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主な新興国・米国経済ニュース(3日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

米CFTC、食品大手のクラフトとモンデリーズを小麦の価格操作で告発

米国の商品先物・オプション市場を監督する全米商品先物取引委員会(CFTC)は1日、米食品大手クラフト・フーズ<KRFT>とその姉妹会社である米同業大手モンデリーズ・インターナショナル<MDLZ>の2社が2011年12月に小麦の先物と現物の両市場で価格操作を行って540万ドル(約6.5億円)の不当利益を上げたとして告発した。米経済情報専門サイトのマーケットウォッチなどが伝えた。

CFTCによると、両社は2011年夏に小麦の現物価格が急騰したことから、同年12月にCBOT(シカゴ商品取引所)の小麦の先物取引で正当なヘッジ目的の範囲を超える900万トンという大量の投機的な買い付け注文を実行し、その後の小麦の現物市場での値下がりによって540万ドルの不当利益を上げたとしている。

クラフトでは今回の価格操作に対する制裁金などの支払いの大部分はモンデリーズが負うため、クラフトの今後の業績やトマトケチャップで知られる米食品大手ハインツとの合併計画にも悪影響は及ばないとしている。

クラフトの1日の株価は4.12%高の90.7ドルで引けたあとの時間外取引では米東部時間午後7時59分時点で0.23%安と、反落している。

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米マクドナルド、米国内直営店の従業員9万人の時間給を10%超引き上げへ

マクドナルドのスティーブ・イースターブルックCEO=同社サイトより
マクドナルドのスティーブ・イースターブルックCEO=同社サイトより

米ファストフード大手マクドナルド<MCD>は1日、米国の直営店の従業員約9万人の1時間当たりの賃金を7月1日から来年末までに平均で10%(1ドル)超引き上げる方針を明らかにした。

賃上げは同社の米国内全体の約10%に相当する直営1500店舗の従業員が対象となる。まず、7月1日に平均で現在の9.01ドルから9.9ドルに引き上げ、その後来年末までに10ドル超とする。また、1年以上勤務すれば最長で年間5日間の有給休暇も認められるとしている。

今回の賃上げの背景にはファストフード業界の労働団体が賃金格差の是正で賃上げを求める活動が活発化していることがある。しかし、マクドナルドの場合、米国の従業員全体の約90%は1万4350店舗のフランチャイズチェーン加盟店で働いており、賃上げは適用されない。

マクドナルドの株価は1日、1.18%安の96.29ドルで引けたが、その後の時間外取引では米東部時間午後6時25分時点で0.01%高とやや反発している。

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タイ軍事政権、10カ月ぶりに戒厳令解除でも全権掌握へ

タイのプラユット・ジャンオーチャー首相(陸軍司令官兼務)が率いる軍事政権は1日に全国向けテレビ放送を通じて声明文を出し、2014年5月22日にクーデターで民主政権を倒して以来10カ月ぶりに戒厳令を解除したことを明らかにした。英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)などが伝えた。

しかし、戒厳令は解除されても、軍がクーデター後に設置した国家平和秩序評議会(NCPO)を率いるプラユット首相が国家の安全保障が脅かされる場合、行政・立法・司法に関する命令を出す権限を持つことができるという暫定憲法第44条を適用し、引き続き権力を掌握するとしている。第44条の強権条項が適用されれば治安部隊は裁判所の逮捕令状なしに反政府運動の活動家などを逮捕し、身柄を拘束することができるようになり、今以上に言論弾圧が強まるとの見方もある。

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ロシア政府、新車購入ローンの利子補給で最高40万円給付へ

ロシア産業貿易省は1日、国内景気の低迷で自動車市場が販売不振に陥っていることから、自動車ローンの高金利負担を解消することを目指して、新車購入者に利子補給給付金を交付する方針を明らかにした。モスクワ・タイムズ(電子版)などが伝えた。

政府は利子補給給付金として15億ルーブル(約30億円)の補助金を割り当てる計画で、それによって、自動車ローンを使って2015年モデルの新車を購入する消費者に対し、最大20万ルーブル(約40万円)の利子補給金を交付するとしている。

現在、自動車ローンによる新車購入は、昨年の場合、全販売台数の40%だったが、今年の自動車ローン金利は昨年12月に中銀が主要政策金利を17%へと大幅に引き上げたため、年20%超に達し、自動車ローンの利用比率はわずか10-15%に激減している。

今回の利子補給給付金を含め、政府の自動車産業支援策は今年だけで総額40億ルーブル(約80億円)に達する。ちなみに、2月の新車販売台数は前年比38%減となっている。

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クレディセゾン、ベトナムのHDファイナンスの株式49%取得へ

「セゾンカード」で知られるクレジットカード会社クレディゼゾンは1日、ベトナム金融大手ホーチミン市住宅開発商業銀行(HDバンク)の金融子会社HDファイナンスの株式49%をHDバンクから買い取ることでベトナム中央銀行の承認を得たことを明らかにした。地元紙タンニェン(電子版)などが伝えた。

中銀によると、買収後のHDバンクの持ち株比率は50%となり、クレディゼゾンの49%を除いた残りの1%はホーチミン証券に売却される。クレディセゾンの株式取得額は明らかにされていない。HDファイナンスは2007年に、当初は仏ソシエテ・ジェネラル銀行のベトナム銀行子会社、ソシエテ・ジェネラルベトファイナンス(SGVF)として創設されたが、2013年10月にHDバンクによって買収されている。

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インドネシア国営インドサット、今年は黒字転換の見通し

インドネシア国営通信サービス大手PTインドサットの広報担当者アンドロメダ・H・トリサント氏は3月31日、ジャカルタ・ポスト(電子版)に対し、今年の業績見通しについて、昨年の純損失から今年は黒字に転換すると楽観的に見ていることを明らかにした。

黒字転換の根拠について、同氏は債務返済のためのリファイナンス(借り換え)や通信ネットワークの近代化工事のほか、インターネット・サービス・プロバイダー子会社PTインドサット・メガ・メディア(IM2)の訴訟関連費用をねん出するための資金手当てが完了したことを挙げている。

昨年の純損失は主にIM2の訴訟関連費用の支出に備えて1兆3600億ルピア(約125億円)の引当金を2014年度決算に計上したことが要因となっていた。最高裁判所はすでにIM2と同社のインダー・アトマント前社長に対し、インドサットが取得した2.1ギガヘルツの周波数帯ライセンスをIM2が譲り受けて無断で使用したのは不正利用だとして有罪判決を言い渡されており、IM2は国に与えた損失1兆3600億ルピアの肩代わりを命じられている。(了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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