なでしこリーグの二大勢力が激突。代表選手の不在を埋めたベレーザが東西ダービーを制し2連覇を達成

日テレ・ベレーザがリーグカップ2連覇を達成した(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

【延長戦の末に生まれた決勝弾】

 8月3日に、なでしこリーグカップ決勝が味の素フィールド西が丘で行われた。

 キックオフの笛が鳴った18時半頃、ほぼ陽は落ちかけていたが、温度計はまだ31度。猛暑の名残を留めていた。それでも両者の運動量は大きく落ちることなく、延長戦を含めて110分を戦う見応えのあるゲームとなった。

 その結果、日テレ・ベレーザ(ベレーザ)がINAC神戸レオネッサ(INAC)を延長戦の末に3-1で下し、リーグカップ連覇を達成した。

 先制したのはINACだ。前半43分、左サイドの深い位置でMF八坂芽依がチャンスを作り、最後はMF中島依美が決めた。だが、ベレーザは後半開始早々の50分に、コーナーキックからDF有吉佐織が押し込んで追いつく。1-1で迎えた延長後半5分には、FW小林里歌子のスルーパスを受けたFW田中美南がゴール前で切り返し、トーキックでGKのタイミングを外す見事な逆転弾を放つ。終了間際には、再び田中が相手のバックパスを鮮やかに奪って駄目押しの3点目を決めた。

 ベレーザはリーグ4連覇中で、昨季はリーグ杯と皇后杯を合わせて3冠を達成している。このまま突き進めば、「ベレーザ史上最強チーム」と謳われる日も遠くはなさそうだ。

 最大の強みは、試合の中で柔軟に変えられる対応力だろう。細部までイメージを共有できる連係の良さは、選手同士がともにプレーしてきた年月にも比例する。決勝のスタメン11名中、8名が下部組織のメニーナ出身だった。

 昨年からベレーザの指揮をとる永田雅人監督は、その強さがどこからきているのかという質問に対し、50年にわたるクラブの歴史に重ねてこう明かしている。

「ベレーザのサッカーはヴェルディと隣り合っていて(※)、(ヴェルディのサッカーを)遡っていくと(与那城)ジョージさんやラモス(瑠偉)さんといった、ブラジルのストリートサッカー(を知る選手たち)に行き当たります。それは技術やサッカー観、遊び心などで、たとえば難しい(試合状況の)時に、自分の懐を深く使って相手をかいくぐったり、ターンして相手のベクトルを変えられるようなプレーです。ベレーザにはそういうプレーが得意で、それがどういう展開につながるかが予測できる選手が多いです。その個人の質の高さは、勝つ(ために重要な)ポイントだと思います」(永田監督)

(※)ベレーザは読売ヴェルディの前身となる読売サッカークラブの女子チームとして発足。男子トップチームと同じよみうりランドのヴェルディグラウンドを練習拠点としており、サッカーのスタイルにも多くの共通点が見られる。

 準決勝の浦和レッズレディース(浦和)戦では、立ち上がりからマンツーマンの厳しいプレッシャーに晒され、2点をリードされる苦しい状況に陥った。だが、そこから3点を決めて鮮やかな逆転勝利。決勝も同様に逆転勝ちで、劣勢になっても動じないメンタルの強さを見せた。

「後ろがしっかり耐えて守ってくれて、110分持ちこたえてくれました。前半から相手が(厳しくマークに)来ていましたが、試合を通して、絶対に(得点に繋がる)スペースは空いてくると思っていました」

 リーグカップでもリーグ(暫定)でも得点ランキングトップを走る田中は、チームメートへの揺るぎない信頼を口にしている。

 今大会はフランス女子W杯と日程が重なっていたため、代表に主力9名を送り出していたベレーザにとっては厳しい大会だった。試合後の記者会見で、永田監督はどう予選を戦ってきたかを熱く語った。

「ベレーザのレギュラーが5、6名しか残っていない中で、メニーナから昇格した(ばかりの)菅野奏音(かんの・おと)と松田紫野(まつだ・しの)の7名でポジションを埋めて、残りの枠を(メニーナの)中学生か高校生が埋める状態でした。メニーナで同じようなサッカーをしているので、試合をどう進めるかは見えていたんですが、0-3の長野戦からスタートして、3戦終わって1勝2敗。3試合目はノジマ(ノジマステラ神奈川相模原)さんで、中学生を入れた中で勝つことは困難でしたが、勝ってもおかしくないような内容(●1-2)だったので少し自信がつきました。若い選手が多かったので、(相手陣内の)深い位置にランニングしたりプレッシャーをかけることは、やればやるほど上手くいく部分がありました。その中で、(レギュラーの)有吉、岩清水(梓)、田中、土光(真代)、宮澤(ひなた)が自分たちの役割以上のことをやってくれて、4戦目、5戦目ではボールを支配して相手を押し込んでプレーできるようになりました。そこに代表組が(W杯から)戻ってきて。代表組は思うように結果も出なかった中でいろんな思いがあったでしょう。暑さも伴い、メニーナの選手たちが入った時のようなランニングやプレッシングができず、練習でも停滞したボール回しの中で、奪われたら切り替えが遅い状況にもなりました。その中で(代表組が)コンディションを上げてきて、取り組んでいた課題が少しずつできるようになりました。最終ラインに走り込む選手を増やして突破していく、相手を押し込むという新しい取り組みへのエネルギーを持って次(のステージ)に向かうところで、今日の試合(決勝)を終えることができました」(永田監督/一部抜粋)

