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ブレグジット:英世論調査でジョンソン首相待望論高まる(下)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

 

事実上の首相指名選挙となる保守党の党首選挙でテレビ討論に臨んだジョンソン前外相(右)と対立候補のハント外相=7月9日のBBC放送より
事実上の首相指名選挙となる保守党の党首選挙でテレビ討論に臨んだジョンソン前外相(右)と対立候補のハント外相=7月9日のBBC放送より

ボリス・ジョンソン前外相の首相待望論が高まる一方で、英国政界はジョンソン首相が誕生した場合、同首相の下で直ちに解散総選挙に向かうという論調が出始めた。英紙デイリー・テレグラフは6月16日付で、「ジョンソン氏は首相就任後、解散総選挙に打って出る。保守党最大の後援者団体(ミッドランズ・インダストリアル・カウンシル)は10月末のEU離脱を確実にするため、新党のブレグジット(英EU離脱)党と選挙区調整に入った」とスクープした。これは欧州議会の英国の議席を決める欧州議会選挙(5月23日)で大勝したブレグジット党と保守党との政権協力の可能性を意味する。

 ブレグジット党はUKIP(英国独立党)の党首だったナイジェル・ファラージ氏が率いる新党で、欧州議会選挙では、結党わずか6週間で得票率31.6%、29議席を確保し第一党となった。次いで2度目の国民投票を目指す自民党(16議席)と労働党(10議席)が続き、与党・保守党は得票率9.1%、4議席と、一気に15議席も失い、緑の党(7議席)を下回る第5位に転落している。保守党の党首選(事実上の首相選)はノーディール(合意なき)離脱か、またはディール(合意)離脱かが争点となっているが、欧州議会選挙でブレグジット党が躍進したことは、多くの有権者がノーディール・ブレグジット(合意なしのEU離脱)を支持していることを意味する。

 ブレグジット党は次の総選挙に参戦する意向だが、英紙サンデー・タイムズの世論調査(6月16日付)では、総選挙での党派別支持率はブレグジット党が24%でトップとなり、保守党と労働党は21%で同率2位だった。また、テレグラフ紙の6月22日の世論調査では、党首選挙に投票する保守党の地方議員の61%がジョンソン氏、39%がEU残留支持派のジェレミー・ハント外相を支持。また、80%がノーディールを支持し、77%が離脱日の延長に反対した。さらに、62%がブレグジット党との選挙協力に賛成している。このように、テレグラフ紙が5月5日付社説で政局再編のシナリオについて、「新党ブレグジット党が保守党と労働党の2大政党の間を縫って急浮上する」と指摘したほど、ブレグジット党の存在感が増している。

 ブレグジット党のファラージ党首は6月18日、テレグラフ紙の公開インタビューで、ジョンソン氏の保守党との政治協力について、「(首相に就任した)ジョンソン氏の内閣に対する不信任案が議会で可決された場合、クリーンブレグジット(EUの関税同盟や単一市場へのアクセスから完全に離脱)を求めて解散総選挙をする覚悟があれば、保守党と政治協定を結ぶことはありうる。その時にはジョンソン首相は議会で過半数を占め返り咲くだろう」と言いっ切った。

 しかし、保守党のウィリアム・ヘイグ元党首はテレグラフ紙の6月24日付コラムで、「保守党では党首を最終的に決めるのは一般有権者である16万人の党員だ。絶対に自分は勝つと慢心する大本命を嫌う。(慢心すれば)ジョンソン氏にノーという答えを突き付ける」と、警告する。前回2017年の総選挙で地滑り的勝利を確信していたテリーザ・メイ首相や2016年の米大統領選で有望視された民主党のヒラリー・クリントン元国務長官も一敗地に塗れた教訓を忘れてはならないと戒める。(了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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