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主な新興国/米国経済ニュース(8日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

米アルコア、車体部品向けアルミ合金の新製法を開発中―2018年に実用化

米アルミ大手アルコア<AA>は先週の4日、アルミニウムの需要を喚起するため、テキサス州サン・アントニオの試験工場で、乗用車やトラックのドアやフェンダーに使われているスチール鋼板の代替としてアルミニウムの利用を可能にする新しい製造方法を開発中であることを明らかにした。

同社はすでに新製法を「アルコア・マイクロミル」の名称で特許登録している。同社によると、2018年までに従来のアルミニウム製品より強度を30%高め、自動車の車体部品向けにスチール鋼板より30%軽量で変形加工も40%も容易となるマイクロミル鋼板を商品化するとしている。現在、同社は自動車メーカーと共同で試験段階にあり、良好な結果が得られたとしている。

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米スターバックス、米国の一部店舗でビールやワインの販売開始へ

米コーヒーチェーン大手スターバックス<SBUX>は4日、シアトルで開かれた投資家向け説明会で、新5カ年成長戦略(2015-2019年度)を発表した。その中で、同社は米国内の売り上げ低迷に対処するため、来年初めから一部の店舗でコーヒー以外にビールやワイン、夕方の時間帯を狙ったスナックの販売を開始することを明らかにした。このほか、集客対策として、昼食メニューの拡大や、すでにポートランドで開始した「モバイル・オーダー&ペイ」(携帯電話で事前に注文し店舗で商品を受け取る)サービスの拡大で、消費者にアピールして行きたいとしている。

5カ年計画に基づいて、同社は主に昼食メニューの拡大で、米国でのフード全体の売り上げ規模を現在の2倍の40億ドル(約4800億円)超に拡大するとしている。このうち、ビールやワイン、スナックなど夕方のフードメニューは米国内1万1900店のうち、25%に相当する約3000店で提供し、約10億ドル(約1200億円)の新規売り上げを見込んでいる。

また、同社は中国の店舗数を2019年までに3000店超に拡大するとしている。

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1-5日のロシアRTS指数、2週続落―原油・通貨の一段安で

前週(1-5日)のロシア株式市場は、RTS指数(ドル建て)5日終値が前週比6.7%安の908.75と、2週連続の大幅安となった。

引き続き10月27日のOPEC(石油輸出国機構)会合での原油生産量の削減見送り決定を受けて、ロシア経済を支える原油価格が一段安となり、それに伴って、ルーブルも対ドル・ユーロで急落したため、RTS指数は大幅下落となった。

週明けの1日は、後場から原油価格が底を打ったことや海外相場が持ち直し、ロシア市場にも買い安心感が広がったものの、4日のウラジーミル・プーチン大統領の議会演説を控える中でルーブルが下落し、RTS指数は1.64%安となった。翌2日も経済発展省が来年のロシア経済の見通しを0.8%減と、リセッション(景気失速)に入ることを示したのを受けてルーブルが下落する一方で、原油安も嫌気されRTS指数は続落した。しかし、3日はロシア中銀の為替介入でルーブルが反発する中、原油高となり、また、金鉱山最大手ポリウス・ゴールドがロシア政府の金輸出規制で財務省が金鉱山から金を買い取るとの思惑で18.3%高と急騰したことで、RTS指数は2.5%高の大幅高となった。

4日はプーチン大統領の議会演説で、経済制裁や低成長、銀行の流動性調達の困難な状況に対する具体的な経済戦略が示されず期待外れとなったことから失望売りが広がり、ルーブル安と原油安も手伝って、RTS指数は3.16%安と、大反落。週末の5日も原油安がルーブル安を助長する一方で、ウクライナ情勢の悪化で追加制裁の懸念が強まり、さらには、ECB(欧州中央銀行)が4日の理事会で追加の景気刺激策が見送ったことも嫌気され、RTS指数は1.08%安と、続落した。

今週(8-12日)のロシア市場は引き続き、原油とルーブルの相場動向などが焦点となる見通し。アナリストは、もし、原油の下落が進行すれば、RTS指数は850-900ポイントにまで急落する可能性があると見ている。

だが、アナリストは、OPECが原油生産の水準を据え置いたものの、原油価格は依然として安値水準にあることや、今後、冬の厳寒期を迎えて原油需要が高まるため、将来的には、ブレント原油は1バレル当たり77ドルを最初の目標値として買いが入り、それとともにルーブルも反発し、RTS指数は底値を打つ可能性が高いと見ている。

