャーをかけ、空いたスペースを両サイドが絞って埋めていた。攻めては小林のミドルシュートなどで最後までゴールに迫ったが、追加点は生まれず、2-0で試合を終えた。

南アフリカ女子代表(筆者撮影)
南アフリカ女子代表(筆者撮影)

【複数ポジションでプレーするために必要なものとは?】

 南アフリカは、前日の主力組に比べて攻守に連動性を欠いていた。日本は急造のフォーメーションであることを考えれば手堅い試合運びだったが、チャンスの数を考えればもう2点ぐらいほしいところ。積極的なミドルシュートが光った反面、精度については物足りなさも残った。

 一方で、10人になった後の試合運びを含め、ピッチ内での対応力は着実に上がっている印象だ。

 高倉監督は前日の試合後の会見で、「A(レギュラー)、B(サブ)とはっきりチームを分けて作っているわけではなく、選手たちにはいろんな役割を要求しています。その中で選手が途中から入ったり、ポジションを変わっても大きく崩れることなくプレーできている実感はあります」と、手応えを示していた。

 その言葉を象徴するのが、背番号10を背負う籾木だ。前日の試合では途中出場で攻撃を活性化したが、このトレーニングマッチではフル出場で攻撃のタクトを振るった。籾木は試合中のポジション変更や組み合わせの変化について、「自分がその選手のストロングをどう生かすのか、ウィーク(ポイント)を埋めるために自分のどのストロングを出すのかということを常に意識しながらプレーしています」と話す。

 23枠だったW杯に比べて五輪は18枠と少ないため、一人の選手が複数のポジションをこなせることは連戦を勝ち抜く上で一つの鍵になる。

 そのため、今回の南アフリカとの2試合では、何人かの選手が普段と異なるポジションで起用された。前日の試合ではサイドアタッカーのFW遠藤純が左サイドバックで、左サイドバックの宮川がボランチでプレー。このトレーニングマッチでは、ボランチの松原がセンターバック、センターバックの三宅が左右のサイドバックでプレーした。

 リーグ1部のノジマステラ神奈川相模原(ノジマ)でプレーする松原は身体が強く、空中戦の強さやキック力はリーグでもトップクラスだ。早稲田大学時代はセンターバックでもプレーしていたが、ノジマではボランチにコンバートされ、ルーキーイヤーだった昨年、対人の強さや攻撃面での展開力を存分に発揮してチームをリーグ3位に押し上げた。 

 ただし、代表の中盤は攻守において「ボールを失わない」ことがベースで、特に心臓部のボランチには狭いスペースでの技術や繊細なポジショニングが求められる。どちらかというとダイナミックなプレーが得意な松原にとっては厳しい競争となる。

 一方、パワーや高さのある欧米勢に対してその強さを生かせれば、日本にとっては大きな武器にもなる。松原がセンターバックとしてピッチに立ったのは、フランスW杯を前にした今年3月のイングランドとの親善試合(●0-3)の後半だった。世界ランク4位(当時)の強豪に対し、ボランチとして先発した前半はマークのズレなどから3点を奪われたが、センターバックに移った後半はゴール前で体を張り、無失点に抑えつつ強烈なミドルシュートも見せた。

 そして、今回は約8カ月ぶりのセンターバックでの出場となった。結果的に無失点というノルマを達成し、持ち味のサイドチェンジやロングパスを通す場面もあったが、松原は自身の出来にまったく満足していなかった。

「パスのタイミングとかコースが合わない場面がありましたね。もう少し早く、練習の段階から組む選手の特徴を掴めたらよかったなと、自分の力不足を感じます。その中でもしっかり合わせていかないと、ここ(代表)では残っていけませんから」

 この試合ではスピードと独特の間合いを持つ南アフリカの特徴を警戒するあまり、「ラインを下げるのが早かった」と反省。前線から最終ラインまで、すべてのポジションにつなぐ力と緻密なラインコントロールに対応する力が求められる。

