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今年は花粉が多い!花粉症を軽く乗り切るためにどうするか?最新の治療は?

前田陽平耳鼻咽喉科専門医、アレルギー学会認定専門医
辛い花粉症の季節、特に今年は多い。(写真:アフロ)

今年のスギ花粉は地域によってはもう飛散開始日を過ぎています。飛散開始日は「1平方センチメートルあたり1個以上のスギ花粉を2日連続して観測した最初の日」とされていますから、実は飛散開始日を過ぎていない地域も飛び始めていることは十分にありえます。さらに、今年は例年より多くの飛散が見込まれている地域が多いです。花粉症を軽く済ますためにはどのようにすればよいでしょうか?ガイドライン(※1)も参考にしてその対策を考えてみます。

軽く抑えるために大事なことは・・・。

とにかく早めに治療を始めることをお勧めします。症状が出始めてすぐ、もしくは花粉が飛散する少し前から治療を開始することで、症状を軽く、短くすることができます。これを初期療法といいます。

早めに治療を開始することで症状が軽く、短くなります。 画像作成:Yahoo Japan
早めに治療を開始することで症状が軽く、短くなります。 画像作成:Yahoo Japan

花粉を避けましょう!

まずは花粉を回避することが有効です。花粉を回避するためには①花粉情報に注意すること、そして②多い日は外出を控えたり、花粉症用のメガネを活用したりする。マスクは新型コロナウイルス感染症(コロナ)予防のみならず、もちろん花粉症にも有効です。

服装に関して…ツルツルの服がおススメ

毛羽立った服は花粉が付着しやすく花粉症予防という観点では避けた方が無難です。しかし、春物の素敵なコートやニットを着るという楽しみがなくなるのも残念だという方は、着るのを花粉の少ない日にしてみてはいかがでしょう。さらに、上着を玄関にかけておくようにする(室内に持ち込まない)ことは部屋に花粉を持ち込まないようにできるので有効です。

生活上心がけることは?

飛散の多い時は戸や窓を閉めておくと花粉対策にはいいです。もちろん新型コロナ対策で換気が必要になる場面が多くなると思いますので、この点は致し方ないかと思います。また、ふとんや洗濯物も可能なら部屋干しにしましょう。とくにふとんを外干しにしてしまうと、花粉がたっぷり付着した布団で寝ることになるので避けた方が良いでしょう。掃除も花粉が減らせます。特に窓際中心に行うといいでしょう。

お薬を使う

薬局でも花粉症対策の薬が多く売られていますので、病院をなかなか受診できない方などはまずはそれを使うのもいいと思います。最近ではスイッチOTCという、以前は処方でしか使えなかった薬が処方箋なしでも薬局で購入できるようになっていたりもします。どの薬がいいか決めるのが難しいなら、薬剤師さんに相談してください。ただし、「使うと鼻がすぐ通るスプレー」は薬剤性鼻炎を起こしてしまい、逆に鼻づまりの原因となることもあるため、使い過ぎに注意が必要です。

ステロイド噴霧薬も有効な治療の一つ
ステロイド噴霧薬も有効な治療の一つ提供:イメージマート

医療機関に受診して治療を受ける

私個人は医療機関に受診して治療を受けることをお勧めします。たとえば、花粉症で良く用いられる抗ヒスタミン薬という薬は眠気を生じることがあります。処方箋なしで購入した薬や昔処方された薬で眠気があるというような方でも、最近の処方薬だと眠気が出ないということも多いです。また、鼻噴霧ステロイドも副作用が少なく、有効性が高いものです。たとえば成人であれば重症であったとしても抗ヒスタミン薬と鼻噴霧ステロイドの併用で89%、最重症でも80%の人で改善が得られたというデータ(※2)もあります。適切に評価を受け、治療を受けることで多くの方が改善を得られます。ちなみに、花粉症に対しても手術が行われることもあります。ただ、シーズン中はいわゆるレーザー手術などは行われません。

根本的な治療はないのでしょうか

シーズン中は開始できませんが、舌下免疫療法といって、舌の下に毎日アレルゲンのエキスの入ったタブレットを置くことで花粉症の体質そのものを改善する治療が可能です。ただし、この治療はスギとダニのみです。気になる方はぜひ医師に相談してみてください。さらに、(舌下免疫療法よりは施行している施設が限られますが)皮下免疫療法といって、皮下注射によって、同様に花粉症の体質を治療することも可能です。

最新の治療

最新の治療の一つとしてオマリズマブという注射による治療があります。花粉症に対して保険適応となっています。花粉症の症状を引き起こす「IgE」という抗体をブロックすることで症状を軽快させるという薬です。適切な治療を受けていても症状が軽快しない、血液中のIgEの値が一定の値に収まっている、などいくつかの条件を満たす必要があり、また、やや高価な治療ではありますが、通常の治療でもなかなか症状が治まらない方にはよい選択となることもあります。

(※1)2020年版鼻アレルギー診療ガイドライン

(※2)アレルギー・免疫. 2012;19(1):113-24.

耳鼻咽喉科専門医、アレルギー学会認定専門医

2005年大阪大学医学部医学科卒業。日本耳鼻咽喉科学会認定専門医・指導医。日本アレルギー学会認定専門医・指導医。医学博士。市中病院勤務、大阪大学医学系研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学助教を経て現在JCHO大阪病院耳鼻咽喉科部長。雑誌取材・メディア出演多数。臨床・研究の専門領域は鼻副鼻腔疾患・アレルギー疾患・経鼻内視鏡手術など。一般耳鼻咽喉科についても幅広く診療している。耳鼻咽喉科領域や診療に関わる医療情報全般の情報について広くTwitter(フォロワー4万人)などで発信している。 ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。

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