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主な新興国経済ニュース(5月10日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

チェコ、13日から個人向け国債を販売開始-募集額は最大1千億円

チェコのミロスラフ・カロウセク財務相は来週の13日から最大200億コルナ(約1000億円)の個人向け国債の販売を開始することを明らかにした。プラハ・デイリー・モニター(電子版)が7日に伝えた。

今回の個人向け国債は期間1年半-7年の5種類で、年平均利回りは期間1年半の割引国債は1.7%、3年債は2.46%、5年債は2.82%、5年債(再投資型)は3.07%、期間7年のインフレ連動債はインフレ率に応じて決められる。政府では今年のインフレ率は2.1%上昇を予想している。

同国の最初の個人向け国債は2011年に発行されており、その時は200億コルナ超の募集があった。昨春の発行額は約150億(約750億円)コルナ、昨秋は300億コルナ(約1500億円)だった。

今回の個人向け国債では15%の税負担が課せられるが、税金分が国債の販売価格で調整しており、個人投資家に有利になるようにしているという。募集期間は今月31日までだが、200億コルナに達した時点で募集は打ち切られる。

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インドネシア農園大手ダルマ、来月にIPO実施へ

インドネシア農園大手ダルマ・サティア・ヌサンタラはこのほど、来月をメドにインドネシア証券取引所で新規株式公開(IPO)を実施する計画を明らかにした。ジャカルタ・グローブ(電子版)が8日に伝えた。

同社はIPOで発行済み株式の21.3%に相当する5億株を1株当たり1780‐2150ルピア(約18-22円)で売り出し、総額で1兆ルピア(約100億円)の資金を調達したいとしている。IPOで調達した資金は、カリマンタンでの食用油でバイオディーゼル燃料としても使われるパーム油の事業拡大に充てる予定。IPOの引き受け幹事社はチプタダナ証券金融最大手バンク・セントラル・アジア(BCA)傘下のBCA証券。

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ベトナム政府、外資系企業の会社再登録手続きの廃止を検討中

ベトナム政府は、2005年に制定された会社の設立・運営・管理について規定した統一企業法(会社法)を改正し、2006年7月1日以前に政府の事業認可を受けた外資系企業に対し、5年以内の再登録手続きを免除する方針だ。政府は議会の承認を経て7月1日から施行したい考え。地元金融情報サイト、ストックスプラスが8日に日刊紙タンニェンを引用して伝えた。

外資系企業で会社の再登録が必要なのは約6000社となっているが、そのうち、実際に再登録手続きを終えたのは、わずか半分にとどまっている。再登録に失敗すれば、新規事業の開始や既存の事業拡大で認可を申請することができなくなるほか、既存の事業認可も更新することができなくなる。この点について、香港の法律事務所ジョンソン・ストークス&マスターのヤオ・グエン氏は、外資系企業は再登録することによって既存の税制優遇措置が打ち切られることを恐れるあまり、再登録を避ける傾向があると指摘している。

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ベトナム政府、2015年までに公的債務残高を対GDP比65%以下目指す

ベトナムのグェン・タン・ズン首相は、2015年までに公的債務残高を対GDP(国内総生産)比65%以下に引き下げることを目指した中期3カ年計画(2013-2015年)を了承した。ベトナム通信(電子版)が9日に伝えた。

現在、国の財政赤字は対GDP比4.8%だが、来年は同4.7%にやや低下し、その後も同4.5%を下回る水準となることを目指している。この中期計画の達成によって、政府は流動性や為替レートに対するリスクを軽減し、また、財政赤字の穴埋めや社会資本整備に必要な資金の調達の際、国債市場からより長期の低コストの資金調達が可能になるとしている。さらに、同計画では借り入れコストを引き下げるため、中長期プロジェクトでの短期資金の調達を禁じている。

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ブラジルのアゼベードWTO大使、WTO次期事務局長に就任へ

WTO(世界貿易機関、加盟160カ国)の次期事務局長にブラジルのロベルト・アゼベードWTO大使が就任することが決まった。次期事務局長のポストをめぐっては、米国と欧州が推すメキシコのエルミニオ・ブランコ候補(元商工振興相)との間で最終選考が行われていた。中南米専門の通信社メルコプレス(電子版)などが8日に伝えた。

アゼベード氏は8月に現在のフランス出身のパスカル・ラミー事務局長から引き継ぐ予定で、中南米諸国からの事務局長就任は1995年のWTO設立以来、アゼベード氏が初めてとなる。就任後は2001年に中東カタールの首都ドーハで始まったものの2011年に暗礁に乗り上げた多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)の2年ぶりの再開と最終合意を目指すことが最大の課題となる。

関係筋は、アゼベード氏はWTO内部の事情に通じており、また、BRICS(ブリックス)と呼ばれる成長が著しい中国やインド、ロシアなどの新興市場国から幅広い支援を受けていることから、今年12月にインドネシアのバリ島で開かれるWTOの大臣級会合に向けて議論が活発化し、利害対立が激しい加盟国間に新しい関係が構築される可能性があると見ている。(了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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