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主な新興国/米国経済ニュース(12月24日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

16-20日のロシアRTS指数、1429.91―急伸=BRICs市況

前週(16-20日)のロシア株式市場は、米FRB(連邦準備制度理事会)が18日に第3弾量的金融緩和(QE3)の段階的縮小を決定したことや、米国の2014-2015年の経済見通しが上方修正されたことで世界経済に楽観的な見方が広がったため、RTS指数(ドル建て)の20日終値は前週比2.7%高の1429.91と、急伸し2週続伸となった。1400の大台に値を戻したのは11月29日で終わった週の1402.93以来3週ぶり。

週初(16日)のRTS指数は、欧米の経済統計が強い結果となったことや、信用不安が広がっているロシア鉄鋼・石炭大手メチェルが新たに取引先銀行との債務の再構築で合意して3%高に急伸したことを好感して、RTS指数は1.1%高の1407.25と、1400の大台に乗った。

17日以降も米国のQE3縮小は来年から経済状況を見ながら段階的に進むとの見方が強まり、18日にはドイツの12月IFO企業景況感指数が8カ月ぶりの高水準となったことや、ウラジーミル・プーチン大統領が2014年ソチ冬季五輪に先立って政敵で石油大手ユーコスCEO(最高経営責任者)だったミハイル・ホドルコフスキー氏に恩赦を与えるとの発表も手伝って、RTS指数は上昇し、16日以降4日続伸となった。しかし、週末(20日)は手掛かり材料難の中、これまでの相場急伸への高値警戒感から利食い売りに押され、RTS指数はやや低下した。

今週(23‐27日)のロシア市場の見通しについて、アナリストは、FRBのQE3の来年1月からの段階的縮小で新興国経済に悪影響が及ぶ恐れがあることや、ロシア株式市場からの資金流出が続き利益確定売りが強まる可能性があり、RTS指数の上値抵抗線は1440-1450になると見ている。他方、クリスマス休暇を控えて閑散取引となる中で、新年の株高を見越して買い注文が増え上値を試す展開になるとの見方もある。

今週の相場に影響を及ぼす主な統計としては、米国では11月個人所得・支出統計(23日)や11月耐久財新規受注額(24日)、11月新築住宅販売件数(24日)、週間新規失業保険申請件数(26日)、また、アジアでは、日本の金融経済月報(24日)や日銀金融政策決定会合の議事要旨(26日)、11月全国CPI(消費者物価指数、27日)、11月失業率・大型小売店販売額(27日)、欧州ではドイツ11月輸入物価指数(23日)やフランス7-9月期GDP(国内総生産)伸び率改定値(24日)などが予定されている。

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ウクライナ首相、EU加盟協議は条件次第で調印の可能性示す

ウクライナのミコラ・アザロフ首相は21日、地元国営放送局インターTVのインタビューで、先週、ロシアとの間で、当面のデフォルト(債務不履行)を回避するために必要な緊急融資とロシア産天然ガスの販売価格の引き下げを含む総額200億ドル(約2.1兆円)の経済支援に合意したあとも、引き続き、EU(欧州連合)加盟協議を進めていく考えを明らかにした。地元紙キエフ・ポスト(電子版)がロシアのノーボスチ通信の報道を引用して伝えた。

また、同相は、「EU加盟協議は話し合いの条件がウクライナにとって有利であれば調印する。ロシアからの金融支援でウクライナは2011年当時の国力を取り戻すだろう。そのあとでEU加盟協議を終わらせ、EU加盟協定に調印する。それは時間の問題だ」と述べている。

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インドネシア預金保険公社、ムティアラ銀行に公的資本注入へ

インドネシア預金保険公社(LPS)のサムス・アディ・ヌグロホ総裁は先週末、経営再建中のムティアラ銀行(旧・センチュリー銀行)に対し、バーゼル銀行監督委員会の自己資本充実度部評価プロセス(ICAAP)で定められた最低自己資本比率14%を達成するため、新たに公的資金を注入する方針を明らかにした。ただ、資本注入額については明らかにしていない。アンタラ通信(電子版)が20日に伝えた。

同行に注入する公的資金は国の予算を使わず、LPSが銀行から徴収した預金保険料収入から充当するとしている。

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ベトナム国営建築資材大手ビグラセラ、来年2月に新規株式公開へ

ベトナムのハノイ証券取引所は21日、国営の建築資材大手ビグラセラが来年2月20日に新規株式公開(IPO)を実施することを明らかにした。ベトナム通信(電子版)が伝えた。

IPOでは、同社は発行済み株式の25.06%に相当する7690万株を1株当たり1万0300ドン(約50円)で売り出す。同社の資本金は3兆0700万ドン(約150億円)。また、現在、同社の株式の74.17%は国によって保有されているが、0.77%の株式を従業員に売却する計画だ。

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ベトナム株式市場、米QE3縮小による資金流出は限定的―アナリスト

