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勝利への執念が生んだ京川舞の決勝ゴール。浦和とINACの一戦は、混戦の上位争いを象徴する接戦に(2)

松原渓スポーツジャーナリスト
10節を終えて得点ランクトップに立つFW菅澤優衣香(写真:築田 純/アフロスポーツ)

なでしこリーグは5月28日(日)に第10節が行われた。浦和レッズレディースがホームにINAC神戸レオネッサを迎えた。試合は、FW京川舞が後半アディショナルタイム直前の90分に決勝ゴールを決め、INACが1-0で勝利した。

勝利への執念が生んだ京川舞の決勝ゴール。浦和とINACの一戦は、混戦の上位争いを象徴する接戦に(1)

以下、試合後の監督・選手コメント。

【監督・選手コメント】

松田岳夫監督(INAC)

ーー試合を振り返っていただけますか?

うちが14本のシュートを打って、相手が4本という、記録のシュート数を見て愕然としました。まったく、そういう(シュート数で圧倒した)イメージの試合ではありませんでした。逆に、うちが守備をしている時間が長くて、走らされて、攻撃のスイッチが入らない。そういう試合内容でした。

ーー前節の日テレ・ベレーザ戦と比べて、特にどのような点で課題が生じましたか?

(1-0で勝利した)前節(ベレーザ戦)は、縦に早すぎた部分はありましたけれど、前へのボールが入った後に良いサポートができて、ゴールに向かう姿勢を感じました。しかし、今回はフォワードにボールが入らず、サポートも遅く、(選手同士の)距離感が遠かったです。

ーー中盤の4人は流動的で、特に中島依美選手は自由な動きで起点になっていますが、どのような指示を与えているのでしょうか?

空いているスペースに飛び出すという点では、中島に限らず、京川(舞)も(外だけでなく)中でもプレーして欲しかったですし、フォワードにボールが入った時に、中盤の選手が近い位置にいられるように、後ろの人が前に行くだけではなく、外の人が中に行くことも含めて、スペースがあったら飛び出す意識を持たせたのですが、残念ながらそこ(フォワード)にボールが入らず、無駄な動きが増えてしまったように思います。

ーー来週からはリーグが中断してカップ戦に入りますが、どのようなプランで戦おうと考えていらっしゃいますか?

試合や大会によって、区別することはないですね。若手選手といっても、今はみんな若いので、今いるメンバーでベストメンバーを組みます。当然、(出場機会が少ない選手に)チャンスを与えたり、試してみたいこともありますが、「カップ戦だから若い選手に自然とチャンスが来る」、なんてことはあり得ません。自分でポジションを勝ち獲ってほしいですし、これから、暑い中でどれだけ競争できるかということを見たいと思います。

ーー高瀬愛実選手を2試合連続でサイドバックで起用されましたけれど、前節が良かったからまた起用されたのか、それとも、チームとしてこの形を固めていきたいという意図があるのでしょうか?

両方ですね。今日も前に良いスペースがあった場面で飛び出して、得点には繋がらなかったけれど、高瀬の良さを活かせていたと思います。そういう場面を1試合の中で何回も出せるのであれば、スタート位置がサイドバックということは別に悪いことではないと思っているんです。そういう意味では、サイドバックに固定するわけではなく、一つ前(右サイドハーフ)やフォワードも含めて、いろいろなポジションをやってもらいたいと思っています。

FW 京川舞(INAC)

ーー決勝ゴールを振り返っていかがですか?

みんなが点を獲りたいという気持ちで突っ込んだ結果、こぼれて来たボールを決めることができました。チームとして、勝ちたいという気持ちが相手よりも上回ったゴールだったと思います。

ーー浦和に対して、どのようなことを意識して試合に臨んだのでしょうか?

前節のベレーザ戦をベースとして、それを踏まえて戦おうと話していたのですが、(浦和)レッズは筏井(りさ)さんや(猶本)光のところからサイドチェンジがあるから、できるだけ、それをやらせないような守備を意識していました。ただ、守備がハマった、というシーンが多く作れませんでした。

ーーここ数試合で、チームとしてよくなっていると感じる部分はありますか?

勝負どころで勝てていることは、自信にしていいところだと思いますし、前向きに捉えたいです。ただ、攻撃の部分で、チーム全体で連動して相手を崩す場面がなかなか作れていないので。勝ててはいるのですが、ちょっとしたところの質をもっと上げたいですね。

ーー選手同士の距離感はいかがですか?

ボールを収める能力が高いレッズのFWに対して、うちのセンターバックも頑張ってはじき返してくれたのですが、そのセカンドボールをなかなか拾えなくて、苦しい時間帯がありました。ただ、ミッドフィールダーが後ろ向きのパワーを持つことをベースにしていた後半は良いシーンが作れていたと思います。

ーー2試合連続で決勝ゴールを決めましたが、個人としての手応えはいかがですか?

