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主な新興国/米国経済ニュース(26日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

19-23日のロシアRTS指数、4週ぶり反発―ECBのQE導入決定で

前週(19-23日)のロシア株式市場は、RTS指数(ドル建て)の23日終値が前週比6.7%高の820.99と、4週ぶりに反発した。米信用格付け大手スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)によるロシアのソブリン債のジャンク級への格下げ懸念や外国人投資家の資金引き揚げが続く中、週前半は値を下げたが、22日のECB(欧州中央銀行)の理事会で景気刺激とデフレ回避を狙った量的金融緩和(QE)の導入決定を受けて相場は急回復した。

週明けの19日は、米信用格付け大手ムーディーズ・インベスターズ・サービスがロシアのソブリン債を「Baa2」から「Baa3」へ1段階引き下げ、格付けを引き下げ方向で見直すことになる「ネガティブ」アウトルックとしたことを嫌気して、RTS指数は0.42%安、また、20日も原油安に加え、米英大手信用格付け会社フィッチ・レーティングスによるロシア国営企業の格下げを受けて、RTS指数は1.34%安と、2営業日続落となった。

しかし、21日はECBが22日の理事会でQE導入が決定されるとの期待感でRTS指数は3.42%高と急伸。22日もECBが3月から2016年9月まで月600億ユーロ(約7.9兆円)、総額1.1兆ユーロ(145兆円)の国債や民間資産、国際金融機関の債券を買い入れるQEを決定したことが好感され4.48%高、週末の23日もQE効果による原油価格の上昇という投資環境の改善を背景に0.47%高と、3日続伸となった。ただ、週末はS&Pによるロシアのソブリン債の格下げ懸念で利食い売りも出た。

今週(26-30日)のロシア市場は、引き続き原油とルーブルの相場に左右される展開が予想されるが、28日のFRB(米連邦準備制度理事会)と30日のロシア中銀の金融政策決定会合、S&Pによるロシアのソブリン債の格下げ決定が相場の焦点となる。アナリストは、今週は利食い売りが強まることやロシア中銀の利下げやS&Pによる格付け維持の可能性が低いいことから、RTS指数には下押し圧力がかかるとして750-800ポイントのレンジを予想している。

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前週のインド株は2週続伸―ECBのQE導入で=BRICs市況

前週(19-23日)のインド株式市場で、代表的株価指数SENSEX指数の23日終値は、前日比0.9%高の2万9278.84となり、週間ベースでも16日終値比1157ポイント(4.1%)高と、昨年6月以来の8カ月ぶりの大幅高となり、2週続伸となった。

週明けの19日は、IMF(国際通貨基金)がインドの2016年度の経済成長率は6.5%増に伸びが加速すると発表したことが好感され、金属株と金融株が値を上げ、SENSEXは1.9%高となった。なかでもハウジング・デベロップメント・ファイナンス(HDFC)は上場来高値を付けた。20日は優良企業の2014年10-12月期決算が好調だったことから一段高となり、SENSEXは1.85%高の2万8784.67と、5営業日続伸し過去最高値を更新した。

21日もECB(欧州中央銀行)が22日の理事会で量的緩和(QE)の導入を決定すればインド株式への資金流入が膨らむとの観測が広がり、ヒンドゥスタン・ユニリーバ(HUL)は4.99%高、バルティ・エアテルも3.96%高、住宅開発金融公社(HDFC)も2.71%高、国営インドステイト銀行(SBI)も2.45%高となる中、SENSEXは0.36%高となった。22日もECBのQE導入期待でSENSEXは0.4%高となり過去最高値を更新。週末の23日もECBのQE導入決定の正式発表を受けて、製薬大手サン・ファーマシューティカル・インダストリーズが7営業日続伸するなどで、SENSEXは0.9%高と、4日連続で過去最高値を更新した。

今週(26-30日)のインド市場に影響を与えそうなイベントとしては、25日のギリシャ総選挙の結果や28日のFRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策決定会合、30日の12月インフラストラクチャー生産高と12月連邦政府財政赤字などが予定されている。26日は共和国記念日の祝日で休場となる。

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前週のブラジル株は3週ぶり反落―電力・給水制限懸念で

前週(19-23日)のブラジル株式市場は、23日のボベスパ指数が前日比1.35%安の4万8775.3となり、週間ベースでも16日終値から0.5%安と、3週ぶりに反落した。月初来でも2.69%安と、下げ幅を広げた。

週明けの19日は、中銀の経済週報「フォーカス・ブルティン」で民間アナリストが2015年実質GDP(国内総生産)伸び率見通しを前週予想の前年比0.4%増から0.38%増へと、3週連続で下方修正したことが嫌気され、電力大手CPFLエネルジアが7.3%安と、2008年以来7年ぶりの大幅下落となる中、ボベスパ指数は2.6%安と、急落した。しかし、20日は国営石油大手ペトロブラスが燃料価格の値下げを否定したことから1.4%高となり、サトウキビ加工のコザンSAインダストリア・エ・コメルシオもガソリンとディーゼルに対する増税の憶測で代替燃料のエタノール需要が高まるとの見方から4.5%高となり、ボベスパ指数は0.2%高と、反発。