先週、米FRB(連邦準備制度理事会)が来年1月から第3弾量的金融緩和(QE3)の段階的縮小を決定したにもかかわらず、ベトナムの金融アナリストの多くは、株式市場からの外国人投資家の資金流出は限定的になると見ている。ベトナム通信(電子版)が21日に伝えた。

ベトナム証券大手MB証券のアナリスト、ホアン・コン・トゥアン氏は、「ベトナムを含む新興国から外国の投資資金が大量に引き揚げられることはない」としている。その理由として、同氏は、「QE3の段階的縮小によって米国債の利回りが上昇するが、これは米国経済の回復が続いていることを示すもの。長期的に見ても強い米国経済は、特にベトナムは米国にとって重要な貿易相手国であることを考えれば、むしろ、ベトナム経済に良い影響を与える」としている。

また、MHB証券のホアン・タック・ラン株式部長は、「ベトナムへの間接投資は相当額になっているので、短期的には投資資金の引き揚げは起こりうる。しかし、来年のベトナム株式市場への外国からの間接投資額は流出額を上回り、流入超となるだろう」と予想している。

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米ソフト大手レッドハット、9-11月期は利益・売上高ともに予想上回る

オープンソースOS(基本ソフト「リナックス」で知られる米ソフト大手レッドドハット<RHT>が先週、発表した9-11月期(第3四半期)決算は、売上高が大幅増となったことから純利益は前年比49%増の5200万ドル(約54億円)、1株当たり利益(希薄化後)も同50%増の27セントとなった。また、調整後1株当たり利益は同45%増の42セントとなり、アナリスト予想の35セントを上回った。

一方、売上高も同15%増の3億9700万ドル(約410億円)となり、アナリスト予想の3億8310万ドル(約400億円)を上回った。また、同社は通期の業績見通しについて、調整後1株当たり利益を前回予想の1.36-1.38ドルから1.46-1.48ドルへ、また、売上高も前回予想の15億1000万‐15億2000万ドル(約1570億-1580億円)から15億3100万‐15億3400万ドル(約1590億-1600億円)へ、いずれも上方修正した。これはアナリスト予想の1株当たり利益1.38ドル、売り上げ15億2000万ドルを上回っている。

また、米証券大手イモンド・ジェームズ・ファイナンシャルのアナリスト、マイケル・ターリッツ氏は、同社投資判断を「「マーケットパフォーム(中立)」から「アウトパフォーム」へ引き上げた。こうした強い決算結果を受けて、同社の株価は20日、14.49%高の56.1ドルと急騰している。

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米中古車販売大手カーマックス、9-11月期は1株当たり利益予想下回る

米中古車販売大手カーマックス<KMX>が先週末に発表した9-11月期(第3四半期)決算は、純利益が前年比12%増の1億0650万ドル(約110億円)、1株当たり利益(希薄化後)も同15%増の47セントとなったが、アナリスト予想の49セントを下回った。

また、売上高は同13%増の29億4000万ドル(約3060億円)となり、アナリスト予想の29億ドル(約3020億円)を上回った。売り上げのうち、主力の中古車販売は全体では前年比15%増(既存店ベースで10%増)となった。同社では12月から今後1年間に、新たに大型店17店舗を開設する計画。この四半期決算の結果を受けて、同社の株価は20日、9.37%安の48.08ドルと、急落して引けている。

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ブラジル中銀週報:2013-2014年インフレ率見通し、下方修正

ブラジル中央銀行が23日に発表した先週の経済週報「フォーカス・ブルティン」によると、同中銀の委託を受けた民間アナリストが予想したIPCA(拡大消費者物価指数)で見たインフレ見通しは、2013年は前週予想の前年比5.7%上昇から5.72%上昇へ下方修正(悪化方向)された。1カ月前の予想は5.82%上昇だった。また、2014年の見通しについても前週予想の5.95%上昇から5.97%上昇へ下方修正された。下方修正は2週連続。1カ月前の予想は5.92%上昇だった。

また、2014年末時点の政策金利見通しは、前週予想の10.5%のまま据え置かれた。据え置きは4週連続。1カ月前の予想は10.5%だった。次回来年1月の金融政策決定会合時の政策金利見通しも前週予想の10.25%のまま据え置かれた。据え置きは8週連続。

2013年実質GDP(国内総生産)伸び率見通しは、前週予想の前年比2.3%増のまま据え置かれた。1カ月前の予想は2.5%増だった。しかし、2014年のGDP伸び率見通しも前週予想の同2.01%増から2%増に下方修正された。下方修正は3週連続。1カ月前の予想は2.1%増だった。

一方、為替レートの見通しについては、2013年末時点のレアルの対ドルレート(中央値)は、前週予想の1ドル=2.33レアルから2.34レアルに引き上げられた。引き上げは2週連続。2014年末時点の見通しも前週予想の2.43レアルから2.45レアルに引き上げられた。引き上げは2週連続。(了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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