今は、体が重たいとは感じていません。ただ、得点がついて来ているだけで、まだまだ、攻撃で起点になれず、消える時間帯があります。どのポジションでプレーしても、常にボールに関われるようなオフザボールのポジショニングを意識したいですし、守備も意識して、チームに貢献したいです。

DF 鮫島彩(INAC)

ーー2連勝ですが、今日の試合を振り返っていかがですか?

今日は何も(成果が得られ)なかった試合だと思います。全体的に、ゲームがボワっとしていましたね。暑さもあったと思うのですが、そういう(ぼやけた)ゲームになってしまった印象があります。

ーー特に、前節のベレーザ戦と比べてどのようなところがうまくいっていないと感じていましたか?

守備がうまくはまらなかった印象です。ベレーザは、同じサイドで崩して出口を見つけて抜ける術を持っているチームですが、レッズはシンプルにサイドチェンジをして来るので、サイドに追いやろうとしたところでサイドを変えられてしまい、(守備面で左右に)スライドをするための運動量が、ベレーザ戦よりも増えました。その点で、(守備の)ストレスが増えた印象があります。

(浦和のGK池田)咲紀子さんもダイレクトで良いボールをサイドに蹴れるので、そのボールを前線につけられてしまうと、スライドも大変になります。分かってはいるのですが、左右に振られた感じはしました。

ーー今は、相手によって守備を変えていかなければいけないのか、それとも、チームとして守備の形を固めなければいけないのか、どちらだと感じていますか?

前節は、サイドを変えさせない守備ができていたと思います。課題もありますけれど、その中でも良いゲームができていました。それが最低限のベースで、それができたら、相手によって変えられる部分もあると思うのですが。その守備も毎回出せないということは、まだベースになっていないということだと思います。

ーー結果にこだわるという点では、この結果はいかがですか?

今日の試合を落としていたら、前節の勝利の意味がなくなっていたので、内容は悪かったのですが、結果だけが収穫だったかなと思います。でも、大事なゲームで京川が点を獲れたことはチームとして大きいですね。彼女は大事な試合で点を獲るタイプなので、それが結果に出たことは、獲るべき人が獲ったという点でポジティブなことだと思います。

ーーサイドでの運動量は相変わらず多いと感じますが、今シーズンの前半戦を終えて、ご自身のプレーを振り返っていかがですか?

たとえ(味方から)パスが出てこなくても、相手のディフェンスが一歩でも二歩でもポジションが変わるようにプレーする、サイドバックはそういうポジションだと思うので。その中で、一試合に何本かはチャンスがあるので、そのチャンスを活かせる力をもっとつけたいです。今シーズンはまだ、ゴールもアシストもないので。チームとしてまず勝つことが一番ですが、(個人的にも)目に見える結果を出したいですね。

DF 三宅史織(INAC)

ーー試合を振り返っていただけますか?

無失点で終われたことは嬉しいです。この試合に勝てたことで、前の試合で勝った意味を、改めて実感できました。ただ、内容では、納得できないところも多かったですね。

ーー特に、どのような点で納得できなかったのですか?

守備面は中盤とフォワードの選手が走ってくれていたので、後ろでは絶対に(ボールを)奪おうという気持ちがありましたし、バタバタしなかったので、プレーしやすかったです。ただ、攻撃面では自分自身もミスの多さを感じる試合でした。

ーーボールを前で奪えている場面が多いと感じますが、その点は自信を持ってやれているところですか?

はい。レッズは広く展開してくるチームということを頭に入れていたし、前線でキープ力のある2トップが連携してくるので、怖い相手だと思っていました。ただ、ラインを下げたら相手のペースになってしまうので、サイドチェンジをされてもズルズル下がらないことを意識してプレーしました。

ーー今シーズンはディフェンスラインのメンバーが変わる中で、最終ラインをまとめる上でどのようなことを意識していますか?

自分が中心になって守備をまとめていかなければいけないという責任感がありますし、今は試合に出させてもらっていますけれど、センターバックのポジション争いもありますから、常に負けたくないという強い気持ちでプレーしています。メグ(高瀬愛実)さんはディフェンスでプレーするのが初めてとは思えないぐらい、安心感があります。上手い選手はどこのポジションでもできるんだなと実感していますし、1対1も強くて攻撃的なので、助けられている部分がかなりあります。

ーーボランチは福田ゆい選手など、(三宅選手にとって)年下の選手もプレーしていますが、連携はいかがですか?

