Surface2実機レビュー。4倍高速化で生きる「"タブレット+α"」のコンセプト

パッと見は変わらないが、中身は大きく変わった新しいSurfaceシリーズ

アップルが新しいパソコンとタブレットを発表した直後、今度はマイクロソフトが自社製パソコンのSuraface 2シリーズを日本で発売した。すでに多くのメディアで伝えられているので、興味のある方ならば一通りの製品情報については把握のことだろう。

そこで本稿では、Surface2シリーズを実際に数日間使ったインプレッションを伝えるとともに、製品の位置付けに関してお伝えすることにしたい。

Surfaceシリーズは、マイクロソフトが”パソコンの世界”を”タブレットの世界”へと拡張しようと目論んだWindows 8と共に、約1年前に投入された、同社初の自社ブランドパソコンのブランド名である。初代のSurfaceは出だしこそ好調だったものの、大きなムーブメントを作るまでには至っていない。同社の決算では、積み上がったSurfaceの在庫減損も話題になった。

結論から述べよう。マイクロソフトは初代Surface、Surface Proでの経験を短い期間に学習し、それぞれのバージョン「2」で製品としての完成度を大幅に高めてきた。もちろん、Surface2とSurface Pro2の2製品だけで、あらゆるニーズを満たせるわけではない。しかし、確実に特定の利用者層を獲得する魅力ある製品になった。

特にARMアーキテクチャを採用するTegra 4を搭載し、Windows RTを走らせるSurface2は、先代モデルが抱えていたもっとも大きな問題(絶対的なパフォーマンス)を解決し、薄型・軽量という長所をさらに伸ばしたことで、実用性を大きく高めている。

iPadは便利だけど、しっくりと来ない?ならばSurface2を

背面のロゴとともにカラーもシルバーに一新された
背面のロゴとともにカラーもシルバーに一新された

新しいSurfaceのうち、名称にProがつかないSurface2(当初はSurface RTとも呼ばれていた)は、ARMアーキテクチャのプロセッサを搭載している。NVIDIAの最新プロセッサであるTegra4(最大1.7GHz動作)を搭載している。内蔵ストレージによって32Gバイト版と64Gバイト版がある。両者の違いは内蔵するフラッシュメモリの量だけで、価格は32Gバイト版が4万4800円、64Gバイト版が5万4800円だ。

製品のデザインは、初代モデルと酷似しており、色が濃いグレーからシルバーになったことや、背面パネルのロゴがWindowsマークからSurfaceロゴに変更された程度の違いしかわからない。しかし、実際には厚さ9.3ミリから8.9ミリへ、0.4ミリながら薄型化が図られており、重さも僅かに(4グラム)軽くなっている。なお、バッテリ駆動時間は10時間と数値上は同じだ。

Windows 8.1とほぼ同機能を持つOSとプリインストールのOffice(今回からOutlookも付属することになった)が使え、11インチクラスの液晶を搭載する一方で、多くのタブレット端末と同等の重さを実現しているところが、本製品のセールスポイントである。

もっとも、コンセプトは初代モデルを引き継いでいるが、実際の使用フィールは初代とは”似ても似つかない”ほど改善している。

たとえば液晶パネルは解像度が、Surface Pro 、Pro2と同じフルHDへと高まった。アップルのRetina Dsiplayに及ばないと言ってしまえばそれまでだが、新しい日本語フォントの導入とも相まって、見た目の印象は数字以上に良くなっている。

より”寝た”角度でも固定可能になったキックスタンド
より”寝た”角度でも固定可能になったキックスタンド

さらに「いったい、どんな座高の人に最適化したのだろう」という感想も漏れていた、キックスタンドの角度がひとつ追加され、従来よりも寝た角度で固定できる(固定できる角度が二つある)。個人的には、新しい角度はデスクワークで使う際に最適で、レビュー期間中はこの角度でずっと使っていた。