 とはいえ、ボランチとセンターバックの双方で、各ポジションのスペシャリストと組んでプレーすることにより、松原がプレーの幅を広げているのは間違いない。

「センターバックの方が自分の長所は出しやすいのかなと思います」と、複数ポジションでのプレーに前向きにチャレンジしている松原の今後に期待したい。

【ビルドアップを支えるGK】

 この試合は観客がいなかったこともあり、選手同士の声もよく聞こえてきたが、中でもピッチ全体に響き渡るGK池田のコーチングは印象的だった。

 ラインの押し上げや、「誰をボールにいかせるか」という声に加えて、最終ラインがボールを持った時に前線の空いているスペースを素早く指摘するなど、攻撃面のコーチングも多い。

「後ろのつなぎはシンプルにして、できるだけ前で時間を使えた方がいいと思うので、前線に余裕がある時は(ロング)ボールを飛ばす方がいいとか、パススピードの強弱などもコーチングするようにしています。自分が前に飛ばせると思ったら、ボールを引き込むこともあります。そういう組み立ては楽しいし、好きですね」

 現在、なでしこジャパンの正守護神はGK山下杏也加だが、常に準備を怠らず、キーパー練習の雰囲気を引き締める池田の存在感も大きい。山下は今年リーグ5連覇を達成したベレーザで、持ち前のシュートストップに加えて、ビルドアップ能力の目覚ましい成長を見せている。そして、池田は今季そのベレーザと最後まで優勝争いを繰り広げた浦和レッズレディース(浦和)のゴールを守ってきた。

 今季の浦和はボールをつなぐことを重視。元々足下の技術はフィールドプレーヤー並に高い池田だが、大きく進化したのはポジショニングだろう。浦和のハイラインに合わせて、池田のポジション取りもかなり高くなった。

「自チーム(浦和)では、センターバックやその前の選手がチャレンジしやすいような声かけをしています。あんなに高い位置に入ることは今までなかったので、自分とラインの距離感を以前よりも強く意識するようになりましたし、裏へのボールに対しては、経験を重ねる中で判断のミスが減ったと思います。予測できれば、スタートポジションが少しずれていても無理が利くようになりました」

 コーチングでは、味方を落ち着かせる声も増えたという。11人目のフィールドプレーヤーとして、山下の成長に刺激を受けながら、ピッチに立てない悔しさを忘れることなく、池田も山下に刺激を与え続ける。池田の目には、W杯後、10月のカナダ戦(○4-0)と合わせて2連勝と好調な今のチーム状況はどう映っているのか。

「チームとしては、まずゼロ(無失点)で抑えるという守備のベースができてきた感覚があります。攻撃は本当にいい選手が多いので、チームとしての狙いを持ちながら、それが個人のアイデアとミックスされて、いい雰囲気の中で結果も伴ってきているなと思います」

 池田はいつもの穏やかな表情でそう語った。

左から浅野菜摘(初招集)、山下杏也加、池田咲紀子(筆者撮影)
左から浅野菜摘(初招集)、山下杏也加、池田咲紀子(筆者撮影)

 今回の南アフリカとの2連戦では、競争の中でチーム力の高まりを感じることができた。一方で、気になったのはケガ人の多さだ。今回の合宿では、10日の試合前にベレーザのFW宮澤ひなたと浦和のMF栗島朱里がケガで離脱。フランスW杯でもコンディション不良やトレーニング中のケガ人の多さが目立ったが、さらに人数が減る五輪で主力が離脱すれば致命傷になりかねない。

 競争に晒されている選手は、練習でも試合でも常に100%でプレーし、アピールをしようとするものだ。そういった状況も含めて、選手のコンディション管理やケガへのリスクマネジメントは、代表チーム、そしてサッカー協会全体でしっかりと原因を検証し、状況改善につなげてほしいと願う。