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ノート(260) 刑務所で繰り返し実施されている被害者の視点を取り入れた指導

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:アフロ)

受刑380/384日目(続)

新たな被害者を出さないために

 この日、最後となる7本目に視聴したVTR教材は、「被害者の視点を取り入れた教育」というタイトルのものだった。ある殺人事件の遺族に対するインタビューや再現ドラマであり、その無念の思いが切々と描かれていた。

 刑務所では、こうした被害者や遺族の心情について深く考えさせる指導に特に重点が置かれている。例えば、刑務作業が免除される毎月2回の教育的指導日には、全ての受刑者に対し、居室で「心の叫び」と題した遺族らの手記の朗読教材を聴取させ、感想文を提出させている。

 毎日夕食後には「内省」と呼ばれる時間もある。10分間、1人静かに居室の壁に向かって座り、過ちを振り返り、被害者やその遺族の苦しみや悲しみ、置かれた状況などに思いを致すというものだ。希望すれば、宗教宗派に応じてそれぞれの教誨師が刑務所までやってきて、被害者の月命日の供養も実施されている。

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元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

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