初代Surfaceが採用していたTegra3は、ARM Cortex-A9という前世代の設計を元にしたクアッドコア(+1省電力プロセッサ)だったが、Surface2のTegra4はより高性能なARM Cortex-A15ベースで設計しなおされたものだ。加えて組み合わせるGPUについても、演算能力だけの単純比較で8倍に向上している。

もちろん、システムに組み込んだ際の性能差が額面通りとは限らないが、マイクロソフトはSurfaceとSurface2の能力差について約4倍(処理内容によっては6倍)とアナウンスしている。こうした数字が体感速度と一致するわけではないため、多少割り引いて数字を見る必要はある……と思っていたが、実際に使ってみると、そうした数字に極めて高いリアリティを感じるだけの体感差がある。

例によってインデックス作成やメールダウンロードなどで忙しい、セットアップ直後は応答性が悪いものの、一度動き始めてしまえば、これがスマートフォン/タブレット向けのプロセッサを搭載したWindowsマシンであることを、すっかり忘れてしまうぐらいの性能だ。

もちろん、WindowsではなくWindows RTであるため、新たなデスクトップアプリケーションはインストールできない。あらかじめ用意されているOfficeを使うこととなり、追加できるアプリケーションが「Storeアプリ」と呼ばれる全画面動作のWindows 8以上向けに設計されたものだけ、というのはWindows 8の時と同じだ。

しかし、Surfaceが登場した当初は、高品質なアプリケーションが数えるほどしかなかったが、最近登場したFacebookの純正クライアントや、マイクロソフト自身が開発している水彩画アプリ、そしてもちろん標準添付のアプリなど、かなり使う気にさせる環境になってきた。加えてInternet Explore 11とSurface2の能力向上が伴い、Webアプリケーションの動作が格段に良くなっている。

グーグルが提供しているJavaScriptのベンチマーク「Octane」を実行したところ、3884という数字が出た。Clover Trail搭載のArrows TabにWindows 8.1を導入し、同様にIE11で実行した場合で、このテストの数値は1033となる。ブラウザのバージョンが異なるが、初代Surfaceでは”3桁”しか性能が出ていなかった。

これだけベンチマークの結果が違うと、体感的にも速度が異なるのは自明だ。加えてAdobe Flashのプレーヤーがあらかじめ組み込まれているため、ブラウザベースでアプリケーションを使うことも考慮すれば、タブレット型のコンピュータとして不足のない使い方ができる。

もっとも、Surface2の使用感の改善には、Windowsそのものの(8.1での)進化、それにキーボード機能を備える純正カバーの改良が大きく貢献している。

新キーボードとSkyDriveがSurface2の実用度を上げた

Surface2の実用度を大きく向上させた理由のひとつめは、新しいWindowsがSkyDriveと良い感じの統合を果たしたためだ。内蔵ストレージの小ささを意識せず使え、自宅や職場のパソコンとシームレスに連携した使い方を自然に行える。

システムレベルでSkyDriveと統合し、SkyDriveの容量をまるで内蔵ストレージの延長線上にあるように使いこなせるようになったため、モバイル利用するSurfaceを”外出先専用”と割り切って使っても、データ連係などで余分な気を使う必用がなくなったからだ。

自宅や職場のWindows 8.1パソコンで仕事をし、出先に出る時にはSurface2を手にしてでかければ、あらゆる情報をSurface2で参照し、バンドルされるOfficeで手を加えるなど編集を行い、保存しておけば、それは自宅や職場からアクセスする文書にも反映される。こうした体験を演出するために、マイクロソフトはSurface2シリーズに、なんと200Gバイト分ものSkyDrive利用権(2年分)を付属させた。

自宅や職場のPC環境とモバイル環境を接続するという役割を、新しいWindowsとSkyDriveの組み合わせがきちんと果たすことで、Surface2というPC的な作業を難なくこなすタブレットコンピュータの価値が高まっている。

そして、新型の画面保護カバー兼用キーボードの進歩が、Surface2の良さをさらに高めている。

従来通りに画面カバー兼用で押し下げられる一般的なキーが配置されたType Cover2と、圧力センサー内蔵で薄型・軽量のTouch Cover2が用意されるが、両者ともあらたにキーボードバックライトが搭載された上、操作感も大幅に改善された。同じなのはパッと見のデザインのみと思っていい。

