MF猶本光の国内ラストゲームを勝利で飾った浦和。ベレーザの矛を防いだDF長船加奈という盾

猶本光(左)の国内ラストマッチに華を添えた長船加奈(右)(6月8日 ベレーザ戦)(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

【試合を盛り上げた先制点】

 7月8日(日)に行われたリーグ杯第9節。浦和レッズレディース(浦和)はホームに日テレ・ベレーザ(ベレーザ)を迎え、2-0で下している。

 リーグ杯は各グループの1位が決勝に進出できるが、グループBはベレーザが3試合を残して6月末の段階で決勝進出を決めており、同時に浦和の敗退も決まっていた。

 だが、浦和にとって、このベレーザ戦は単なる消化試合ではなく、2つの意味で負けられない試合だった。

 一つは、女子ブンデスリーガ1部のFCフライブルクに移籍が決まったMF猶本光の国内ラストゲームであるということ。もう一つは、今シーズン、ベレーザ相手に未勝利(2敗)だということだ。

 だからこそ、後半開始早々に浦和が決めた先制点は、この試合を一気に面白くした。

 48分の左CK。猶本がファーサイドを狙って蹴ったボールに、ピタリと合わせたのはDF長船加奈だった。170cmの長身センターバックが、周囲よりも頭2つ分高い打点から放ったヘディングシュートには、堅守を誇るベレーザもなす術がなかった。

 決勝進出を決めているとはいえ、負けることは許されないーー控えも含めて、リーグ最多の9人の代表候補を擁するベレーザは、先制されたことで、ギアを一段上げた。

 しかし、時間とともに鋭さを増していったベレーザの強力な“矛”を、浦和の“盾”が最後まで防ぎきった。浦和は79分に18歳のFW高橋はなの1部初ゴールで点差を広げ、ベレーザから貴重な一勝を挙げた。

 長船にとって、3シーズン半、様々な悔しさと喜びを共にしてきた猶本のラストゲームで決めたゴールは格別だったようだ。柔らかいトーンの関西弁が、いつもより弾んでいた。

「最後は絶対に勝って光を送り出したかったし、今年、勝てていない相手だったので。いい舞台が揃った中で、みんなでつかんだ勝利やったと思います。光には気持ち良く『行ってらっしゃい』と伝えられます」(長船)

先制点を決めて祝福される長船(左は菅澤優衣香、右は白木星/6月8日 ベレーザ戦 写真:森田直樹/アフロスポーツ)
先制点を決めて祝福される長船(左は菅澤優衣香、右は白木星/6月8日 ベレーザ戦 写真:森田直樹/アフロスポーツ)

【守備力向上を支えるセンターバックコンビ】

 浦和が、試合を通じてベレーザのシュート数をわずか2本に抑えたポイントは、「割り切った守備」だ。ディフェンスリーダーのDF高畑志帆は、試合後に語っている。

「自分たちの中で、スペースを使わせるイメージは共有できていました。最後をやらせなければ大丈夫、と」(高畑)

 右サイドでは、ベレーザのスピードスター、FW植木理子の切れ味鋭いドリブルが脅威になったが、浦和は猶本とMF柴田華絵とDF栗島朱里の3人で対応。中盤では、テクニックのあるMF長谷川唯にライン間に生じたスペースをかなり使われたが、簡単に飛び込まず、ボールが動く方向に我慢強くスライドしながら中を閉めた。どちらの対応にも、相手の力を認めた上での割り切りがあった。

 もちろん、2列目をどれだけ抑えても、ベレーザの得点源であるFW田中美南を抑えなければ失点は免れない。その対応で力を見せたのが、長船と高畑のセンターバックコンビだ。快足を生かした守備が持ち味の長船と、球際の強さが光る高畑。一人がアプローチに行き、もう一人が素早くカバーリングに回る。判断に迷いがなかった。

 浦和は2016年から17年にかけて、失点数を「24」から「14」へと、4割以上減らしている。それに伴い、リーグ戦の順位も8位から3位に上がった。その守備力向上は、昨年、チーム内で出場時間が特に長かった(高畑はフル出場)2人の連係が安定していたことも大きい。

 今シーズン、高畑がケガなどで試合に出られなかった時期は、長船が中心になって最終ラインを支えてきた。

「フネ(長船)は前に強いし、裏のカバーもしっかりやってくれるので。思いきって潰しにいくことができるんです」(高畑)

 コンビを組んで4年目となる同い年の相方に、高畑は厚い信頼を寄せる。

 

 長船と高畑は、ともに1989年生まれの28歳。歩んできたキャリアはバラバラだが、2人には重要な共通点がある。

 それは、センターバックとして、長く1部の試合に出続けてきたことだ。

 高畑は、早稲田大学を卒業後、2012年から浦和のディフェンスラインを支えてきた。一方、長船は高校卒業後に東京電力女子サッカー部マリーゼで頭角を現した後、(2011年の東日本大震災によるチーム解散の影響を受ける形で)ベレーザとベガルタ仙台レディースでプレーし、2015年に浦和の一員になった。リーグ1部でのキャリアは11シーズン目となる。

 日本女子サッカーの第一線で戦ってきた2人の言葉からは、守備の要としての矜持が伝わってくる。

 また、今年はU-20女子代表のDF南萌華も着実に試合経験を積んでおり、2人とポジション争いができる若手選手が台頭してきたことも、チームにとって大きなプラス要素と言えるだろう。

【「予測力」の磨き方】

 浦和の石原孝尚監督は、

「予測が格段に良くなっているし、コーチングも含めてゲームをコントロールする力が出てきている。本当に、彼女のチームへの貢献度は大きいです」

 と、昨シーズンからの長船の成長を高く評価した。

 元々の身体能力が高いため、予測力を磨くことで守備力の向上にもさらなる伸びしろが期待できる。長船は、予測の精度を高める方法の一つに、意図的に味方を動かす守備を挙げた。

「自分のところで奪い切りたいので、ボールを追い込むために(前の選手にパスコースを)切らせていく。フォワードまで動かすことはできないのですが、ボランチを動かしてコースを限定して、うまく自分のところに入れさせることを常に意識しています」(長船)

 攻撃面でも、読みの鋭さは生きている。

 リーグ第9節(6月3日)のセレッソ大阪堺レディース(セレッソ)戦は、ロングフィードで2度の決定機を演出した。中でも、相手がディフェンスラインを上げるタイミングを見計らい、FW菅澤優衣香の裏への動きを生かしたロングフィードは絶妙だった。パスの質は、FWの個性によって蹴り分けているという。

「たとえば(菅澤)優衣香なら、どんなボールでも胸トラップで収めてくれるので、速くて強いボールを意識しているし、(高橋)はなは、スペースに走り込んでくれるので、そこに落とすようなボールを意識しています」(長船)

 セレッソ戦では、そのロングフィードはゴールには結び付かなかったが、終了間際の88分にコーナーキックのこぼれ球を長船が左足で決め、この時も勝利の立役者になった。

 浦和の盾となり、苦しい場面では矛にもなれる長船のプレーに、引き続き注目したい。

 浦和はこのベレーザ戦の勝利を、9月に再開するリーグ戦で上位進出(現在は4位)のきっかけにしたい。中盤の柱だった猶本が抜ける後半戦のスタートは、踏ん張りどころだ。