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外国籍の子どもを特別支援学級に追いやる教育は外国人労働者に頼ろうとしている日本として恥ずかしくないか

前屋毅フリージャーナリスト
(写真:アフロ)

 8月31日付の『毎日新聞』(電子版)が、「文部科学省への情報公開請求などで判明した」という記事を掲載している。それによれば、「外国人が多く住む25市町の公立小中学校に通う外国籍の子どもの5.37%が、知的障害がある子らが学ぶ『特別支援学級』に在籍していた」そうだ。外国籍の子どもの在籍率は、この25市町の全児童生徒の在籍率の2倍超になっている。

 なぜ、こんなに外国籍の子どもの特別支援学級在籍率が高いのか。同記事では、「日本語が理解できないため知能指数(IQ)検査の結果が低く、知的障害などと判断された可能性がある」との専門家のコメントが引用されている。

 知的障害ではないにもかかわらず知的障害と判断されている可能性がある、というのだ。本来ならば普通学級で学べるにもかかわらず、特別支援学級にいれられてしまっているわけである。

 日本政府は、外国人労働者を増やす施策を推し進めている。日本の労働者不足を穴埋めするためである。

 家族をともなって日本にやってくる外国人労働者は少なくない。その子どもたちは、多くが日本の公立学校にかようことになる。当然ながら、そこに立ちふさがるのが「言葉の壁」である。

 今年6月28日には、「日本語教育の推進に関する法律」が公布、施行されている。外国籍の児童生徒や留学生、就労者らに対し、日本語教育を受ける機会を最大限確保することを基本理念としたものだ。「言葉の壁」は、政府としても無視できないところにきているわけだ。

 しかし、法律はできても対応がじゅうぶんにできていないのが実態でもある。日本語教育のための予算や人がじゅうぶんに確保されている、といった状況にはない。現実は、その逆である。

 学校では、日本語教育の役割は教員に押しつけられている。日本語教育のノウハウもなく、ましてや「忙しすぎる教員」にしてみれば負担以外の何ものでもない。

 そのために「言葉の壁」を抱える外国籍の子どもたちは、学校で「放置」されてしまっている。「登校はするけれど、ジッと座ったままで耐えているだけの子どもたちは少なくありません」と学校における外国籍の子どもたちに詳しい人物はいった。

 それは、教員にとっても「歓迎せざる存在」のようだ。そして、「特別支援学級に追いやる」ことになってしまっているのではないだろうか。

 労働力不足を外国人労働者に頼ろうとしているにもかかわらず、外国籍の子どもたちの対応はできていない。教育の貧困であり、日本の貧困さの表れでしかない。

 次回、外国籍の子どもたちの現状の一端にふれてみたい。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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