日韓戦を制して決勝進出!逆境をはねのけ、2大会ぶりのタイトルに王手をかけたなでしこジャパン

韓国との激闘を制し、決勝に進出したなでしこジャパン(2018年アジア大会準決勝)(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

【4大会連続の決勝進出】

 4年に一度の”アジア版オリンピック”、アジア競技大会に参加しているなでしこジャパンが、準決勝で韓国を2-1で下し、4大会連続の決勝進出を果たした。

 初戦でタイに2-0、続く第2戦ではベトナムに7-0で圧勝し、決勝トーナメントに進出。準々決勝では、昨年のE-1選手権王者である北朝鮮に2-1で競り勝った。

 そして迎えた韓国戦。球際の競り合いやスピード溢れる相手のサイドアタックに、押し込まれる時間は長かった。だが、その中でしっかりと耐え、かつ2ゴールを奪って接戦をものにできたことは大きい。

 会場のパレンバンは日中の気温が33度近くまで上り、現在は雨季のため湿気も高い。終盤、韓国の選手は複数の選手が足をつっていた。

 高倉麻子監督は試合後、

「受け身に回ってしまい、相手の圧力を受け続ける形になってしまった。それを押し返すようなコンビネーションやパスをつなげず、ずっと押される展開になった。非常に苦しい試合でしたけれども、(選手が)よく戦って、勝てたことがすべてだと思います」

 と、選手たちを労いつつ、内容面については厳しい言葉で振り返った。

 日本にとって体格やサッカーのスタイルが似たアジア各国との戦いは、互いに良さを消し合う試合になることが多く、欧米各国とは異なる戦いづらさがある。中でも韓国はMFチ・ソヨン、MFイ・ミナ、DFチョ・ソヒョンら、日本でプレー経験がある選手が多く、お互いの手の内を知り尽くしているため試合が膠着状態に陥りやすい。

 そんな中、日本の重要な2ゴールを叩き出したのがFW菅澤優衣香だ。高さと強さを生かしたポストプレーで、グループリーグのタイ戦と準々決勝の北朝鮮戦で重要なゴールをアシスト。一方、自身は決定機を外して頭を抱えるシーンもあり、ベトナム戦の2得点にとどまっていた。この韓国戦は、「まずは自分でシュートを打とうと考えて入った」(菅澤)という。

 その積極性が開始早々の前半5分に実を結ぶ。DF有吉佐織のフィードに絶妙の動き出しを見せた菅澤が、ゴールエリアの角度のない位置からトーキックでファーサイドに沈めた。

 この1点を大事にしながら追加点を狙いたい日本だったが、その後はミスから流れを失う場面も多く、韓国の時間帯が続いた。そんな中で、決定的な2つのピンチを救ったのが、右サイドバックのDF清水梨紗だ。

 20分にはエリア内に侵入したチ・ソヨンのシュートは完璧なコースに飛んだが、シュートの直前に自分のマークを捨ててゴールに飛び込み、間一髪クリア。抜群の読みが光った。

 また、58分にも、カウンターから抜け出されればGKと1対1になる場面で、持ち味のスピードを発揮。相手よりも先にボールに追いついてクリアした。いずれも一度は失点を覚悟しただけに、勝敗を分けるファインプレーだった。

 韓国ペースで試合が進む中、高倉監督は左サイドバックにMF阪口萌乃、ボランチにMF隅田凜を投入してボールを落ち着かせようとしたが、韓国の勢いは止まらない。68分にMFムン・ミラに左サイドからクロスを上げられ、イ・ミナにヘディングで決められ同点に。

 その後も立て続けにピンチを迎えるが、相手のシュートミスも手伝ってこれをしのぐと、86分、今度は清水が攻撃で魅せる。

 アーリークロスをファーサイドの菅澤の頭にピタリ。菅澤が相手に競り勝ってゴール中央に折り返すと、これが相手のオウンゴールを誘い、劇的な勝ち越し弾につながった。

 苦しい時間帯を耐えて、最後に泥臭く勝利を拾うーー4月のアジアカップを彷彿させる勝負強さが光った。

 今大会の日本はDF熊谷紗希、FW川澄奈穂美、MF宇津木瑠美ら、チームの軸である海外組を招集できず、MF阪口夢穂は膝のケガのため長期離脱中で、FW横山久美も怪我のため不参加に。攻守の軸となるスペシャリストをこれだけ欠いた中、国内組でここまで勝ち抜いたことは大きな自信になる。

【日本を救った2つのファインプレー】

 粘り強く戦えている要因の一つが、7月下旬のアメリカ遠征から、1試合ごとに積み上げてきた守備の共通意識だろう。清水は、チーム全体のコミュニケーションの質が向上していると話す。

