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主な新興国/米国経済ニュース(22日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

15-19日のロシアRTS指数、2週続落―AFK会長逮捕で=BRICs市況

前週(15-19日)のロシア株式市場は、RTS指数(ドル建て)の19日終値が前週比3.5%安の1170.25と、週間ベースで2週続落となった。司法当局が16日夕に複合企業大手AFKシステマのウラジーミル・イェフトゥシェンコフ会長を資金洗浄の容疑で逮捕し自宅軟禁下に置いたのを受けて、同社と傘下の石油子会社バシネフチの株価が17日から急落したのをきっかけに地合いが悪化した。

週明けの15日は、米国が12日に新たな対露制裁を発動したことからロシア政府も報復制裁第2弾の用意があることを表明し、ウクライナ危機が悪化するとの懸念が広がり、また、原油安も加わって、ルーブルもドルに対し過去最安値を付けたことで、売りが広がり、RTS指数は1.53%安と、急落した。

16日はウクライナ情勢が落ち着いたことや、アレクセイ・モイセーエフ財務次官が西側の対露制裁で欧州市場での資金調達が困難となっている銀行を支援する方向で財務省と中央銀行が協議していると発言したのを受けて、株価は反発。しかし、AFKシステマのイェフトゥシェンコフ会長の逮捕のニュースで一夜明けた17日はAFKが36.92%安、バシネフチの優先株も20.53%安と、ろうばい売りとなったため、モスクワ証券取引所は取引制限を発動し、RTS指数も0.99%安となった。

18日は手掛かり材料難から方向性に乏しい相場展開となる中、RTS指数は0.24%安と続落。週末の19日も欧州議会がロシアとの戦略的協力関係の破棄や、ロシアを銀行間の国際金融決済通信ネットワーク「スイフト(SWIFT)」から除外すること、さらにはロシア産天然ガスを黒海経由で欧州各国に送るガスパイプライン「サウスストリーム」の建設参加拒否などを求める決議を採択したことや、AFKシステマ会長の逮捕の余波に対する懸念から、RTS指数は1.43%安と、3日続落した。

今週(22-26日)のロシア市場は、引き続きウクライナ情勢や、ロシアがSWIFTから除外されるのかなど西側の対露制裁が市場の関心を集めると見られるが、全般的に弱気相場になる見通し。

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前週のインド株は6週続伸―米国の超低金利継続などで=BRICs市況

前週(15-19日)のインド株式市場で、代表的株価指数SENSEX指数の19日終値は、前日比0.1%安の2万7090.42と、反落したが、週間ベースでは12日終値比29ポイント(0.1%)高と、6週連続の上昇となった。

この背景には、17日のFRB(米連邦準備制度理事会)のFOMC(公開市場委員会)で政策金利が据え置かれ、ジャネット・イエレン議長が会合後の会見で、相当の期間、超低金利政策を維持する考えを示したことや、19日のスコットランドの独立の是非を問う住民投票で独立反対派が勝利したことから市場に安ど感が広がったことがある。

週明けの15日は、FRBが17日の会合で早期利上げを決めるとの憶測で利益確定売りが広がり、SENSEXは0.9%安と、反落した。16日も米国の早期利上げ観測が重石となり、SENSEXは1.2%安と、8月1日以来6週ぶりの大幅下落となった。インド鉄鋼大手タタ・スチールは政府の国内の鉱山閉鎖命令が嫌気され、3.45%安と、急落している。

しかし、17日はFRBの早期利上げ観測が後退したことや、中国政府が主要銀行への流動性供給を決めたことが好感されて、SENSEXは0.52%高と、反発。18日もFRBが超低金利制政策の維持を決めたことや、中国がインドに5年間で200億ドル(約2.2兆円)を投資することで合意したことから、SENSEXは1.8%高と、急騰した。週末の19日は小反落となった。

今週(22-26日)のインド市場の見通しについては、アナリストは、主な経済指標の発表がないことから、市場は30日の中央銀行の金融政策決定会合に関心が集まると見ている。また、海外では22日のマリオ・ドラギECB(欧州中央銀行)総裁の講演や26日の米4-6月期GDP(国内総生産)伸び率(確定値)が注目点となる。

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前週のブラジル株は3週ぶり反発―世論調査で一進一退の中=BRICs市況

前週(15-19日)のブラジル株式市場は、10月の大統領選挙を控え、野党候補のマリナ・シルバ氏と現職のジルマ・ルセフ大統領の支持率をめぐって売り買いが交錯する中で、19日のボベスパ指数が12日終値から1.51%高の5万7788.7と、3週ぶりに反発した。まだ、月初来で5.71%安と、相場は落ち込んだままだが、年初来では12.19%高と、前年水準を上回っている。

週明けの15日は、10月の大統領選挙でシルバ氏が当選するとの見方で、ブラジル銀行が2.7%高となるなど政権交代で国営企業の業績が改善するとの思惑で買われ、ボベスパ指数は1.8%高と、急騰。16日も同じ思惑で国営石油大手ペトロブラスが4.9%高となり、ボベスパ指数は2%高と、3週ぶりの大幅上昇となった。

