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主な新興国/米国経済ニュース(12月5日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

ウクライナのユーロ債、政情不安で下落続く―CDSスプレッドもワイド化

EU(欧州連合)加盟交渉が失敗に終わり政情不安と抗議デモで社会混乱が続くウクライナのユーロ債の価格は3日も下落が続いた。ウクライナの10年物ユーロ債の対米国債利回りにスプレッドは30-50ベーシスポイント(0.3-0.5%ポイント)拡大し、2023年償還の10年物ユーロ債の価格は3ベーシスポイント(0.03%ポイント)低下の82-82.75となっている。ロシアのプライム通信(電子版)が3日に伝えた。

さらに、ウクライナ5年国債のCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)も同日現在で、同国の政治・社会情勢の悪化で投資リスクが高まったことから1072ベーシスポイント(10.72%ポイント)と、2009年に記録した1121ベーシスポイント(11.21%ポイント)以来4年ぶりの高水準に達した。数日前は約1000ベーシスポイント(10%ポイント)だった。これは5年国債の元本1000万ユーロ当たりの年間プロテクション購入コスト(国債保証コスト)が100万ユーロから107万2000ユーロに上昇したことを意味する。

また、ウクライナの株式市場も主要株価指数のUX指数がモスクワ時間3日午後7時45分時点で1.62%下落した。前日の2日は0.42%安だった。ウクライナ通貨フリブナの3日の為替相場は1ドル=8.235-8.245フリブナと、中銀の公定レート(7.99フリブナ)に比べてドル高・フリブナ安で推移している。

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住友生命、インドネシアのBNIライフ・インシュアランスと資本提携へ

住友生命保険は2日、インドネシア4位の国営金融大手バンクネガラインドネシア(BNI)の生命保険子会社BNIライフ・インシュアランスの新株発行による第3者割当で発行済み株式の約40%を4兆2000億ルピア(約360億円)で取得することで合意したことを明らかにした。

住友生命は、2005年に中国人民人寿保険を設立し、また、2012年にはベトナムのバオベト ホールディングスと戦略的業務提携を結ぶなど、アジア市場での事業強化に取り組んできており、今回のBNIライフ・インシュアランスとの資本提携もアジアを中心とした海外市場戦略強化の一環としている。

住友生命はBNIライフ・インシュアランスの第2位の株主となり、監査役と取締役を派遣し、販売チャネル開発やリスク管理、システム開発、資産運用などの分野で技術支援を実施するとしている。

日本の生命会社のインドネシア進出は第一生命保険が今年6月にインドネシアの同業大手パニン・ライフの株式40%を約3兆3000億ルピア(約280億円)で取得することで基本合意したのに続く2社目となる。

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世銀、ベトナムの今年の成長率5.3%増と予想―政府予想下回る

世界銀行は2日に発表したベトナムの経済開発の現状を評価する半期リポートで、同国の今年の経済成長率は約5.3%増と、ベトナム政府の予想を0.1%ポイント下回るとの見通しを明らかにした。ベトナム通信(電子版)が3日に伝えた。

また、世銀は、ベトナム経済は2015年には5.5%増に拡大すると予想したものの、伸びは緩やかで、景気悪化リスクとして、外貨準備残高の減少や民間設備投資の低下、構造改革の遅れ、銀行セクターの脆弱化などが考えられるとも指摘している。

世銀のベトナム担当のチーフエコノミスト、サンディープ・マハヤン氏は、同リポートで、ベトナムの今年の民間設備投資の伸びは11.5%増と、2007-2010年の平均15%増を下回る見通しで、国営企業の株式会社化が今年はわずか43件にとどまるなど経営改革が遅れていることや、民間セクターの景況感の悪化などが成長率の鈍化の原因となっている、としている。

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ポーランド中銀、政策金利を2.5%に据え置き―市場の予想通り

ポーランド中銀は4日の金融政策委員会(RPP)で、主要政策金利の7日物レファレンス金利を市場の予想通り、現行の過去最低水準の2.5%を維持することを決めた。また、中銀は他のロンバート金利と預金金利、再割引金利もそれぞれ4%、1%、2.75%のまま据え置いた。

7日物レファレンス金利は昨年11月の会合で3年5カ月ぶりに利下げに転換して以降、7月の会合まで8回連続して引き下げ、下げ幅も合計で2.25%ポイントに達したが、それを最後に政策金利は変えていない。

中銀は前回11月6日の政策決定会合後に発表した声明文で、「景気回復が緩やかに進んでいることやインフレ上昇圧力が弱いことを勘案すると、政策金利は少なくとも2014年半ばまで据え置くべきだ」とし、当面は金融政策を現状のまま維持する考えを明らかにしていた。

次回の金融政策決定会合は来年1月7-8日に開かれる予定。

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米電気自動車テスラ、独運輸当局の“シロ”判定で株価急騰

米電気自動車専業のテスラ・モーターズ<TSLA>は3日、ドイツ政府の運輸安全委員会から10‐11月に米国のワシントン州シアトルとテネシー州、メキシコの3カ所で、同社の人気車種「モデルS」のバッテリーが原因と見られる発火事故について、同モデルの製造や設計に問題はなかったとする“シロ”判定の通知を受けたことを明らかにした。米紙USAツデー(電子版)などが伝えた。

これを受けて、テスラの株価は3日、16.35%高の144.7ドルに急騰した。ドイツの運輸安全委員会はテスラから発火事故に関する資料の提供を受けて独自に調査を進めていたが、今回、テスラに送った書簡では、シアトルとテネシー州の発火事故は、バッテリーが道路の障害物に衝突して発火したもので、いずれも運転者は自動車を停止し、車から離れた後に発火したとした。メキシコの事故については衝突後に発火したと断定し、その上で、モデルSに固有の欠陥は見当たらなかった、としている。

一方、米運輸省高速道路交通安全局(NHTSA)は先月、正式に調査を開始したことを明らかにしたが、まだ結論は出ていない。米証券大手モルガンスタンレーのアナリストは3日、顧客向けリポートで、モデルSの発火事故はテスラの業績に悪影響を与えないとして、テスラ株を自動車セクターの特選銘柄に指定したとしている。

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米ドラッグストア大手ウォルグリーン、9-11月期売上高6%増―市場予想と一致

米ドラッグストアチェーン大手ウォルグリーン<WAG>が4日に発表した11月の既存店ベースの売上高は薬局部門(前年比4%増)が好調だったことから前年比3.2%増となり、アナリスト予想の伸び率と一致した。一方、総売上高は同4.1%増の60億7000万ドル(約6200億円)だった。

また、9-11月期(第1四半期)の総売上高は前年比6%増の183億5000万ドル(約1.9兆円)となり、アナリスト予想と一致した。既存店ベースの売上高は同5.5%増だった。この結果を受けて、同社の株価は米東部時間4日午前11時11分時点で、0.69%安の58.31ドルとなっている。(了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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