話をしながらやっているので、やりやすいですね。ただ、(福田)ゆいは1年目なので、年下だからといって、自分たちがいろいろ言うことで気持ちが落ちてしまうのではないかという心配もあります。それは自分たちも経験してきたことですし、ゆいがやりやすいようにということは意識していますが、特に守備では、声を出すべきところはしっかり声をかけてやっています。

ーーご自身の成長についてはどのような手応えを感じていますか?

ケガから復帰して、別メニューでトレーニングをしていた時に、体作りをしっかりやっていました。リハビリだからということではなく、ポジティブに考えて、トレーナーさんと試合に向けた体作りをやってきたことが、自分の強みになっていると思います。

石原孝尚監督(浦和)

ーー試合を振り返っていただけますか?

ただただ、悔しいです。 ここ5試合、無失点で来ていた中で、我慢する時間もありながら、選手たちは激しく戦いながら、攻撃では人数もかけていました。(INACは)強いチームなので、なんとか勝ち切りたかっただけに残念です。ただ、選手たちの頑張りには感謝しています。

ーー失点シーンを振り返っていただけますか?

交代してすぐだったので、(マークの)確認も後手を踏んでしまった感はありますが、そこも含めて自分たちの実力です。ただ、成長は選手たち自身も感じているでしょうし、勝たせてあげたかったですね。

ーー相手の交代選手にゲームを動かされた感じもありますか?

そうですね。道上(彩花)選手が出てきてやることがはっきりしたので、そこの対応をする形にはなりました。ゲームがオープンになったので、そこで落ち着かせても良かったのですが、こちらも元気な選手で打ち返しにいってやろうというプランで(交代選手を投入しま)した。(失点した)リスタートの場面は悔やまれますけれど、そこはチャレンジした結果だったので仕方ないかなと。点を決められなかったことは残念です。

ーーシュートまで行く形を作るために、攻撃面ではどのように修正していきたいですか?

サイドや中央から突破することは、今シーズン目指しているところです。ただ、引いた相手を突破するためのコンビネーションはまだまだこれからですね。ただ、今日は前向きにボールを運んでいる選手がたくさんいたので、もっと大胆に左右に振れるようになれば、他の(スペース)が空くのかな、と。(この試合は)シュートが(少)なかったので、(ゴール前で相手を引き出すことができず、)最後の(シュートを打てる)決定的なスペースが空いて来なかったですね。

ーー6月から安藤梢選手が加わることで、どのようなことがチームにとってプラスになると考えていますか?

経験のある安藤が入って、得点も期待できますし、吉良(千夏)、菅澤(優衣香)、清家(貴子)、白木(星)といった選手たちとの競争になると思います。今は4-4-2で戦っていますが、もう少し前の選手たちが試合に出られるようなフォーメーションにもチャレンジしたいと思っています。

GK 池田咲紀子(浦和)

ーー試合と、失点シーンを振り返っていただけますか?

コーナーキックになった時にパッと時計を見たら、「もうこんな時間だったんだ」という心境でした。最後のプレーだと思ったので、みんなにも、「最後しっかり、ゼロ(無失点)で行こうね」と声をかけて、自分も集中してやろうと気を引き締めたのですが、まずショートコーナーで先手を取られて、慌てたわけではないのですが、ちょっとやられた感じがありました。その後、自分自身も、本当に一瞬、準備が遅れたために、ボールに対しての判断がはっきりしなかったです。あの場面でしっかり準備してキャッチできていれば、問題のないプレーだったと思います。みんなすごく頑張ってくれていたので、ワンプレーで結果的に負けてしまうというのは、本当に申し訳ないなと思いますし、何本止めたって、あれが全てだなと、私も思っています。あのプレーをしてしまったら、何も(得るものは)ないなと。本当に基本的なところでのミスです。

ーー試合終了間際の時間帯に、ゴールキーパーとして特に大切にしていることは何ですか?

(0-0で)勝ちたいという気持ちがあったので、(INACの)コーナーの前には(自分たちの)攻撃のことを考えていましたが、まずはしっかりゴールを守ることを優先すべきだったと思います。サッカーの試合では、立ち上がりや前半の終了間際、後半の初めの時間帯など、特に失点に気をつけなければいけない時間帯がいくつかあるのですが、私はゴールキーパーなので、90分間トータルで失点してはいけないポジションです。あの一瞬で、勝ちにいくのかしっかり守りきるのかという、その判断が大切でした。

ーーこのあとはカップ戦ですが、どのように戦いたいと考えていますか?

もちろん、カップ戦もタイトルがかかっている試合ですし、リーグ戦と同じテンションで戦いたいです。しっかり、一つずつ勝つことが大切だと思います。

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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