【受け継がれるもの】

 代表組不在の期間が多い中で、予選から決勝までの10試合で大きな役割を果たしたのが、ベレーザのレギュラーである岩清水、有吉、田中、土光、宮澤の5名だった。

参考記事:代表組不在のベレーザが見せる急成長。育成に長ける名門クラブに永田流「4-3-3」がもたらしたもの

 2年目の宮澤以外は、チーム在籍歴が8年以上になる。なかでも、大会を通じて存在感が際立った一人が、センターバックの土光だ。

 土光は23歳だが、メニーナで育ち、クラブ在籍歴は11年目になる。以前は途中出場が多かったが、永田監督の下で昨年から急成長を遂げ、今季はリーグ戦、カップ戦ともにフル出場。ディフェンスリーダーの岩清水とともに鉄壁を築いている。

 今大会では10試合で3ゴールと、セットプレーを中心に攻撃でも活躍。この試合では有吉の同点ゴールをおぜん立てし、延長戦では田中の決勝点につながるロングパスを出した。個人的に最も印象に残っているのが76分のシーンだ。INACのカウンターを中央で食い止めるとそのままドリブルで持ちあがり、コーナーキックを獲得。思い切りの良いプレーで会場を沸かせた。

「以前はボールを(失わないように)上手い選手にすぐ預けるようにしていたのですが、今は自分が相手を引きつけることで他の選手がボールを受けやすくなるように考えてプレーしています。去年からフィジカルコーチに見てもらってサッカーに使えるアジリティのメニューなど、筋トレも定期的にやっています。以前は試合に出ても交代で少しだけということが多かったんですが、去年からコンスタントに試合に出られるようになって、少しずつ成長できていると思います」(土光)

 1対1で競り勝つシーンが多くなった理由を聞くと、1対2の数的不利の状況で相手を止める練習の成果かもしれないと話した。代表選手たちとともにタイトルを重ね、なんだか風格も増したように感じると告げると、土光は「いやいや、ないですよ。隣にイワシさんがいますから」と、同じくメニーナ出身で、クラブ在籍20年目を迎える大先輩を立てて微笑んだ。

 

 土光は小学6年生の時に受けたメニーナの入団セレクションで、一次試験で一発合格したという逸材だ。日本で開催された12年のU-20女子W杯には16歳で飛び級選出され、フル出場で3位に貢献した。永田監督は、その高いポテンシャルを発揮できるように仕向けてきた。

 たとえば、4月に行われたリーグカップ第2節の日体大FIELDS横浜(日体大)戦では岩清水が中盤でプレーし、その時は最終ラインの統率を土光に任せた。

「土光は、隣にイワシがいるからうまくできていたプレーもあります。でも、違うメンバーと組んで、より自分が責任感を持ってプレーする機会も必要だと思いました」(永田監督)

 そして、この日体大戦で土光とセンターバックを組んだのが、今季メニーナから昇格した18歳の松田だった。メニーナの主将として今年1月の全日本U-18女子サッカー選手権大会でチームを全国優勝に導き、昨年のU-17女子W杯でも主将を務めた有望株だ。今大会では予選8試合にフル出場。INACとのリーグカップ決勝戦は後半アディショナルタイムからの出場で、プレー時間はわずか1、2分だったが、ベレーザの選手として優勝の瞬間を初めてピッチで迎えた。 

「今大会はしっかりメニーナの選手たちをサポートしようと思っていたのですが、自分の実力不足を感じることが多い大会でした。決勝の舞台でチャンスをもらえて、何かを残すところまではいきませんでしたが、チームの一員として一緒にカップを掲げられて本当に嬉しいです。逆転勝ちできるメンタルの強さとか落ち着きは、メニーナから引き継がれていると思います。これからは、それをベレーザで発揮できるようにしていきたいと思っています」(松田)

 岩清水から土光へ、そして松田へとメニーナ出身選手の流れが途切れることなく続いているように、厳しい競争の中で受け継がれてきた高い技術と勝利にこだわるメンタリティ、そしてサッカーへの探究心や向上心は、今後もベレーザの強さを支えていくだろう。

 代表組不在のなかで出場機会を得た選手たちが成長していく姿も含めて、育成に長けた名門クラブの強さを見た大会だった。