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ブラジル大統領、市民デモ鎮静化狙い大幅譲歩―2.2兆円の公共輸送投資など提案

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

ブラジルのジルマ・ルセフ大統領は24日、国内各地で2週間以上にわたって続いている市民抗議デモの鎮静化を目指して、公共輸送サービスの改善のために500億レアル(約2.2兆円)の交通インフラ投資を行うことや腐敗政治からの脱却を目指す政治改革の是非を問う国民投票の実施など5項目の新提案を発表した。国営通信アジェンシア・ブラジル(電子版)などが伝えた。

これはルセフ大統領が今月初めにサンパウロで起きたバス料金の値上げに反対する市民抗議デモを主催した活動家グループとの会談後に明らかにしたもの。また、同大統領は国内27州の知事と主要26都市の市長を集めた会議を開き、抗議デモで要求が上がっているさまざまな政治や経済、教育、健康などに関する改革問題について協議した結果、大統領の5項目の提案を了承した。

5項目の提案は、(1)政府はインフレ抑制と財政健全化に全力を注ぐ(2)政治改革を進める憲法制定会議の開催の是非を問う国民投票を実施するとともに汚職を厳しく処罰する法律を制定する(3)公的保険制度である統一保険医療システム(SUS)の改善策として、特に遠隔地の医師不足に対処するため、外国人医師の積極的な採用や病院や緊急医療施設などへの投資拡大などで健康・医療サービスの向上を図る(4)石油開発から得られるロイヤルティ収入の100%とプレソルト(岩塩)層の石油開発からのロイヤルティ収入の50%を教育投資に向ける―となっている。 (了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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