21日もECB(欧州中央銀行)が22日の理事会で量的緩和(QE)の導入を決定するとの期待感や原油価格の上昇でペトロブラスが5.4%高となったことから、ボベスパ指数は2.8%高と、大幅続伸した。22日もECBがQEを正式発表したことからブラジル株への投資が拡大するとの観測で、ボベスパ指数は0.4%高と、3日続伸した。しかし、週末の23日は、米証券大手ゴールドマン・サックスが中南米の鉱業部門の投資判断を引き下げたため、鉄鉱石生産大手ヴァーレが売られたほか、今年は干ばつ被害が予想され、電気や給水が制限されるとの一部報道が嫌気され、ボベスパ指数は1.3%安と、4日ぶりに反落した。

今週(26-30日)の株式市場に影響を与えそうな主な経済指標や行事は、ペトロブラスが汚職事件で延期されていた2014年7-9月期(第3四半期)決算を発表するほか、FGV1月消費者信頼感指数(26日)、IGP-MI1月インフレ率(29日)、12月財政収支(30日)など。

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米フォード、Q4決算でベネズエラ関連損失940億円計上

米自動車大手フォード・モーター<F>は、経済危機に陥っているベネズエラの現地子会社が度重なる通貨切り下げやドルの国外持ち出し規制の悪影響を受けて事業の継続が困難になっていることから、今後は、ベネズエラ法人を連結決算から除外する方針だ。米経済情報専門サイトのマーケットウォッチなどが23日に伝えた。

フォードではベネズエラ法人を非連結子会社とするにあたり、29日に発表する予定の2014年10-12月期(第4四半期)決算では、ベネズエラ関連で新たに8億ドル(約940億円)の税引き前損失を計上する。この結果、第4四半期決算の純利益が7億ドル(約830億円)押し下げられる見通し。フォードは2014年通期では特別損失を除いた純利益は60億ドル(約7100億円)になるとの見通しを変えていないが、ベネズエラ関連の費用を反映すると、2009年以来5年ぶりに赤字決算になる可能性が出てきた。

フォードは昨年4月にもベネズエラ関連で通貨切り下げによる3億5000万ドル(約410億円)の損失を計上しており、今回と合わせ2014年全体の損失額は10億ドル(約1200億円)を超えることになる。フォードは現在、ベネズエラ工場で小型車の「フィエスタ」やSUV(スポーツ用多目的車)の「エクスプローラー」を生産しているが、ベネズエラ政府による相次ぐ通貨切り下げやドルの国外持ち出し規制でサプライヤー(自動車部品・資材供給業者)に対し、ドル建ての支払いが困難になるなど事業継続が困難な状況となっている。

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米エクソン、モンタナ州原油漏出事故で1.2億円の罰金支払い命じられる

米石油大手エクソン・モービル<XOM>は先週末、米モンタナ州イエローストーン川で起きた石油パイプラインの破損による大量の原油漏出事故をめぐり、米運輸省から安全管理が不十分だったとし、100万ドル(約1億2000万円)の罰金の支払いを命じられた。米経済専門テレビ局フォックス・ビジネス(電子版)などが伝えた。

また、同社は漏出した原油で土壌汚染の被害を受けた土地所有者から損害賠償を請求されていた民事訴訟でも200万ドル(約2億4000万円)の賠償金を支払うことで和解した。

この原油漏えい事故は2011年に、エクソンが運用・管理している石油パイプライン「シルバーチップ・パイプライン」の一部が同年の夏の洪水で破損し、6万3000ガロン(約24万キロリットル)の原油がイエローストーン川に漏出したもので、85マイル(約136キロ)にわたって河川が汚染され、魚が死ぬなど生態系に悪影響を与えた。

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ロシア政府、銀行危機回避で今年5兆円の金融支援必要に―予測

ロシア政府は今年だけで銀行危機を回避するため、400億ドル(約4.7兆円)超の金融支援が必要になる可能性が出てきた。モスクワ・タイムズ(電子版)などが23日に伝えた。

これはロシア経済が深刻なリセッション(景気失速)に陥り、銀行の融資が焦げ付く恐れがあること、そのため、リスク管理コストや資金調達コストが急増し、また、通貨ルーブルの急落で銀行が保有する資産の評価損が急増することなどが背景にある。銀行の幹部やアナリストはこうした銀行の苦境はますます厳しくなると予想している。

ロシア中銀は今年も1兆2000億ルーブル(約2.1兆円)超の金融支援を実施する方針を示しているが、アナリストは本当に必要な金融支援額の一部にすぎないと批判的だ。米信用格付け大手ムーディーズ・インベスターズ・サービスのロシア在住のヤロスラフ・ソフジャイラ氏は、銀行は現状を維持するだけでも1兆ルーブル(約1.8兆円)をはるかに上回る金融支援が必要になると指摘する。

また、仏金融大手BNPパリバでは、ロシアの銀行は融資を継続し、クレジット損失をカバーするためには、新たに2兆7000億ルーブル(約4.9兆円)の資本増強が必要になると予想している。ロシア金融大手ズベルバンク(ロシア連邦貯蓄銀行)のヘルマン・グレフCEO(最高経営責任者)も先週、ロシアの銀行は原油価格が平均で1バレル=45ドルとなれば、今年だけで3兆ルーブル(約5.4兆円)の引当金を計上する必要があると警告している。(了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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