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高倉監督就任後、国内初お披露目のなでしこジャパン。コスタリカを相手に、そのベールを脱ぐ。(1)

松原渓スポーツジャーナリスト
9日に向けて調整を進めるなでしこジャパン(C)松原渓

【コスタリカとの国際親善試合】

4月9日(日曜日)、熊本県民総合運動公園陸上競技場(熊本)で行われるキリンチャレンジカップで、なでしこジャパンはコスタリカ女子代表と対戦する。

昨年5月になでしこジャパンが高倉麻子監督の下、新体制でスタートしてから、国内で初の国際親善試合になる。日本サッカー協会はこの試合を2016年4月16日に発生した熊本地震の『復興支援マッチ』として、位置付けている。

最大震度7を記録した熊本地震は、発生から1年が経とうとしている今も、随所にその爪痕を残している。

東日本大震災を経験し、同じく復興の途上にある仙台市を拠点とする、マイナビベガルタ仙台レディース(以下:仙台L)のDF市瀬菜々はこのように話す。

「バスの移動中などにも、外を見ながら、まだ完全には復興していないなと感じるので、熊本の方々を勇気づけられるようなプレーがしたいです。(私は)ディフェンスなので、身体を張って、点をとらせないプレーを見せたいですね」(市瀬)

なでしこジャパンは、今年の3月にポルトガルで行われたアルガルベカップで新体制後初の国際大会に臨み、スペイン、アイスランド、ノルウェー、オランダを相手に、2勝2敗の6位で大会を終えた。

8日間で4試合をこなす過密日程の中、日本は1試合ごとに多くの収穫を得た半面、それ以上の課題も浮き彫りになった。

2019年女子ワールドカップフランス大会と2020年東京オリンピックでの優勝を目指すなでしこジャパンは、今年12月に日本で行われるEAFF E−1フットボールチャンピオンシップと、2018年4月にヨルダンで開催予定のAFC女子アジアカップ(兼ワールドカップアジア予選)を控えている。

新体制発足からここまでの約10ヶ月間は、新戦力の発掘や、新たな選手同士のコンビネーションを試す中で、チームの方向性や、高倉監督のサッカー観を浸透させることに重点が置かれてきた。今後は、引き続き戦術理解を深めながら、メンバー間の連携や攻守における連動性など、チームの「結束」を高めていくことが求められる。  

アルガルベカップを戦い、ポルトガルから帰国してから3週間あまり。時間を空けず、チームとして積み上げつつある土台をさらに強固にする上でも、今回のコスタリカ戦は貴重な一戦となる。

「一つの大会(アルガルベカップ)を終えて、雰囲気が解けた感じがしますし、よい雰囲気の中で、新しい選手も違和感なくやれていると思います。ようやく、少しチームらしくなってきたかな、と 」(高倉監督)

熊本入りして3日目の練習を終え、高倉監督はたしかな手ごたえを口にした。

【初招集となった3名の新戦力】

今回のコスタリカ戦のメンバーは23名(6日にMF京川舞がケガのため離脱して、現在は22名)。

海外組からはキャプテンの熊谷紗希(オリンピック・リヨン/フランス)と宇津木瑠美(シアトル・レインFC/アメリカ)の2名が選ばれた。

初招集メンバーは3名。なでしこリーグ1部の日テレ・ベレーザ(以下:ベレーザ)のMF隅田凜、なでしこリーグ2部の愛媛FCレディース(以下:愛媛)からFW大矢歩とFW上野真実の2名が初めて代表合宿に参加することになった。

MF隅田は、所属するベレーザで、なでしこジャパンの中心選手の一人である阪口夢穂とボランチを組む。隅田はこれまで年代別代表にコンスタントに名を連ねており、昨年11月にパプアニューギニアで行われたU-20女子ワールドカップでは、全6試合にフル出場し、3位入賞に貢献した。ベレーザでは右サイドハーフとしてもプレーするが、鋭い球際の寄せと危機察知能力の高さが、A代表でどのように活かされるのか、注目したい。

また、2部からの選出となったFW大矢について、高倉監督は「個で突破できる、女子(サッカー)ではいない(珍しい)タイプ」と評価。3月にスペインで行われたU-23ラ・マンガ国際大会では3試合に出場して1ゴールをあげた。体格差のある海外の選手相手にも1対1で見劣りしないプレーを見せ、それが評価されて念願のA代表入りを果たした。

同じく愛媛から選ばれたFW上野は、昨年11月のU-20女子ワールドカップで得点王に輝き、ニューヒロインとして鮮烈な印象を残した。長い手足を活かした懐の深いボールキープとシュートの巧さは、A代表にも新たな風を吹き込むことになると期待している。

興味深いのは、FW6名のタイプが重ならないことだ。

難しい角度やゴールへの距離に関係なく、ゴールを確実に決める横山久美。

裏への飛び出しとターンを活かし、相手を背負いながらシュートをゴールにねじ込む強さを持つ田中美南。

身体の強さを活かした突破力を見せる大矢歩。

変幻自在のドリブルと切り返しでリズムを変える増矢理花。

足元の技術と多彩なアイデアを活かし、相手との駆け引きを得意とする籾木結花。

ポストプレーとシュート技術の高さを見せる上野真実。

各々が異なる強みを持っており、それらがコンビネーションの中で、あるいは個人の突破においてどのように発揮されるのかが楽しみである。「ゴール前の強さ」は、指揮官がずっと求めてきている部分だ。それは、中盤の選手も例外ではない。

「今はどのチームも前から強くプレッシャーをかけてくる中で、中盤の選手には一人かわせる上手さを求めていますし、得点力も求めています」(高倉監督)

DF陣に目を移すと、センターバックの市瀬が1月の国内合宿に続いて2度目の招集となった。出場すれば、A代表初出場を飾ることになる。今回のメンバーの中では最年少の19歳だが、予測の利いた、計算されつくしたような落ち着いたプレーで、なでしこリーグで開幕2連勝を飾った仙台Lにおいて欠かせない存在となっている。今シーズン仙台Lに加入した、2016年のAFC年間最優秀選手であるFWケイトリン・フォード(オーストラリア)にトレーニングの中で1対1を申し込むなど、貪欲な向上心が頼もしい。

経験豊かな熊谷を筆頭に、成長著しい中村楓、高木ひかりといった次世代のセンターバック候補たちの競演も見どころだ。

なでしこジャパンとコスタリカ女子代表の一戦は、テレビ朝日系列で、4/9(日) 18:57より 生中継される。

FW上野真実
FW上野真実

(2)【監督・選手コメント】に続く

スポーツジャーナリスト

女子サッカーの最前線で取材し、国内のなでしこリーグはもちろん、なでしこジャパンが出場するワールドカップやオリンピック、海外遠征などにも精力的に足を運ぶ。自身も小学校からサッカー選手としてプレーした経験を活かして執筆活動を行い、様々な媒体に寄稿している。お仕事のご依頼やお問い合わせはkeichannnel0825@gmail.comまでお願いします。

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