マイクロソフトによると、初代機で選ばれたキーボードはほとんどType Coverだったそうで、以前とは異なりType Cover2に4色のカラーバリエーションが与えられ、Touch Cover2はブラック(実際には濃いグレー)のみのラインナップとなった。

Type Cover2は、キータイプ時のカチャカチャとした音が大幅に小さくなり、ストロークが僅かに短くなっている。ストローク短縮というとフィーリング悪化を想像するかもしれないが、実際には隣のキーに指が干渉してミスタイプとなる回数が大幅に減り、タッチも良くなって打ちやすくなっている。

さらにTouch Cover2も、内蔵するセンサーの数を大幅に増やした。もちろん、物理的にボタンが配置されているわけではないため、すべての指を使ってタッチタイプしようと思えば、それなりに”訓練”は必要だ。しかし、スクリーンキーボードと同じようなものだと思い、キーフェイスを見ながら小指を使わずに初心者風にキー操作すると意外に使える。

なによりTouch Cover2はバックライト機能が追加されたにもかかわらず、軽量化されて192グラム(手元サンプルの実測値)に抑えられている。Type Coverは実測266グラムなので、あまり大きな違いはないとも言えるが、厚みを含めてタブレットらしく使いこなしたいなら、”これもアリ”だろう。

筆者個人のオススメはType Cover2だが、2種類とも揃えてその日の予定に合わせて選ぶといった使い方も面白い。将来、新しいキーボードが登場したなら、すぐに取り替えられる点も利点と言えよう。

バッテリ持続時間向上が目玉のSurface Pro2

カラーが黒に変更されたPro2。ペン入力も引き続きサポート
カラーが黒に変更されたPro2。ペン入力も引き続きサポート

一方、インテルのCore i5を搭載するSurface Pro2に関しては、グレーから黒に変更となった以外、外観上の違いは無い。重さもわずかに4グラム増えているものの、厚みはまったく同じ。Surface RT、Surface2にはない、筆圧検知可能なペン入力インターフェイスを備えているのも、Proからの特徴である。

”2”になっての変更点は、最上位モデルとして512Gバイト版が追加されたこと。それにインテルのCore i5プロセッサが第3世代から第4世代……すなわちHaswell世代へと変更されたこと、それに256Gバイト以上のストレージを搭載したモデルのRAM容量が4Gバイトから8Gバイトに増加したことである。無線LANがIEEE802.11acに対応していないのは、ちょっと残念だ。

これらの変更に伴い価格も上がっており、128Gバイト版が9万9800円、256Gバイト版が12万9800円、512Gバイト版が17万9800円の設定。従来モデルも1万円値下げして継続販売されることも発表されている。

さて、Pro2のパフォーマンスがSurface2に比べ、圧倒的に高いことは言うまでもない。前述したOctaneの結果を見ても1万1216という数字が出る(初代Proは9312)が、最新世代のCore i5なら高性能なのは当然。と考えるならば、価格が再設定された初代Proとの違いは、2種類の角度を選ぶことが可能になったキックスタンドと、バッテリ持続時間が主と言える(キーボードは相互に互換性がある)。

Pro2に用意されたドッキングステーション
Pro2に用意されたドッキングステーション

Pro2に関しては、むしろ同時発売されたドッキングステーション(DisplayPortやUSB 3.0出力、Ethernet(100Mbps)などを装備)に着目すべきだろう。これを使えばデスク環境では通常のパソコンとして、モバイル環境ではタブレットとして使う、といったことが手軽にできる。初代のProでも利用可能だが、Surface2では利用できない。

キックスタンドに関してはSurface2の項でも述べたため詳細は省くが、新たに設定された角度がひじょうに便利で、机の上で使う場合も、膝の上で使う場合も使いたいものである。

一方、バッテリ持続時間に関しては絶対的な駆動時間の数値こそ未公開だが、従来機に比べて30%改善したとのこと。では実際の駆動時間はどの程度なのか?

