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鼻血が出た!どうすればいい!?もしかして深刻な病気!?耳鼻咽喉科医がお答えします。

前田陽平耳鼻咽喉科専門医、アレルギー学会認定専門医
鼻血が出たときはどうすればいいのでしょうか。(写真:ロイター/アフロ)

60%の人は人生に一度は鼻血を経験する(※1)といわれます。

鼻血が出たときはどうすればいいのでしょうか?深刻な病気が隠れていることもあるのでしょうか?

鼻血が出たときはどうしたらいい?

鼻血が出たときにはまず、小鼻を押さえるのが基本です。のどに血が流れるのを防ぐために、上を向くのではなく、むしろ下を向きましょう。鼻やくびを冷やすのは、医学的な根拠には乏しく、行う必要はありません。

小鼻をしっかり押さえることが大事です。鼻を押さえてへこむ部分です。上側を押さえるとへこまないので、鼻の中を圧迫できませんから、正しい場所を押さえるようにしましょう。(図)正しく圧迫すると、鼻で息ができないので口をあけて口で息をすることになります。

下を向いて、鼻の穴をふさぐようにしっかり押さえましょう。(筆者加工)
下を向いて、鼻の穴をふさぐようにしっかり押さえましょう。(筆者加工)

鼻の上の方(押さえてもへこまないところ)を押さえるのは間違いです。(筆者加工)
鼻の上の方(押さえてもへこまないところ)を押さえるのは間違いです。(筆者加工)

10分から15分程度押さえると、多くの場合は止血されます。10分から15分というのはかなり長い時間です。時計をみておおよその時間を測っておくといいでしょう。鼻血は前方から出ているのが9割程度です。特に入り口の部分(キーゼルバッハ部位などと呼ばれます)から出てきていることが多いので、多くの場合はこれで止血が得られます。

ティッシュを詰めるのはどうでしょうか。

ティッシュは抜くときにむしろ血が出てしまうこともあるので、個人的にはあまりお勧めしていません。綿花(化粧に使うコットンなど)であれば鼻の中に傷がつきにくいので、これを詰めて小鼻を押さえるという手はあります。

それでも止まらないときは??

上記の圧迫で全く止まらない場合は受診が必要になります。耳鼻咽喉科や、夜間や休日であれば救急外来に受診することになる場合もあると思います。どくどくと流れ出てきて止まらない場合は救急車を呼ばざるを得ない場合もあります。

耳鼻咽喉科では必要に応じて内視鏡なども用いて出血点を確認し、ガーゼなどを詰めたり、焼灼処置をしたりします。

重症の場合には風船状のものを詰めたり、血管を詰めたり(塞栓術といいます)、血管を外科的に結紮したりしないといけない場合もあり、入院での対処が必要になることもあります。

心配な鼻血ってどんな鼻血でしょうか。深刻な病気が隠れていることもあるのでしょうか。

「出血そのものが心配」という意味でいえば、後方からの鼻血(鼻の外から圧迫できない、のどに流れていくことが多く、止血自体が難しい)、止まらない鼻血ということになります。「止まらない鼻血」は血が止まりにくくなる病気などの場合に見られ、この場合はとにかくガーゼなどを詰めて圧迫するしかない、ということになります。

また、何らかの病気が原因で鼻血が出ていることもあります。たとえば、先に述べたような血が止まりにくくなる病気です。有名なのは白血病ですが、鼻血の方の中で白血病である方は非常にまれです。あるいは肝臓の病気など、止血に異常を来たす病気が見つかることもあります。こういう方の場合は「通常ならばすぐに止血しそうな勢いの鼻血が全然止血しない、鼻全体から出てくる」というような出方になることが多いです。必要に応じて血液検査などでこういった病気の可能性を調べる場合もあります。

さらに、病気ではありませんが、止血しにくくなる薬(抗凝固薬や抗血小板薬:「血をサラサラにする薬」と説明されることも多い)を内服しているような方は鼻出血のリスクも高いと考えられます。

他にも遺伝性の病気(オスラー病:遺伝性出血性末梢血管拡張症)や鼻の腫瘍などが原因となっていることもあります。一回一回は止血していても繰り返すような場合は一度耳鼻咽喉科で診察を受けるといいでしょう

鼻血の原因や性質は大人と子供で異なっている
鼻血の原因や性質は大人と子供で異なっている

大人と子供で鼻出血の原因や対応も変わるのでしょうか。

鼻血は10歳以下と50歳以上で特に多いというのが知られています。(※1)

お子さんの鼻血は心配のないすぐ止まるものが多いです。よく見るのは鼻の入り口に小さい傷があって、そこから出血を繰り返しているようなケースです。鼻を触らないようにしてもらうのがいいですが、なかなか難しい場合も多いと思いますので、お子さんの爪を切っておくことも効果的です。また、アレルギー性鼻炎のために鼻がかゆくて触ってしまうお子さんも多いですから、アレルギー性鼻炎の治療を行う場合もあります。実際、アレルギー性鼻炎の有無は鼻血の繰り返しと関連しているという研究もあります。(※2)

大人の場合は動脈硬化や高血圧が背景にある場合もよくみられます。また、抗凝固薬や抗血小板薬を内服している方も多いため、これらのリスクのある方は特に注意が必要です。

鼻血の対策として普段からできることなどはありますか?

まず、鼻が乾燥すると鼻血は出やすいということがいえます。したがって、鼻を湿潤にしておくことが良いでしょう。今はマスクをされている方が多いと思いますので、それも理論的にはある程度効果があると考えられます。

また、ワセリンなどを鼻の入り口に塗るのもいいと思います。この場合は清潔な綿棒で少量塗るようにしてください。入り口に塗れば自然に奥まで送られますから、奥まで塗る必要はありません。

お子さんの場合は鼻を触らないようにしてもらう、爪を切る、アレルギー性鼻炎があれば治療する、などです。

最後に、鼻血が出たときというのは特に焦りやすいもので、焦ると血圧も上がって、ますます止まりにくくなりますから落ち着くことも大切です。

いずれにしても鼻血が出てお困りなら一度耳鼻咽喉科でご相談ください。

※1)D J Morgan, et al. Prim Care. 2014 Mar;41(1):63-73.

※2)Murray AB, et al. Ann Allergy Asthma Immunol. 1995 Jan;74(1):30-3.

耳鼻咽喉科専門医、アレルギー学会認定専門医

2005年大阪大学医学部医学科卒業。日本耳鼻咽喉科学会認定専門医・指導医。日本アレルギー学会認定専門医・指導医。医学博士。市中病院勤務、大阪大学医学系研究科 耳鼻咽喉科・頭頸部外科学助教を経て現在JCHO大阪病院耳鼻咽喉科部長。雑誌取材・メディア出演多数。臨床・研究の専門領域は鼻副鼻腔疾患・アレルギー疾患・経鼻内視鏡手術など。一般耳鼻咽喉科についても幅広く診療している。耳鼻咽喉科領域や診療に関わる医療情報全般の情報について広くTwitter(フォロワー4万人)などで発信している。 ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。

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