17日は様子見の中、横ばいだったが、18日は自国通貨レアルが下落したことからインフレの伸びが加速し、中銀は利上げに転じるとの観測で消費セクターが売られた。週末の19日は最新の世論調査でシルバ氏の支持率が低下したことや、米FRB(連邦準備制度理事会)傘下のダラス地区連銀のリチャード・フィッシャー総裁が来年4-6月期にFRBが利上げに転換するとの見方を示したことから、売りが広がり、ボベスパ指数は1%安と、2日続落した。

今週(22-26日)の株式市場は、引き続き、大統領選挙を控えた世論調査の結果が市場の焦点になる見通し。また、主な経済指標や行事は、経済研究・教育機関ジェトゥリオ・バルガス財団(FGV)の9月景況感調査(23日)、8月経常収支(24日)、8月失業率(25日)などの発表が予定されている。

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エクソン、北極圏ロシア領での油田掘削停止へ―西側の対ロ追加制裁で

米石油大手エクソン・モービル<XOM>は先週末、ウクライナ危機に絡んだ西側の対ロ制裁第4弾が実施されたのを受けて、ロシア国営石油・天然ガス開発大手ロスネフチとのロシアでの合弁事業の一環として、先月、北極圏ロシア領南カラ海の油田鉱区で開始した探鉱のための試掘井の掘削活動を停止する方針を明らかにした。英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)などが伝えた。

これは、対露制裁第3弾では探鉱のための掘削については、法的に問題はなかったが、今度の制裁内容が強化された第4弾では法的に探鉱活動の継続が困難となったため。これに伴い、米財務省はエクソンに対し、即時停止による安全操業や環境などへの悪影響を回避するため、今冬までに活動を停止できるよう短期間の操業許可を与えることを了承した。このエクソンの探鉱費用は7億ドル(760億円)となっている。

第4弾ではEUと米国の企業による北極圏ロシア領や大陸棚、オイルシェール(油母頁岩)でのロシアへの石油関連サービスの提供禁止は、生産だけでなく、今後は油井の掘削や埋蔵量確認の試掘に関するサービスの提供も禁じられる。これに従って、9月26日までに探鉱活動を停止し、米国の作業員を退去しなければならないが、エクソンの場合、今回は財務省から今冬までの時間的猶予が与えられた。この短期操業許可は更新できず操業の延長は認められていない。

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GM、キャデラックなど22万台超をブレーキの不具合でリコールへ

米自動車最大手ゼネラル・モーターズ<GM>は20日、2013-2015年型のセダン車、「キャデラックXTS」と「シボレー・インパラ」の電動パーキングブレーキ装置に不具合が見つかったとして、米国内だけで計20万5309台(全世界で22万1558台)をリコール(無償回収・修理)することを明らかにした。米経済専門オンラインメディア、CNNマネーなどが伝えた。

リコールの対象となるのは、2013-2014年型のキャデラックXTSと2014-2015年型のシボレー・インパラ。同社によると、この不具合を放置しておくと、発火する恐れがあるとしているが、これまでのところでは衝突事故や死傷者が発生した報告の事例はないとしている。これまでに同社は今年だけで65回以上、約3000万台のリコールを実施している。

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米ヤフー、米同業大手AOLの買収資金調達で中国・アリババ株売却か

米インターネット大手ヤフー<YHOO>と米インターネットサービス大手AOL<AOL>の合併の憶測はここ数年続いているが、最近、両社の合併のうわさが強まってきた、と米経済専門オンラインメディア、CNNマネーが先週末に伝えている。

これは、ヤフーが一部出資している中国のインターネット大手アリババが先週末に過去最大規模のIPO(新規株式公開)を実施したことから、ヤフーがアリババの株価急騰に乗じて保有株の一部を売却し、50億ドル(約5500億円)以上の資金を調達し、AOLの買収資金に充てるとの見方が広がっているためだ。アリババの株価はIPO時の公開価格を約40%上回り急騰している。

米証券大手BGCパートナーズは18日付の顧客向けリポートで、ヤフーはAOLを買収するため、アリババのIPO実施後に持ち株を売却する可能性がある、と指摘している。AOLの時価発行総額は34億ドル(約3700億円)のため、単純計算では50億ドルの買収額はAOLの株価に対し50%のプレミアム(上乗せ額)となる。

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ロシア経済発展相、対露制裁の2015年解除は困難で長期化必至と警告

ロシアのアレクセイ・ウリュカエフ経済発展相は20日、ソチで開かれた国際投資フォーラムで、ウクライナ危機に絡んだ西側の対露制裁の見通しについて、「(今回の第4弾の対露制裁に続いて)新たな制裁措置は導入される可能性は低い」との見方を明らかにした。ただ、「これまでに発動された対露制裁は、ウクライナ情勢の進展に関係なく、仮にウクライナと和平合意しても、制裁は解除されず、かなり長期化する」との見方を示した。ノーボスチ通信(電子版)が伝えた。

同相は、「ロシア政府では対露制裁は2015年に解除されると予測しているものの、私個人としては、そうなる(2015年に解除)とは思っていない」と悲観的な見方だ。また、同相は、「西側の対露制裁のロシア経済への悪影響は、2016-2017年に起こる」とし、「政府としては、非生産的な西側への報復制裁を導入すべきではなく、制裁の悪影響を被る企業などへの支援策を打ち出す必要がある」とも述べている。(了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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