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前週のインド株は7週ぶり反落―利下げ見送りや利食い売りで

前週(1-5日)のインド株式市場で、代表的株価指数SENSEX指数の5日終値は、前日比0.4%安の2万8458.1となった。週間ベースでも11月28日終値比236ポイント(0.8%)安と、7週ぶりに反落した。これは、これまで株価が6週連続で上昇し、過去最高値を更新し続けた反動で、市場では相場の上昇は行き過ぎたとの見方が広がり、利益確定の売りが優勢となったため。

週明けの1日は、インド準備銀行(中銀)の金融政策決定会合を翌日に控えて売りが優勢となり、SENSEXは0.5%安と、反落した。市場では原油安でインフレ率が抑制されているため、金利据え置きの予想が強まったことが背景にある。2日は市場の予想通り、政策金利が5会合連続で据え置かれたことから、SENSEXは利益確定売りに押され続落。3日は11月HSBC製造業PMI(購買担当者景気指数)が7カ月連続で拡大したことが好感され中小型株に買いが入った。4日は政府がたばこのばら売り禁止法案を見送る可能性があるとの一部報道で、インド最大のたばこメーカーITCが上場来高値に急騰し、SENSEXも0.4%高で引けた。

週末の5日は、相場の過熱感で利食い売りが優勢となる中で、タタ・コンサルタンシー ・サービシズが急落する一方で、政府が保有株比率を引き下げたことでスチール・オーソリティー・オブ・インディアも値を下げた。

今週(8-12日)のインド市場に影響を与えそうな主な統計発表は、12日の11月CPI(消費者物価指数)と10月鉱工業生産指数など。

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前週のブラジル株は急落―景気懸念で=BRICs市況

前週(1-5日)のブラジル株式市場は、5日のボベスパ指数が前日比1.1%高の5万1992.89となったが、週間ベースでは11月28日終値から5%安と、急落した。総じて景気懸念が相場を下押しした。

週明けの1日は、中銀の経済週報「フォーカス・ブルティン」で、2014年実質GDP(国内総生産)伸び率見通しが0.19%増へ下方修正されたほか、11月HSBC製造業PMI(購買担当者景気指数)も3カ月連続で低下。また、中国の11月HSBC製造業PMIも8カ月ぶりの低水準となったことで、世界経済は足踏みするとの懸念が強まるなか、鉄鋼大手ウジミナスが5.6%安と、2003年以来の安値を付け、ボベスパ指数は4.5%安となった。

2日も10月鉱工業生産が前年比3.6%減と、市場予想より悪化したことから、ボベスパ指数は続落。3日はジョアキン・レビ次期財務相の景気対策への期待から最近の下げは行き過ぎとの見方が広がり、ボベスパ指数は1.4%高と、反発。4日は中銀の0.5%利上げはインフレ抑制への動きとして評価されたものの、景気懸念で住宅建設大手ロッシ・レジデンシアルが7%安となるなど、ボベスパ指数は1.7%安と、急落した。

週末の5日は、11月IPCA(拡大消費者物価指数)が市場予想に反して伸びが鈍化したことが好感され、中銀の0.5%再利上げ観測が後退し、ボベスパ指数は反騰した。今週(8-12日)の株式市場は、市場に影響を与えそうな主な経済指標や行事は、中銀議事録(11日)、10月小売り売上高(12日)など。

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ロシア国営海運大手ソブコムフロット、来春にNYで新規株式公開へ

ロシアのビクトル・オレルスキー運輸次官は先週末の会見で、来春にもニューヨーク証券市場で、国営海運大手ソブコムフロットの新規株式公開(IPO)を実施する計画を明らかにした。ロシアのプライム通信(電子版)などが伝えた。

これまで、同社のIPOの実施をめぐっては、株式市場の低迷で2度も延期されて生きたが、同次官は、「(ソブコムフロットのIPOに)自信持っている。市場は上向いてきており、このタイミングを待っていた。IPOはニューヨーク証券取引所で実施する可能性が高い」と述べている。また、経済発展省は、ソブコムフロットのIPOは国が現在、100%保有している株式の25%超を2014年以降に実施するよう提案しており、すでに幹事社にはドイツ銀行が指名されている。

政府では同社のほか、ロシア国営石油・天然ガス開発大手ロスネフチ、ロシア通信最大手ロステレコム、港湾運営大手ノボロシスク・コマーシャル・シーポートの株式売却で、計2000億ルーブル(約4600億円)の資金を市場から調達する計画だ。(了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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