「アメリカからほぼ同じメンバーで戦ってきている中で、試合中や試合が終わった後に、みんなで喋る量がすごく増えてきたなと感じています」(清水)

 清水は、高倉ジャパンで急成長を遂げている一人だ。代表での初出場は今年2月のアルガルベカップだったが、それからわずか半年で、右サイドバックのファーストチョイスになりつつある。細身の体に爆発的なスタミナを秘め、粘り強い守備で相手を疲労させ、ゴールを死守する最後の砦にもなれる。守備面の成長は、昨年、所属チームの日テレ・ベレーザでセンターバックでプレーしたことも大きいだろう。一方、攻撃面の成長については、韓国戦の前日にこう話していた。

「相手以上に、(サイドハーフの)味方の選手とのユニットを見ています。(中島)依美さんや、もみ(籾木結花)と組むこともありますが、2人で同じ動きをしないようにすることは特に気をつけています。裏に走ることによって(味方の)足下が空いたり、足下で受けてくれるからこそ自分が裏に走れる。そのために、動き出しを2つ作ることを意識しています」(清水)

 決勝の中国戦は、韓国戦で失点を招いたクロスへの対応をどう修正するかもポイントだ。サイドで主導権を握るためには、清水の攻撃参加の成否もカギになるだろう。

体を張った守備で失点を食い止めた清水梨紗(2018年アジア大会準決勝 写真:長田洋平/アフロスポーツ)
体を張った守備で失点を食い止めた清水梨紗(2018年アジア大会準決勝 写真:長田洋平/アフロスポーツ)

【決勝の相手は古豪復活ののろしを上げる中国】

 中国は、準決勝でチャイニーズタイペイを1-0で下して決勝に進出した。韓国に比べると選手間の距離が遠く、ロングボールを使ったダイナミックな攻撃が特徴的だ。アジアの中では比較的、欧米のスタイルに近いものを感じる。相手の圧力に対して受け身に回ると韓国戦の二の舞になりかねないが、しっかりとパスを回せれば主導権を取れるだろう。そのためにも、一つひとつのプレーの精度向上が求められる。

 今大会のグループリーグで中国は北朝鮮に2-0で勝っており、試合を観戦した日本の選手たちからは、「4月にアジアカップで対戦した時(◯3-1)とはまるで違うチーム」との声も聞こえてくる。

 中央でゲームをコントロールするボランチの隅田は、

「(中国は)一回り体が大きくなっているイメージがあります。スライディングで意地でもボールを取るところなど、強さが増したな、と。相手のパワーを利用してかわしながら、真っ向勝負でぶつかるところではしっかり戦っていきたいです」

と、フィジカル面の脅威を警戒しつつ、デュエルで負けないことを強調した。

 背番号10をつけるFWの籾木結花は、いつもと変わらない冷静さで相手のスタイルや狙いを分析し、日本が優位に立つイメージをしっかりと描いているようだった。

「北朝鮮が圧倒されているのを見るのは初めてで、中国はめちゃくちゃ強いチームだと思いました。速くて強い2トップFWにロングボールを入れて、守備はコンパクトに粘り強くプレーしてくる。その中で、自分たちがボールを回して相手を動かして、空けたスペースをうまく突いていきたいですね」(籾木)

 

 激しい消耗戦となった韓国戦から一夜明けて、練習場に現れる選手たちの表情は明るく、笑顔も見られるが、相当な疲労が蓄積しているのも事実だろう。

 だが、勝者になるか、敗者になるかーー結果は2つに1つ。金メダルと銀メダルでは、大きく違う。その差を誰よりも感じている一人が、最終ラインでこのチームを支えてきたDF鮫島彩だ。

「(3月の)アルガルベカップでは、なんとなくボールを持っていても、終わったら負けているな、という試合がありました。逆に、韓国戦のようにずっと攻められていても終わったら勝っている、という試合もできるようになった。でも、このままではアジアで勝てても、その先は通用しない。そう考えたら、もっと自分たちの時間を長くしていきたいです。(中国戦は)勝つために準備するだけ。(タイトルを)獲らないと、何も生まれないと思いますから」(鮫島)

日本の守備を牽引する鮫島彩(2018年アジア大会準決勝 写真:長田洋平/アフロスポーツ)
日本の守備を牽引する鮫島彩(2018年アジア大会準決勝 写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 負けから学ぶのではなく、チームは勝つことで強くなる。その事実を肌で知っている一人だからこそ、鮫島の言葉にはいつも、逃げ道を作らない強さがある。

 このチームで、アジアカップに続く2つ目のタイトルを獲得できるか。注目の一戦は、8月31日20:30(日本時間)キックオフ。