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主な新興国/米国経済ニュース(3月4日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

ロシア鉄鋼・石炭大手メチェル、先週末に株価が一時40%下落

信用不安が広がっているロシア鉄鋼・石炭大手メチェルの株価が先週末、モスクワ証券取引所で、一時40%安の31.7ルーブルへと急落し過去最安値を付けた。モスクワ・タイムズ(電子版)などが3日に伝えた。

同社の株価は、先週末の現地時間午後6時時点で25.1%安の39.6ルーブルとなったが、同社では資金繰りは安定しており、今回の急激な株安は投機によるものと見て、すでにロシア中銀に対し事実関係の調査を要請したとしている。

一方、今回の株価急落について、トレーダーやアナリストは、同社の債務問題の解決が困難と判断した一部の投資家が投げ売りしたか、あるいは、信用買いに必要な資金を借り入れるための担保として銀行に差し出した同社株が追加保証金(追い証)との絡みで売られたと見られている。また、もともと同社の株式の流通性が低いことも株価の急激な変動を招いたとしている。

過去にも、同社の株価は昨年11月13日に一時40%下落している。当時は債務再構築に対する懸念が原因だった。その後、同社は2013年末までに主要取引銀行との間で新しい融資契約を結んでいる。

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インドネシアのメディア大手インターメディア、27日にIPO実施へ

インドネシアのテレビ局ANTVの親会社として知られるメディア大手インターメディア・キャピタルは今月27日にインドネシア証券取引所(IDX)で新規株式公開(IPO)を実施する。同社はこれに先立ち、20-21日に発行済み株式の15%に相当する5億8823万株を売り出し最大で1兆1400億ルピア(約100億円)の資金を調達する計画。ジャカルタ・グローブ(電子版)などが先週末に伝えた。

株式の売り出しは1株当たり1380-1930ルピア(約12-17円)で、調達額は8117億6000万-1兆1400億ルピア(約70億-100億円)になる見通し。調達資金の約80%は設備投資資金に、また、10%は債務返済、残りは運転資金に充当されるとしている。

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ベトナム中銀、1-3月期に銀行から480億円相当の不良債権買い取りへ

ベトナム中央銀行傘下の銀行不良債権買い取り専門会社(VAMC)は、今年1-3月期中に、国内の金融機関から10兆ドン(約480億円)の不良債権を買い取る計画を明らかにした。ベトナムの声・ハノイ放送局(電子版)が先週末に伝えた。

これはVAMCのグエン・クオック・フン副会長が記者会見で明らかにしたもので、同副総裁は前期(2013年10-12月)に35の金融機関から不良債権を購入したとしている。

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米シューズ大手デッカーズ、業績見通しが予想下回り株価急落

米シューズ大手デッカーズ・アウトドア<DECK>が先週、発表した2013年10-12月(第4四半期)決算は、売り上げが堅調となったことに加え、粗利益率が上昇したことから、純利益が前年比44%増の1億4090万ドル(約140億円)、1株当たり利益(希薄化後)も同46%増の4.04ドルとなり、会社予想の同32%増を上回る高い伸びとなった。

売上高は同19%増の7億3600万ドル(約750億円)と、過去最高を記録し、これも会社予想の14.5%増を上回った。粗利益率は前年同期の46.3%から51.1%に上昇している。

しかし、今期1-3月期(第1四半期)の業績見通しは、利益面では28店舗の新規開設費を含む営業経費の増大が響いて1株当たり16セントの赤字、売り上げは6%増になるとしたが、アナリストの9セントの黒字と12%増の売り上げの予想をいずれも下回った。通期見通しについても1株当たり利益は8%増になるとしたが、アナリスト予想の12%増を下回った。ただ、売上高は10%増とし、アナリスト予想の8.7%増を上回った。

業績見通しが市場予想を下回ったのを受けて、同社の株価は28日、12.19%安の74.35ドルと、急落して引けた。その後の時間外取引でも米東部時間午後7時59分時点で0.47%安の74ドルと、一段安となっている。

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米コムキャスト、オンライン広告配信のフリーホイール買収で近く合意

米ケーブルテレビ最大手コムキャスト<CMCSA>は、オンライン広告の技術サポートを提供している米フリーホイールを約3億2000万ドル(約330億円)で買収する協議が近くまとまる見通しだ。米経済情報専門サイトのマーケットウォッチなどが2日に関係筋の話として伝えた。

フリーホイールは、テレビ局やオンラインメディアのウェブサイトの閲覧者に対し、閲覧者の居住地域や過去の閲覧履歴に応じて適切なオンライン広告を配信する技術サポートを提供している。コムキャストはフリーホイールを買収することによって、同社のオンラインビデオ事業を拡大したい考え。すでに、コムキャストはここ数年、オンラインビデオのポータルサイトやケーブルテレビの契約者がPCやタブレット、スマートフォンを使ってストリーム方式でテレビ番組を視聴できるアプリケーションへの投資を拡大している。フリーホイールは買収されたあとも独立した企業として存続する。

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ロシア中銀、急きょ政策金利を1.5%引き上げ-ウクライナ情勢緊迫の中で

ロシア中央銀行は3日、臨時の金融政策決定会合を開き、旧ソ連ウクライナ南部のクリミア地方へのロシア軍の侵攻や、ロシア上院が1日にウクライナへの武力行使を認めたことから両国の軍事衝突の懸念が高まる中で、ロシアの株式市場や自国通貨ルーブルが急落したことから、金融市場の混乱に対処するため、主要政策金利である資金供給のための1週間物入札レポ金利と資金吸収のための1週間物入札預金金利を従来の5.5%から一時的に1.5%ポイント引き上げて7%とすることを決めた。

新金利はモスクワ時間の同日午前11時(日本時間3日午後4時)から実施された。中銀は声明文で、ウクライナ情勢には直接言及していないものの、「インフレ上昇が加速するリスクと、最近の金融市場の混乱の度合いが強まっていることから金融市場の安定を脅かすリスクに予防的に対処するため」とだけ述べている。また、中銀は次回の金融政策会合を3月14日に開くとしている。

一方、ノーボスチ通信(電子版)などによると、ルーブルは3日午前の為替市場で、ドルやユーロに対し、過去最安値を更新し、中銀はルーブル安の下落を阻止するため、3日だけで100億ドル(約1兆円)以上の市場介入を実施したもようだ。一方、株式市場では、MICEX指数は11%以上、また、ドル建て表示のため、為替相場の変動の影響を受けやすいRTS指数は一気に13%も下落するなど、金融市場の混乱が広がった。

ロシアはウクライナのビクトル・ヤヌコビッチ大統領の事実上の退陣に伴う新政権を承認しておらず、ウクライナ国内のロシア系市民を民族主義者による暴動から保護する必要があるとして、すでに、ロシア軍は親ロシアのクリミア地方をほぼ掌握している状況にある。(了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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