Surface Pro2の液晶は既定値(50%)でもかなり明るいため、40%程度まで絞って使って見たが、バックグラウンドでメール、Facebook、Twitterといったアプリが動作している中で、Webのブラウジングや本原稿の執筆などを行って、6時間半~7時間ぐらいというのが実稼働時間として妥当なところだろう。

もっと重いアプリケーションを動かしたり、あるいはバックライトを明るくしてしまうと、もっと短くなるだろうが、多少、負荷をかけたとしても5時間ぐらいは動かせるのではないだろうか。

従来機はバッテリ持続時間が一番の弱点だっただけに、この改良は大きい。

とはいえ、単純にコンパクトで持ち運びやすいタッチパネル操作可能なパソコンが欲しいだけならば、日本ではもっと多くの選択肢がある。本機にType Cover2を装着した際の重さは1.1キロを越える。もっと軽量な同等性能のパソコンはある。その中で、Surface Pro2を選ぶのであればならば、自分の利用シーンにマッチしているかについて、よく検討してみるべきだろう。

結論

Surface2は廉価なエントリーモデル、Surface Pro2はその上位モデルと紹介している例をみかけるが、これは誤りだ。両者は上下関係ではなく、まったく異なるユーザーを対象にした製品である。

本文中でも述べたが、Surface2は「パソコンを持ち歩く気はしないが、タブレットなら持ちある手もいいかも」と思っていたのに、やっぱりタブレットでは全ての問題を解決できないと諦めていたユーザー向けに、今、もっとも勧められる製品だ。

iPadが登場し、製品としての成熟が進むにつれて、徐々にパソコンを持ち歩かなくなった、という読者もいることだろう。あるいは、コレまでコンピュータを持ち歩くことがなかったのに、iPadになって活用するようになったという方もいるかもしれない。

本当にiPadが外出を共にするパーソナルなコンピュータとして、自分のライフスタイルにピッタリだと感じているならば、おそらくあなたにとってSurface2は(いくら性能が改善したとは言え)必要な製品ではない。

SurfaceにはiPadほど多くのアプリはなく、多数のサードベンダーが作るアクセサリもない。Windowsという名称だが、これまでのWindows用デスクトップアプリは一切動作しない(もっとも、これは他のタブレットも同じだが)。市場シェアはまだわずかで、世の中をリードするようなクラウド型サービスが、真っ先にSurface用Storeアプリを出すこともない。

しかし、それでもiPadとノートPCの間で移ろいながら、結局、どちらがいいか、腹を決めかねていた方には、Surface2はピッタリの製品だ。従来機にあったパフォーマンス不足やWindows 8の機能がこなれていなかったことによる使いにくいさが改善され、本来、マイクロソフトが目指しているコンセプトをストレートに享受できる。

ただし「Windows」という名称から想像される、”パソコンとまったく同じ使い方”を求める向きにはSurface2がフィットしない点は、初代機から変わっていない。現状、ARM版のWindowsはマイクロソフト自身が開発したデスクトップアプリしか動かすことができず、プリインストールされているOffice以外を必要とするならば、Surface Pro2が必要になる。

そのSurface Pro2は、Surface2よりも”パソコン寄りの使い方”をするユーザー向けとなる。パフォーマンスも圧倒的に上だが、前述したようにこの価格と重さならば、他にも選択肢はあると思う。ペン入力機能付きタブレットとしてはリーズナブルで使いやすいため、ペン入力タブレットが目的ならば良い選択肢かもしれないが、同時に(Pro2と同じくペン入力機能を持つ)ソニーの製品や、より軽量なNEC、高精細液晶を採用する東芝などの製品も検討すべきである。

ということで、筆者はマイクロソフトが新しいWindowsで目指す世界観をもっとも表現している製品として、Surface2に注目したい。今後、この製品を拡張する際に、ペン入力機能やWAN通信機能を内蔵したものが出てくることも期待しよう。

そして、Surface2に触発されて、より良い”タブレット+”的なWindows RT製品が各メーカーから発売されることにも期待したいところだ。